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【SABRE】 †
Semi-Automated Booking and Reservation Environment.
1950年代、アメリカのコンピュータメーカー「IBM」が開発した、旅客機の空席照会・座席割り当て・航空券の発券をリアルタイムで行うオンラインシステム(CRS)。
同社がアメリカ空軍の防空管制のために開発したシステム「SAGE」を参考に作られた。
旅客機の座席は、列車やバスで言うところの「指定席」(あるいは定員制自由席)に近い考え方がされていることから、顧客が利用しようとするには、旅行会社の窓口などを通じて事前に航空会社へ申し込む必要があるが、申込を受け付けた航空会社では当初、空席の調査・座席の割り当て・航空券の発券といった業務を全て手作業で行っていた。
その具体的な流れは次の通りであった。
- 旅行代理店などの受付担当者は、顧客が申し込んだフライトを運行する航空会社に電話で注文内容(希望の日時・出発地及び到着地空港・便名・座席グレード・航空券の枚数など)を通知する。
- 航空会社の予約担当者は、予めフライトごとに作成した座席帳簿から空席を検索する。
- 注文内容を満たす空席があれば、帳簿に席を割り当てるとともに残り座席数を更新し、受付担当者へ回答する。
- 受付担当者は航空会社からの回答を聞き取り、航空券用紙に内容(フライトの日時・便名・座席グレード・顧客の氏名・出発地・経由地及び到着地空港・適用運賃など)を記入の上、航空券を作成して顧客に渡し、運賃を受け取る。
しかしこの作業にはきわめて時間がかかり*1、航空需要の増加とともに、それに比例して増加する申込をさばくことが困難になりつつあった。
また、「注文の聞き間違いによる指定ミス」「座席帳簿への書き間違い」「回答の言い間違い」「航空券用紙への転記間違い」などのヒューマンエラーにより、同じ予約内容の航空券が複数の顧客に発行されてしまう「ダブルブッキング」などの問題も多発していた。*2
そこで、コンピュータによって空席の調査・座席の割り当て(と残り座席数の更新)・航空券の発券を自動化することで、これらの問題を解決しようとしたのが本システムである。
当初、このシステムはアメリカン航空のために開発されたが、後に他の航空会社や旅行会社などが運用する同種のシステムとの相互接続や提携、マシンの更新による機能拡張が相次いで行われ、現在では「Sabre Global Distribution System」として、全世界60ヶ国以上にネットワークを展開し、65,000以上の旅行会社、400以上の航空会社、27のレンタカー業者、125,000のホテル、50社以上の鉄道会社・17のクルーズ船会社とも接続され、航空券以外にもさまざまな旅行商品の販売を扱う巨大オンラインシステムになっている*3。
日本では「AXESS」というシステム(日本航空の予約・発券システムを基盤に作られたもの)が本システムと提携している。
なお余談ながら、このシステムは日本の国鉄(日本国有鉄道)と日立製作所が開発した列車の指定席予約・発券システム「マルス(MARS)」の開発にあたり、参考のひとつとされている。
*1 申込をしてから航空券が発行されるまで90〜180分もの時間を要していた。
*2 アメリカン航空での調査では、12件に1件の割合でこうした事故が起きていたという。
*3 なお、運営母体は2000年3月にアメリカン航空から分離されている。