【QH-50】(きゅうえいちごじゅう)

Gyrodyne QH-50 DASH(Drone Anti Submarine Helicopter, 無人対潜ヘリコプター)

開発当初は「DSN-1」と呼ばれていたが、後に四軍統一命名法の導入により現在の名称に変更された。

アメリカ海軍が考案し、ジャイロダイン社が開発した無人対潜ヘリコプター
駆逐艦からの遠隔操作によって飛行し、対潜魚雷爆雷を投下する。

機体は剥き出しのエンジン二重反転ローターランディングスキッドを取り付けたような無骨な形状。
無人ヘリコプターに対潜ソナー・対空レーダーを備え、艦上からの無線交信によって制御する。

制御機構は時代相応の単純なものだが、ミサイルと違って投射後の帰還・着陸・再使用が可能だった。
しかし汎用コンピューターの登場以前の制御機構は拡張性に欠けていて、雷撃以外の用途への転用はほぼ不可能だった。
また、ECCMの実現以前の設計であるため電波の混信に対しても非常に脆弱で、ジャミングどころか艦隊の通常運用でも混信による墜落を続発させていた。

1959年に初飛行した後、アメリカ海軍では1962年から実戦配備を開始し、746機が生産された。
当時まだ多数残存していた第二次世界大戦世代の駆逐艦に多く搭載され、アスロックと並ぶ対潜兵器となった。
しかし、上記の制御機構の問題から早期に陳腐化し、有人の多用途ヘリコプターに置き換えられた。

スペックデータ

全長3.94m(QH-50C)/2.33m(QH-50D)
全高2.96m
全幅1.60m
ローター直径6.10m
全備重量1,030kg(QH-50C)/1,060kg(QH-50D)
機関ポルシェ YO-95-6 4気筒空冷水平対向ピストンエンジン×1基(QH-50A)
ポルシェ YO-95-6 4気筒空冷水平対向ピストンエンジン×2基(QH-50B)
ボーイング T50-BO-8ターボシャフト×1基(QH-50C)
ボーイング T50-BO-12ターボシャフト×1基(QH-50D)
出力72hp(54kW)(QH-50A)
86hp(64.5kW)(QH-50B)
300shp(255kW)(QH-50C)
365shp(272kW)(QH-50D)
最高速度150km/h
航続距離65(約120km)
上昇率145m/min
戦闘行動半径52km(QH-50C)/74km(QH-50D)
実用上昇限度4,940m(QH-50C)/4,790m(QH-50D)
武装Mk.43/Mk.44/Mk.46短魚雷×1〜2発、Mk.17核爆雷×1発


派生型

  • DSN-1/QH-50A(9機):
    前生産型。
    エンジンはポルシェ社製4気筒YO-95-6ピストン・エンジン(72hp)を搭載。

  • DSN-2/QH-50B(3機):
    前生産型。
    エンジンはポルシェ社製4気筒YO-95-6ピストン・エンジン(86hp)を双発で搭載。

  • DSN-3/QH-50C(373機):
    量産型。
    エンジンはボーイング社製T50-BO-8ターボシャフト(255hp)を搭載。
    ペイロードが増加し、魚雷を2発搭載できた。

  • QH-50D(377機):
    改良量産型。
    エンジンをボーイング社製T50-BO-12ターボシャフト(365hp)に強化。
    ファイバーグラス製のローターブレードを採用し、燃料容量も増加している。

  • QH-50DM(10機):
    D型の改良型。
    エンジンはD型と同様だが、出力を550shpに強化。
    ベトナム戦争中にアメリカ陸軍偵察用として使用した。

  • YQH-50E(3機):
    エンジン換装型。
    ボーイング社製T50シリーズの生産終了に伴い、アリソンT63シリーズ(T63-A-5A)を搭載した。

  • QH-50F:
    YQH-50Fの生産型。提案のみ。

  • QH-50H:
    より大きな胴体とローターを備えたQH-50Fの双発モデル。提案のみ。


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