【飛行船】(ひこうせん)

軽航空機のうち、推力を持つもの。エンジンと舵を備えた気球
史上初めて実用化された「輸送力を持つ航空機」である。

日本語では当初「飛行気球」「遊動気球」と呼ばれ、後に「航空船」と呼ばれた。
それに伴い、海軍の運用部隊は「航空船隊」と呼ばれたが、1928年に航空母艦による「航空戦隊」を創設することになったため、同じ読み仮名となることを避けるために「飛行船隊」と改められ、これ以後「飛行船」と呼ばれるようになった。

名称の似ている「飛行艇」は重航空機の一種であり、飛行船ではない。

熱気球とするには重すぎて燃費が悪いため、空気より軽い気体(水素・ヘリウムなど)を充填して浮力を得る。
前進時の空気抵抗を減らすために気嚢(気球)は細長く形成され、これにエンジンプロペラなどの機械類が取り付けられる。
乗務員・旅客・貨物などは下部のゴンドラに釣り下げられる。

20世紀前半には太平洋・大西洋横断航路などで幅広く用いられた。
しかし1937年の「ヒンデンブルク号墜落事故」*1を契機として信用を失い、飛行機に置き換えられていった。
現代では広告宣伝や大気圏の観測などで小規模に用いられている他、無人機成層圏プラットフォームとしての利用法も研究が進められている。

また、前述の事故から可燃性・金属脆化性を持つガス(水素など)の利用は規制されている。
この規制を踏まえると、利用可能なガスは事実上ヘリウムのみに限られる。

関連:気球 成層圏プラットフォーム

種類

飛行船は、船体(気嚢)の作りによって以下の通り分けられる。

軟式飛行船
気嚢と船体が同一で、ガスの圧力で船体の形を維持するもの。
硬式飛行船
アルミや木材などで船体の枠を作り、その中に複数の気嚢を収納するもの。
ドイツのツェッペリン伯爵によるものが有名だったが、現在では生産されていない。
半硬式飛行船
ゴンドラを吊り下げる部分など、一部に金属の枠を取り入れたもの。
全金属製飛行船
気嚢部分まで含めて全てを金属材で構成するもの。
20世紀中頃に一度検討されたが、金属加工のコストが高く工数も嵩むため普及しなかった。
当時の技術的課題の多くは解決済みだが、現代技術での再設計は特に行われていない。
ハイブリッド飛行船
重航空機としての飛行船。気嚢だけでは浮上できないほど重く、エンジン推力主翼から揚力を得て飛ぶ。
巡航速度は商用飛行機の半分以下だと推定されるが、代わりに膨大な積載量航続距離を実現可能だと目される。
次世代の旅客機貨物機輸送機としての研究開発が1990年代初頭から断続的に繰り返されてきたが、未だに実用化に至っていない。

*1 当初、原因は気嚢に充填されていた水素ガスの爆発とされていたが、後の研究で「船体に塗られていた酸化鉄アルミニウムの混合塗料が静電気により引火した」と発表され、現在ではこちらが有力な説となっている。

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