隼（戦闘機）のバックアップ(No.15) - 航空軍事用語辞典＋＋

【隼（戦闘機）】(はやぶさ（せんとうき）) †

中島キ43・一式戦闘機「隼」。

1940年代、中島飛行機製作所が開発・生産し、大日本帝国陸軍に採用された軽戦闘機。
呼称・略称は「一式戦」、「一戦」、「ヨンサン」など。
連合国軍におけるコードネームは"Oscar(オスカー)"。

それまでの九七式戦闘機に代わる新型軽戦闘機として、運動性能は維持しながらも500km/h以上の最高速度や5000mまで5分で上昇可能といった要求に応えるべく中島で開発された。そこで開発陣は、九七式戦闘機の設計を基としつつもエンジンをより大型かつ強力な「ハ25」に変更、更に引き込み脚化することで、運動性能と速度性能を両立しようと試みた。「キ43」試作1号機の初飛行は1938年12月12日となった。しかし、速度性能は要求に届かず、運動性能でも九七式戦闘機に及ばなかった。これを受け、更に試作機を製造、性能向上が図られたが機体性能は改善されず、採用は絶望的となった。

そんな本機の運命を変えたのは、太平洋戦争に必要とされる長距離飛行の可能な遠距離戦闘機の整備要求だった。落下タンクを装備することで非常に長大な航続距離を発揮することが判明したキ43は量産が決定、1941年5月には「一式戦闘機一型」として仮正式採用された。

開戦直後、南方での航空戦に駆り出された一式戦一型はその運動性能をいかんなく発揮、F2Aやハリケーン、P-40 *1など多数の連合国戦闘機を撃墜した。

エンジンを「ハ115」に換装、その他様々な変更がなされた最多量産型の「一式戦闘機二型」は1942年夏に、水メタノール噴射装置付き「ハ115-II」搭載型の「一式戦闘機三型」は1944年末期に正式採用された。
最終的に、海軍の零戦に次ぐ5,700機あまりが生産され、後の四式戦闘機「疾風」と並んで陸軍航空隊、ひいては日本の航空戦力を代表する戦闘機として終戦まで活躍した。

また、当時戦意高揚のために制作された映画や流行歌の題材*2としても取り上げられ、戦中の一般国民にも親しまれた。

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性能諸元（一式戦闘機二型） †

試作名称	キ43-Ⅱ
乗員	1名
全長	8.92m
全高	3.085m
全幅	10.837m
翼面積	21.4㎡
翼面荷重	117.7kg/㎡
空虚重量	1,975kg
正規全備重量	2,590kg
発動機	ハ115?空冷星形複列14気筒×1基（離昇1,077馬力）
プロペラ	住友ハミルトン可変ピッチ3翅（直径2.80m）
最大速度（高度6,000m）	初期型：515km/h 中期型：536km/h 後期型：548km/h
巡航速度（高度4,000m）	355km/h
降下制限速度	600/650km/h
上昇力	4分48秒/高度5,000m
実用上昇限度	10,500mないし11,215m
航続距離（落下タンク有/正規）	3,000km/1,620km
武装	ホ103 12.7mm機関砲×2（機首、携行弾数各250発）
爆装	翼下30～250kg爆弾2発ないしタ弾（クラスター爆弾）2発

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派生型 †

一型（キ43-Ⅰ）：
最初の正式採用機で、ハ25（離昇990馬力）発動機を搭載し、対7.7mm防漏タンクを装備。
最高速度は4000mで495km/h(87オクタン燃料使用時)。
過剰なまでの軽量化のため機体強度に問題があり急降下制限速度は550km/h*3となっている。
二型の登場によって一線を退いた後は標的曳航機や訓練機として運用された。
- 一型甲(キ43-Ⅰ甲)：
  初期型。武装は八九式7.7mm機銃×2挺。
- 一型乙(キ43-Ⅰ乙)：
  武装を7.7mm機銃×1挺+ホ103 12.7mm機関砲×1門に換装した型。
- 一型丙(キ43-Ⅰ丙)：
  武装を12.7mm機関砲×2門に換装した型。
二型（キ43-Ⅱ）：
一型の各部を改良した型。
ハ115（離昇1,077馬力）発動機を搭載し、対12.7mm防漏タンク、3翅プロペラ化などの変更が行われた。
機体構造も強化され降下制限速度は600km/h(後に650km/h)までに引き上げられている。
1943年6月の第5580号機から操縦席後方に防弾板*4が追加された。
また、これ以下の区別は戦後付けられたもので、正式には全て「一式戦闘機二型」である。
- 二型甲(キ43-Ⅱ甲)：
  初期型。武装は12.7mm機関砲×2、250kg爆弾×2発、推力式集合排気管装備。生産中、機首周りの設計変更が数回行われた。
- 二型乙（キ43-Ⅱ乙）：
  推力式集合排気管を装備、最高速度は536km/hまで向上した。
- 二型改（キ43-Ⅱ改）：
  推力式単排気管を装備、最高速度は548km/hまで向上した。
三型（キ43-Ⅲ）：
推力式単排気管仕様の最終生産型。
発動機は水メタノール噴射装置付きのハ115-Ⅱ（離昇1,190馬力、高度2,800mで公称1,230馬力）を搭載。
操縦席後部に容量70lの水メタノールタンクを新設し、推力式単排気管モデルの二型最後期型と異なり量産三型の排気管数は片側7本となる。
- 三型（キ43-Ⅲ）：
  下の20mm機関砲搭載試作型との区別のため、三型甲とも呼ばれる。
  武装は12.7mm機関砲×2。
  最高速度は560km/hまで向上、瞬発的な加速力も増大した。
- 三型乙（キ43-Ⅲ乙）：
  カウリング上部に膨らみを設け、武装をホ5 20mm機関砲×2門に換装した型。
  試作のみ。
キ43-Ⅳ：
計画のみの機体。以下のプランがあった。
(1)：ハ45（誉）（離昇1800馬力）発動機に換装した型。
(2)：機体の一部を木製化し、エンジンを水メタノール噴射装置付のハ112-Ⅱ（海軍の金星六二型とほぼ同じ）に換装した型。

*1 P-40は機体の丈夫さから急降下性能に優れており、追尾した隼が空中分解を起こす例があった
*2 大東亜戦争開戦当初に活躍した「飛行第64戦隊」を題材にした「加藤隼戦闘隊(1944年)」など。
*3 実戦ではこれ以下の速度でも分解することがあったが
*4 取り外し可能で、重量増加を嫌った者はこれを外すこともあった

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性能諸元（一式戦闘機二型） †

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