【十字砲火】(じゅうじほうか)

Cross fire

敵を包囲した状態で2カ所以上から火器での攻撃を加える事。
基本的に直線弾道での狙撃フルオート掃射を指し、間接砲撃には言及されない。

十字砲火それ自体の実施方法に特殊な手順はなく*1、要諦はいかにして敵を包囲するかにある。
従って、別働隊が側面から奇襲するのも十字砲火だが、横隊で2人が並んで同じ敵を撃つのも十字砲火である。

ただし一般的に、射手が相互に長い距離を取っていた方が包囲の影響が明白で、より有効とされる。

主に防御戦闘で、敵が障害システムに拘束されている状態で発生しやすい。
特に要塞は、敵部隊の突撃に対して十字砲火を叩きつけられるように考慮して設計される。
また、後述の誤射を避けるため、味方の射線と重ならない高所からのトップアタックが望ましい。

「十字」と付くのは、発射された弾道が交差する事になるため。
交差角度は90度に近いのが理論上最適である。そうすれば味方の誰かが敵の視界外の側面から攻撃する事になるからだ。
交差角度が狭いと敵の機動を拘束しにくく、単に全員の火力を集中しただけの結果になる(それはそれで重要だが)。
交差角度が180度に近づきすぎる(前後から挟み撃ちにしようとする)と、味方を誤射するリスクが発生する。

十字砲火であるか否かに関係なく、自分のキルコーンに味方がいる時には撃ってはならない。
また、味方のキルコーンに入るような機動を行う際は、必ず事前の通達を必要とする。
しかし交戦中の機動によって彼我の位置関係が変化すると、この原則を守る事ができない場合がある。

この理由から、ドッグファイトにおいては十字砲火は愚行・悪手である。
敵味方全員が高速でマニューバーを繰り返す状況下では、安全な位置関係の確認はほぼ不可能に近いからだ。

関連:ベルケの格言 制圧射撃

例1

  □

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ただ単に大勢で滅多撃ちにしているだけだが、弾道は交差する事になるし、事実上包囲もされている。

例2

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 ↑
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『□』が完全に包囲され側面攻撃を受ける事になる理想的な例。
この状況に至る事ができれば確かに極めて有利だが、戦場でこの状況を作り出すのは困難を伴う。

例3

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  □   ← │←■
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  ↑     │
─ ─ ─ ─ ┘
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細線は要塞障害システム・市街地の建造物などの遮蔽物。

防御戦闘における理想的な例だが、現代戦でこの状況を維持するのは困難。
有効射程内の敵に対しては強力だが、位置が発覚すればアウトレンジ攻撃を受ける事になる。

例4

■→ □ ←■

最悪の例。典型的な「前後からの挟み撃ち」。
偶発的な遭遇戦ではこういう状況に陥ってしまう事がある。


*1 軍隊の基本的な射撃手順は、それが仮に十字砲火であったとしても問題ないよう配慮して行われる。
  実際、歩兵が銃を撃つ時、それが十字砲火でないと断定できる状況はそれほど多くない。


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