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【手榴弾】 †
Grenade.
歩兵が携帯し、手で握って投擲する事を念頭において設計された爆弾の総称。
投げる事で間接砲撃と同様に遮蔽物越しの攻撃が可能で、塹壕や屋内での戦闘で利用される。
有効射程で小銃に劣り、投擲動作の所要時間も長いため、銃撃が届かない状況で遮蔽物越しに投げ込む使うのが原則。
ワイヤーなどを利用した仕掛け罠として設置する事もある。
発明された時期は判然とせず、8世紀の東ローマ帝国が使った陶器の焼夷弾とも、中華圏で黒色火薬の発明とともに作られたともされる。
近代兵器としては1688年イギリスの内戦(名誉革命)で使われたのが初出。
古典的な手榴弾は黒色火薬が詰まった直径7cmほどの鉄球で、導火線に火を付けて投げるものだった。
第一次世界大戦頃には火種・導火線を必要としない信管式の手榴弾が普及し、通常の歩兵が携帯できるようになった。
19世紀までは火種を使う(両手がふさがる)関係で、爆弾を投げ込む擲弾戦術を専門に行う擲弾兵が必要だった。
これは戦列歩兵の銃撃が飛び交う戦場ではあまり現実的でなく、歩兵の標準装備となる頃には形骸化していた。
現代戦では投擲後3〜5秒後に起爆する時限信管を用いるものが主流。
落下して地面に落ちると即座に起爆するものも存在したが、信頼性に乏しいため廃れた。
関連:擲弾発射器
形状 †
- 鉄球型
- 金属球の中に黒色火薬を詰め、導火線を添えたもの。
予備知識のない市民が連想するような「爆弾の絵」の形そのものであり、その起源。 - ダイナマイト
- 紙などの筒の中にダイナマイトを詰めて導火線を添えたもの。
要するに産業用ダイナマイトそのものであり、19世紀に発明されてから機械的な信管が普及するまで広く使われた。 - 柄付き
- 火薬と信管を詰めた金属筒に、投げるための柄を付けたもの。
信管に繋がる発火リングを引き抜くと時限信管が作動する。
後述の卵形よりも長距離に投擲できる利点があったが、炸薬量に比して重くかさばるのでやがて廃れていった。 - 卵形
- 握りやすい形状で、上部に安全ピンとレバーという二つの安全装置を持つもの。
レバーを握った状態で安全ピンを引き抜き、手を離すとレバーも跳ね上がって時限信管が作動する。
レバーを握り続けている限り信管は作動しない。作動する前に安全ピンを差し戻せば起爆させずに手を離せる。
卵形の外殻は、起爆した時の破片を全方位に均等に撒き散らす効果がある。 - 円筒形
- 空き缶のような円筒。安全装置は卵形と同じく安全ピンとレバーの二重になっている。
製造コストや保管などに利便性があり、現代の手榴弾は破片手榴弾を除いておおむね円筒形をしている。
機能分類 †
破片手榴弾 †
爆風で飛ばされた破片によって周辺の人間を殺傷する榴弾。
壁や塹壕などに身を隠した状態で投げる事が多いため、「防御手榴弾」とも呼ぶ。
炸薬は少量であり、爆轟そのものが死因になる事はほとんどない*1。
しかし、その爆圧で金属容器が吹き飛び、人体を引き裂くほどの高速で金属片をまき散らす。
破片がまき散らされる致死半径は設計ごとに異なるが、おおむね5〜30mほど。
たいていは投げた本人も致死半径内にいるため、事前に遮蔽・防護を確保した上で投げる必要がある。
破片の装甲貫通力は低く、乗用車のドアやベッドのマットレス程度で遮られる。
また、軍用のボディアーマーやヘルメット?は、隙間から人体に直撃しなければ手榴弾の破片を防げるようにできている。
落ちた所に上からクッションや死体を覆い被せる事などでも無害化できる*2。
塹壕では深さ数十cm程度の穴を掘っておき、投げ込まれた手榴弾をそこに投げ捨てて処理する事がある。
水中に投げ込む事でも無力化できる(起爆はするが、散らばった破片は水に堰き止められる)。
衝撃手榴弾 †
炸薬の爆轟そのものの破壊力により、衝撃波を浴びせて人間や器物を破砕する手榴弾。
外殻をあえて木質合板などのもろい素材で形成し、できるだけ破片を撒き散らさない構造になっている。
危害半径は数m程度と狭く、逆にその狭さのために予期せぬ副次的被害が発生しにくい。
また、破片手榴弾を想定した対策はほとんど効果がなく、衝撃波は遮蔽物の裏側にも容易に浸透する。
水中に投げ込んでも破壊力を失わないため、ダイバーを殺害する目的で海軍が用いる事もある。
焼夷手榴弾 †
黄燐や粉末アルミニウム(テルミット)などを発火させて撒き散らす弾体。
焼却処分や放火目的のために用いる。
照明手榴弾 †
手投げ式の照明弾。
催涙手榴弾 †
催涙剤を噴出する。
発煙手榴弾 †
煙によって視界を遮り、小銃・戦車・ミサイルなどの照準を妨害する。
また、救援や連絡のために発煙筒のように使う事もできる。
特殊閃光音響手榴弾 †
「スタングレネード」「フラッシュバン」とも。
閃光と爆音を放ち、視聴覚を一時的に麻痺させて人間を行動不能に陥れる。
光量は100万カンデラ以上、騒音は爆心から1.5m離れた地点で160〜180デシベル。
人質救出作戦などで不必要な殺傷を行わずに屋内を制圧する目的に用いられる。
ただし非殺傷兵器の常として完全な非殺傷ではなく、民間人をショック死させる危険性も皆無ではない*3。
味方も昏倒・混乱させかねないため、耳栓・対閃光ゴーグルなど事前の計画的な対策が必要。
*1 手に持ったまま起爆した場合でさえ、吹き飛ぶのは腕一本ほどに留まる事が多い。
*2 自分の身を盾にして仲間をかばったという例もある。実行した本人は死亡したが周囲の仲間は無傷だった。
*3 CQBの現場に90歳の老人や生後6ヶ月の乳幼児が居合わせる可能性はきわめて低いが、あり得ないとも言い切れない。