【運動性】(うんどうせい)

motility

加速・減速・旋回などの急激な運動を行う能力。
基本的には生体・機体の構造的な耐久性に強く依存する。

あらゆる運動はエネルギーを必要とするため、エンジンや筋肉の限界は運動性の限界に直結する。
とはいえ、エンジンだけ強力であっても点火直後に爆発四散するようでは意味がない。
高い運動性を確保するためには、その運動で生じる急激な負荷に耐えられる構造強度が必須となる。

たとえば、現行の戦闘機曲技機を比較した場合、一般に戦闘機の方が運動性が高い。
多くの戦闘機装甲航続距離ペイロードを確保するために多大な負荷を強いられている。
見た目の軽やかさが同等かそれ以下であったとしても、同じ動きで生じる負荷の強さはまるで違う。

運動は必ず慣性のGによる負荷を伴い、それは自重と出力に応じて増大する。
従って、急加速・急停止・急旋回は自重が重いほど、またベクトルの変化が著しいほど困難になる。
構造強度そのものも重量に依存する*1ため、運動性には原理的に実現可能な限界点が存在する。
また、負荷は局所的なねじれ・たわみとして蓄積されるため、運動量が同じでも物体の構造や向きによって耐久限界が異なる。

たとえば、現行の戦闘機は一般に7〜8Gの急上昇にも耐えられるが、下降時には3〜4Gの負荷でも損壊する事がある。
これは飛行機の移動が原則として斜め上に向かうもので、急速に下降するような操作はほとんど想定されていない事による。
飛行機は旋回する際に機体ごと進行方向に傾いて機首も上向きに跳ね上がる。斜め上に上昇しているのだ。
また、そもそも飛行しているだけで重力に逆らっているため、水平飛行を保つ事は1Gの上昇を続けているに等しい。
そして、下降時には推力を上向きに保ったまま、減速によって揚力を減らして高度を下げるのが基本である*2
位置エネルギーを消費して急降下加速する場合でさえ、負荷の多くは前進に伴う後ろ向きの抗力として現れる。

関連:マニューバー レッドアウト ブラックアウト パワーダイブ 設計運動速度


*1 正確に言えば、負荷が重量に比例するのに対し、構造強度はおおむね構造材の厚さに比例する。
  工学上の工夫で劇的に改善可能ではあるが、単純に考えて、構造強度を2倍にすると重量とそれに伴う負荷は8倍になる。

*2 緊急時に再び上昇する必要性に備えての事。
  最初から機首を上に向けていれば加速するだけで上昇でき、機首を急激に振り上げて負荷をかける事もなく、操舵ミスで失速を招く危険性も避けられる。


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