【キャンバー】(きゃんばー)

camber
反り。物体の形状が反っている様子。

関連:Il-86NATOコード「キャンバー」)

車輪のキャンバー

車両の車輪が車軸に対して垂直でなく、車体の内側または外側に傾けて設置されている事。
後輪駆動する自動車の前輪だけを傾けるのが一般的。動輪に傾斜を付けてもほとんど利点はない。

車輪の上側が外向きになっている(すり鉢型・V地型)場合を「正キャンバー」「プラスキャンバー」「ポジティブキャンバー」などという。
より小さな力で旋回できるようになる反面、負荷がかかると脱輪しやすくなる。
人力で梶を切っている古い車種では重要な特性だったが、油圧ポンプ電動機で梶を切るパワーステアリングの普及によって陳腐化した。

車輪の下側が外向きになっている(八の字型)場合を「負キャンバー」「マイナスキャンバー」「ネガティブキャンバー」などという。
正キャンバーとは逆に旋回に大きな力が必要になるが、脱輪しにくくなる。

どちらの場合でも、接地面積が小さい分タイヤの摩耗が早くなり、平均故障間隔が短くなる。
また、機械工学の発達した近年ではより効率的な代替手段に置き換えられており、近年の車種ではほとんど見られない。

翼のキャンバー

航空機では、主翼が下向きに反り返るように形成される事が多い。
この文脈では、「キャンバー」の語は翼がどれくらい反り返っているかを指す相対的な単位として用いられる。
キャンバーのない平坦な主翼を、特に「対称翼」と呼ぶ場合もある。

キャンバーのある翼で前進すると、翼の上下で速度差・気圧差が生じる。キャンバーが大きいほど気圧差も大きい。
このため、上面が低圧になるよう調整すると揚力が増す。
また、下向きの反り返りは下向きの気流(ダウンウォッシュ)を発生させ、これも揚力を生み出す。

反面、キャンバーが大きいほど翼面の抗力も増大し、また気流の剥離などで失速を誘発する恐れがある。
総じて、低速飛行では揚力の増大が利点となり、高速になるほど抗力の増大が重大な欠点となる。

大型機では動翼(フラップ)を用いて低速時のみキャンバーを増大させる構造を採用している場合が多い。

関連:コニカルキャンバー


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