【アジャイル・ファルコン】(あじゃいるふぁるこん)

Agile Falcon
冷戦末期、NATO?諸国向けに提唱されていたF-16の高機動型、およびその開発計画。
「アジャイル」とは「敏捷な」という意味。

1980年代、ソ連空軍が高推力と高機動を兼ね備えた戦闘機MiG-29Su-27)を実戦化したことが明らかになると、それらと対峙するNATO?軍は脅威を感じた。
それまで東側の戦闘機は、推力あるいは機動性のいずれかに偏った機体が多かったのだが、新たに登場したバランスのよい機体は西側戦闘機の優位を崩しかねなかった。
NATO?側でこれらの要素に優れた戦闘機としては、アメリカ・ベルギー・オランダ・デンマーク・ノルウェーなどに採用されていたF-16A/A+が存在したが、F-16の生産ラインは対地攻撃力を重視したF-16C/Dへ移行しており、攻撃任務においては歓迎されたものの、防空任務においては機動性が低下することを懸念して嫌われた。
そこでNATO?軍向けに、F-16の機動性を向上させた発展機種の開発が、ゼネラル・ダイナミクス社から提唱された。

計画された機体の内容としては、主翼面積の増大、高推力化エンジンの開発と採用、アビオニクスの強化などが挙げられる。
特に主翼に関しては、日本のFSX開発計画(現F-2)との類似性が高く、共通化による開発コストの低減とも、片方の計画が中止された際の保険とも噂された。
ただし、本計画での主翼面積増大が、機動性を重視して翼面荷重を低下させるためのものであったのに対し、FSXのそれは対艦ミサイル燃料の搭載力を重視したものと、真逆の目的であった。

しかし1990年代に入ると、ワルシャワ条約機構ソ連軍が立て続けに崩壊したため、NATO?にとっての航空脅威は減少し、アジャイル・ファルコン計画は中止された。

他の理由としては、F-16C/Dの機動性低下がさほど深刻ではなかったことによる、ともいわれている。
これは空気取入口を新設計の「モジュラー・コモン・インレット・ダクト」へ変更し、高迎え角時のエンジン効率を向上させたためである。

結局、ベルギー・オランダ・デンマーク・ノルウェーの四カ国は、F-16A+の改修型であるF-16AFを使用している。
また、アメリカ州兵空軍ではF-16A+の改修型であるF-16ADFを使用している。


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