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【T-62】 †
ソ連がT-55の発展型として開発した、ソ連初の滑腔砲搭載主力戦車。
主砲である2A20 115mm滑腔砲はAPFSDS弾使用での砲口初速は1,680m/s、射程2,000mで350mmの装甲貫徹力を誇るが、旧型の照準機を使用しているため、1,500mを超えると命中率が低下する事が弱点であった*1。
自動装填装置を搭載しており、射撃後の薬莢は砲塔後部の小ハッチから自動的に排出されるのだが、自動的に元の位置に素早く復旧する機能を持たないため、砲身の仰角をいちいち水平に戻さなければならない。
また、敵による発見を防ぎ、被弾率を低くするために全高を低く抑えた設計だが、乗員の居住性が犠牲となり、砲身の俯角がほとんど取れないという欠点を持つこととなった。
中ソ国境紛争・珍宝島事件が初の実戦参加で第四次中東戦争にも参加したが、前述の遠距離射撃性能の悪さや俯角の取れない点などが仇となり戦果は芳しくなかった。
派生型にはIT-1駆逐戦車(密閉式の旋回砲塔にミサイルランチャーを搭載)や天馬虎(北朝鮮改造型)、チラン(Tiran:イスラエルが改造したもの。砲身基部にM2 12.7mm重機関銃を装備する改修が行われている。)がある。
ロシア陸軍では2013年に本車を退役させる方針で、戦車は分解された後、部品は保管され、その後は輸出に回されるという。
スペックデータ †
乗員 | 4名 |
全長 | 9.3m |
車体長 | 6.63m |
全高 | 2.4m |
全幅 | 3.52m |
戦闘重量 | 41.5t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
エンジン | V-55-5 12気筒液冷ディーゼルエンジン(出力580hp(463kW)) |
超堤高 | 0.8m |
超壕幅 | 2.85m |
最大速度 | 50km/h(路上) |
航続距離 | 450km 650km(外部タンク搭載時) |
装甲 | 砲塔: 242mm(前面)/152mm(側面)/97mm(後面)/40mm(上面) 車体: 102mm(前面上下)/79mm(側面上部)/15mm(側面下部)/20mm(上面)/31mm(底面) |
兵装 | 2A20(U-5TS) 55口径115mm滑腔砲×1門(弾数40発) NSVT 12.7mm重機関銃×1挺(対空、弾数300発) Dshk-M 12.7mm機関銃×1挺(対空、後期型以降) PKMT 7.62mm機関銃×1挺(同軸、弾数2,500発) |
派生型 †
- T-62
初期生産型。
- T-62A
Dshk-M 12.7mm機関銃を追加した後期型。
ただし、この名称はNATOによるコードネームである。
- T-62D
レーザー測距装置や防御装置を追加しエンジンを換装(620〜690馬力)した型。
- T-62M
T-62の近代改修型。
操行装置はT-72式のものに換装され、射撃管制装置を追加したほか、砲塔に馬蹄形の増加装甲を装着した。
また、9M117「バスチオン」(NATOコード:AT-10「スタッバー」)対戦車ミサイルが使用可能になった。
- チラン6
第四次中東戦争で鹵獲した車両をイスラエルが改造したもの。
主砲の換装など大がかりな改造は施されず、砲塔の側面と後部に大型の雑具箱が取り付けられたほか、砲身基部にM2 12.7mm重機関銃を装備するなどの手が加えられた。
後に南米などに転売され、レーザー測距儀や砲手用の赤外線式暗視装置、車体前面と砲塔の前面と側面に爆発反応装甲が取り付けられたほか、エンジンをゼネラルモーターズ社製のディーゼルエンジンに換装している。
- IT-1駆逐戦車
T-62の車体を使った対戦車ミサイル駆逐戦車。
砲塔から主砲を撤去し、その上にミサイルランチャーを搭載している。
対戦車ミサイル発射時には、砲塔上のハッチから発射アームがせり出して跳ね上がるように展開する。
対戦車ミサイルは3M7「ドラコーン」を搭載し、副武装にはPKT 7.62mm機関銃を装備する。
後に、IT-1から武装を撤去した装甲回収車型のIT-1Tへと改修され、さらに砲塔を完全に撤去した仕様のBTS-4Vに再改修された。
天馬虎 (천마호)
T-62を北朝鮮がライセンス生産したもの。
1号から4号までのバリエーションがあり、 オリジナルのT-62と同型の1号、滑腔砲基部にレーザー測距機を装備した2号、砲塔に追加装甲を装備した3号、砲塔を換装し、サイドスカートや爆発反応装甲、発煙弾発射機を装備した4号がある。