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【RPG】 †
軍事用語でRPGと呼ばれるものは、いずれもソ連(ロシア)の対戦車用武器であるが、おおよそ以下の4種類に分類できる。
1.対戦車手榴弾 †
Ruchnaya Protivotankovaya Granata (露)
- RPG-40
- 1940年に制式化された対戦車手榴弾。
構造自体は単に爆薬筒に時限信管と竿を付けた標準的な手榴弾だが、総重量1.2kg(うち760gがTNT爆薬)という巨大なものだった。
中戦車以下の装甲目標に対して有効だったが、大戦後半に出現したドイツ製重戦車に対しては効果がなかったという。 - RPG-43
- 1943年に制式化された対戦車手榴弾。重戦車対策として火力強化が図られた。
RPG-40と同じく1.2kgという巨体で、単純な爆弾から成形炸薬弾に変更され、内部機構の関係でTNT爆薬は612gまで削減された。
標的の装甲に対して垂直に、頭頂部分を押し当てるように投げる必要があり、直撃すれば75mmの装甲を貫徹したという。
いずれにせよ、「手で投げて届く距離まで戦車に肉薄する」という悲惨な前提条件を要するため、使用者の死亡率が極めて高かった。
2.対戦車無反動砲 †
ドイツのパンツァーファウストを参考に開発された、歩兵携行用無反動砲。
- RPG-2
- 1949年に制式化された対戦車無反動砲。
一人で持ち歩けた対戦車手榴弾とは異なり、射手・弾薬運搬手の2名で運用。
本体が2.83kg、弾頭1発が1.84gで、運用班2名がそれぞれ3発の弾頭を携行した。
有効射程はわずか100mほどで、貫通力も主力戦車に対して不十分。
ロケット推進擲弾が実用化すると急速に廃れていった。
3.ロケット推進擲弾 †
Rocket Propelled Grenade(英)
RPG-2同様の無反動砲の機構に加え、弾頭をより大型化したうえでロケットモーターを追加したモデル。
無反動砲の原理で射出された後、弾体後部の安定翼が開いて固体燃料ロケットに点火・加速する。
ロケットを利用するため反動による射手への負担が軽く、コールドローンチであるため射手がロケットの噴炎を浴びる危険もない。
弾頭には主として対戦車用の成形炸薬弾が用いられるが、対人用の榴弾も存在する。
信管は電気的接触による圧電信管と時限信管の併用。
車両などの電気伝導体に着弾すれば即座に起爆、そうでなくとも不発を防ぐため発射後の時間経過により起爆する。
圧電信管は金網に当たるとショートして不発になる場合があり、このためRPG対策としてスラット装甲が広く普及している。
デッドコピーでは時限信管が省略されている場合がある。
弾頭が重いためロケット点火・再加速の所要時間が長く、その間に弾道を狂わせやすい。特に強風時には命中精度が極端に低下する。
遠くを狙うための光学照準器?を備えるが、煩雑な上に命中率の低い偏差射撃は忌避され、照準器が取り外された場合も多い。
また、無反動砲特有のバックブラストによる事故の恐れがあり、轟音と発射炎によって敵に発見されるおそれも大きい。
有効射程の関係で標的に接近して遮蔽越しに撃つ事が多く、そのため狭い閉所にバックブラストが充満する事故も多発した。
広範に普及したため無知なゲリラ的運用も多く、自殺兵器と揶揄されるほど事故が多かったという。
旧共産圏でライセンス生産されたほか、構造が単純なためデッドコピーも多く、非常に多くの国で使用されている。
取り扱いも容易でわずかな訓練で使えるようになるため、AK-47と並んで紛争地帯のゲリラ・テロリストに使われることも多い。
元は戦車を狙うための火器だが、実際には兵士の視界内にあるものなら何に対しても撃ち込まれる。
対空兵器として使用してヘリコプターを撃墜した事例すら報告されている(ブラック・シーの戦い)。
ただし、そのために消費された弾頭は数百発を超え、そして飛行不能になったヘリコプターはわずか数機であった。
4.携帯ロケット砲 †
RPG-18以降は上記と異なり、純粋なロケット推進の対戦車火器となっている。
RPG-18自体はアメリカのM72をデッドコピーしたものという説があるが、はっきりしていない。
それ以降はソ連(ロシア)で次々と発展型が開発されている。
スペックデータ †
RPG-2 | |
全長 | 650mm |
直径 | 82mm |
口径 | 40mm |
重量 | 2.83kg(弾頭なし) |
銃口初速 | 145m/秒 |
有効射程 | 100〜150km |
装弾数 | 1発 |
使用弾薬 | PG-2成形炸薬弾 |
弾頭重量 | 1.84kg |
貫徹能力 | 200mm(RHA換算) |
RPG-16 | |
全長 (発射状態/分解時) | 1,104mm/645mm |
口径 | 58mm |
重量 | 10.3kg(光学照準器、二脚付き) |
銃口初速 | 130m/秒 |
有効射程 | 800m |
装弾数 | 1発 |
使用弾薬 | PG-16V HEAT弾 |
弾頭重量 | 2.1kg |
RPG-18 | |
全長 (発射状態/運搬状態) | 1,050mm/705mm |
口径 | 64mm |
重量 | 2.6kg(弾頭付き) |
銃口初速 | 115m/秒 |
有効射程 | 200m |
装弾数 | 1発 |
使用弾薬 | PG-18 HEAT弾 |
貫徹能力 | 375mm(RHA換算) |
RPG-22 | |
全長 (発射状態/分解時) | 850mm/785mm |
口径 | 72.5mm |
重量 | 2.8kg(弾頭付き) |
銃口初速 | 133m/秒 |
有効射程 | 250m |
装弾数 | 1発 |
使用弾薬 | HEAT弾 |
貫徹能力 | 400mm(RHA換算) |
RPG-26/RShG-2 | |
全長 | 770mm |
口径 | 72.5mm |
重量 | 2.9kg/3.5kg(RShG-2) |
銃口初速 | 144m/秒 |
有効射程 | 250m/115m(RShG-2) |
装弾数 | 1発(使い捨て) |
使用弾薬 | HEAT弾 サーモバリック爆薬(RShG-2) |
貫徹能力 (RHA換算) | 440mm(HEAT弾) |
RPG-27/RShG-1 | |
全長 | 1,135mm |
口径 | 105mm |
重量 | 8.3kg/8kg(RShG-1) |
銃口初速 | 120m/秒 |
有効射程 | 200m |
装弾数 | 1発(使い捨て) |
使用弾薬 | タンデムHEAT弾 サーモバリック爆薬(RShG-1) |
貫徹能力 (RHA換算) | 600mm+ERA/750mm(ERA無し) |
対人危害半径 | 10m(RShG-1) |
RPG-28 | |
全長 | 1,050mm |
口径 | 125mm |
重量 | 12kg(弾頭付き) |
装弾数 | 1発(使い捨て) |
銃口初速 | N/A |
有効射程 | 300m |
使用弾薬 | HEAT弾 |
貫徹能力 (RHA換算) | 900mm+ERA |
RPG-29 | |
全長 (射撃時/分解時) | 1,850mm/1,000mm |
口径 | 105mm |
重量 | 12.1kg(光学照準器付き) 18.8kg(弾薬装填時) |
銃口初速 | 280m/秒 |
有効射程 | 500m |
装弾数 | 1発 |
使用弾薬 | PG-29V タンデムHEAT弾 TBG-29V サーモバリック弾 |
弾頭直径 | 64mm(PG-29V) 105mm(TBG-29V) |
貫徹能力(RHA換算) | 600mm+ERA/750mm(ERA無し) |
対人危害半径 | 10m(TBG-29V) |
RPG-30 | |
全長 | N/A |
口径 | 105mm |
重量 | 10.3kg(弾頭のみ) |
銃口初速 | N/A |
有効射程 | 200m |
装弾数 | 1発(使い捨て) |
使用弾薬 | PG-30V タンデムHEAT弾 |
貫徹能力 (RHA換算) | 600mm+ERA |
RPG-32 | |
全長 | 1,200mm(105mmキャニスター装填時) 900mm(72mmキャニスター装填時) |
口径 | 105mm/72mm |
重量 | 3kg(キャニスター無し) 10kg(105mmキャニスター装填時) 6kg(72mmキャニスター装填時) |
銃口初速 | N/A |
有効射程 | 200m |
装弾数 | 1発(使い捨て) |
使用弾薬 | PG-32V タンデムHEAT弾 TBG-32 サーモバリック弾 |
貫徹能力 (RHA換算) | 600mm+ERA |
主なバリエーション †
- RPG-2:
初期型。有効射程は100m。- 56式ロケットランチャー(56式火箭筒):
RPG-2の中国製コピー。 - B-50:
北ベトナム製コピー。 - R-27:
チェコ製コピー - M57:
ユーゴスラビア製コピー。
- 56式ロケットランチャー(56式火箭筒):
- RPG-7:
基本型。弾頭を大型化して有効射程を500mに伸ばし破壊力を改善。
また、光学照準器?が追加されている。
- RPG-7V:
光増幅・パッシブ赤外線式暗視装置が装着可能な型。 - RPG-7V1:
バイポッドを装着した型。TBG-7サーモバリック弾頭を発射可能。 - RPG-7V2:
有効射程距離を550〜700mに延伸し、光学照準器をUP-7Vに変更、新型の装薬を使用可能にした型。 - RPG-7D:
空挺軍仕様。砲身を前後2つに分割可能。 - RPG-7D1:
RPG-7Vの空挺軍仕様。 - RPG-7D2:
RPG-7V1の空挺軍仕様。 - RPG-7D3:
RPG-7V2の空挺軍仕様。 - 69式ロケットランチャー(69式火箭筒):
ノリンコ製コピー。
トリガーグリップ後部の補助グリップを排除し、キャリングハンドルとバイポッドを追加、オリジナルよりも全長を40mmほど短縮して軽量化されている。バイポッドの装着は後にソ連製のRPG-7V1でも採用された。 - 69-I式:
暗視照準装置が使用可能な型。 - B41:
ベトナム製RPG-7。 - ヤシン:
ハマス製RPG-7。 - RPG-7USA:
アメリカ製のRPG-7。
トリガーグリップがM16A2/M4カービンのものに変更されているほか、ランチャーの左右上下にピカティニー・レールが装着されており、アイアンサイト?のほかにもM4カービン用のフォアグリップ?やストック?も装着されている。
- RPG-7V:
- RPG-16:
ソ連空挺軍モデル。
成形炸薬弾を使用し、発射筒と弾頭の口径の増大により、射程と命中精度の向上が行われている。
また、空中投下用に2部に分解できるようになっている。
- RPG-18:
それまでのRPGとは異なり、アメリカのM72に似た使い捨てロケット砲?。
RPG-22に代替されて1990年代に退役した。
- RPG-22:
RPG-18の改良型で、口径が64mmから72.5mmに拡大されている。
- RPG-26:
口径はRPG-22と同じ72.5mmで、使い捨ての発射筒は新規設計で形状が変更されている。
- RShG-2:
RPG-22の派生型で弾頭をサーモバリック爆薬に変更した型。
重量が増大した分有効射程距離も短くなっている。
- RShG-2:
- RPG-27:
RPG-26の拡大発展型。口径105mmのタンデム成形炸薬弾を発射する。
- RShG-1:
RPG-27の派生型で弾頭をサーモバリック爆薬に変更した型。
有効射程距離はRPG-27と同等である。
- RShG-1:
- RPG-28:
2007年から配備が開始された型。
口径はロシア軍の主力戦車と同じ125mmでRPGシリーズでは最大のものである。
- RPG-29:
1989年に採用された型。「ヴァンピール*2」とも呼ばれる。
こちらの発射筒は使い捨てではなく、弾頭は口径105mmのタンデム成型炸薬弾かサーモバリック弾を使用する。
- RPG-30:
RPG-27とよく似た使い捨て式の対戦車ロケットランチャー。
ハードキル式のアクティブ防御システム(APS) を装備した戦車を撃破するために、メインの砲身よりも細いデコイのロケット弾を装填した予備砲身が装着されている。
- RPG-32"Hashim":
2008年から配備が開始された型。
光学照準器と引き金がついたトリガーグループと、ロケット弾を格納したキャニスターで構成されており、トリガーグループはキャニスターの前端部に前部から差し込んで取り付ける。
ロシアのほか、ヨルダンやメキシコ、ブラジルが導入している。