【P-38】 †
Lockheed P-38 "Lightning".
1930年代後半にロッキード社が製作し、主にアメリカ陸軍航空隊が運用していた双発単座戦闘機。
愛称は「ライトニング」*1。
1939年1月に試作機のXP-38が初飛行し、9月にはP-38として制式採用された。
高速・重武装で高高度性能にも優れる防空戦闘機を目指した結果、2つのターボチャージャー付きエンジンを搭載、双胴の機体とさまざまな新基軸の取り入れられたものとなった。
また、双発エンジンのため搭載量に余裕があり、高々度での戦闘だけでなく爆撃装備や偵察装備も可能で、汎用性に富んだ機体になった。
また、改修を重ねて燃料タンクの拡張や増槽を装備することで航続距離を伸ばし、長距離任務に運用されることも多かった。
第二次世界大戦時、欧州戦線ではドイツ本土空襲に向かう重爆撃機の主力掩護戦闘機や速度性能を生かした偵察機として活躍し、また高高度性能と高速・重武装を組み合わせて一撃離脱戦法でフランス上空のドイツ軍機や鉄道拠点や機関車を集中的に破壊し、ドイツ軍兵士に「双胴の悪魔（der Gabelschwanz-Teufel）」と呼ばれた。
太平洋においてもその性能を発揮、F6FやF4Uに次いで最も多くの日本軍機を撃墜した戦闘機とされている。
特に有名な逸話としては、ブーゲンビル島上空にて連合艦隊司令長官・山本五十六の乗った一式陸上攻撃機を撃墜したことであろう（海軍甲事件）。
本機に搭乗して戦果を挙げた人物として、米軍のトップエースである、リチャード・ボング（撃墜数40機）やトーマス・マクガイア（撃墜数38機）が挙げられる。
また、「星の王子様」の作者で、作家として有名なサン・テグジュペリが最終出撃（行方不明）で搭乗したのも本機の偵察機型（F-5）である。
他の米軍戦中航空機と比べ、突出した性能が無いことや、ターボチャージャーの整備が困難であること、燃料消費が激しいことなどから、早期に退役した。
スペックデータ †
| 乗員 | 1名 |
| 全長 | 11.53m |
| 全高 | 3.00m |
| 翼幅 | 15.85m |
| 翼型 | NACA エアフォイル23016/NACA4412 |
| 零揚抗力係数 | 0.0268 |
| 抗力面積 | 0.82�� |
| アスペクト比 | 8.26（翼面） |
| 主翼面積 | 30.43�� |
| 空虚重量 | 5,800kg |
| 運用時重量 | 7,940kg |
| 最大離陸重量 | 9,798kg |
| 発動機 | アリソンV-1710-111/113 液冷ターボチャージャー V型12気筒×2基 |
| エンジン出力 | 通常：1,425hp（1,063kW） ブースト：1,600hp（1,193kW） |
| 最大速度 | 667km/h（高度7,620m時） |
| 失速速度 | 170km/h |
| 航続距離 | 1,770km（1,100海里）/3,640km（2,600海里）（フェリー飛行時） |
| 実用上昇限度 | 13,400m（44,000ft） |
| 最大上昇率 | 1,448m/min |
| 翼面荷重 | 261kg/�� |
| 馬力荷重 | 268W/kg |
| 揚効力比 | 13.5 |
| 固定武装 | YP-38/P-38： T-9 37mm機関砲×1門（弾数15発） ブローニングAN/M2 12.7mm機銃×2門（弾数各200発） ブローニングAN/M2（ブローニングM1919?）7.62mm機銃×2門（弾数各500発） P-38E以降： イスパノM2（C）20mm機関砲?×1門（弾数150発（弾薬構成：2 HE, 2 AP, 2 曳光弾）） コルト・ブローニングMG53-2 50口径12.7mm機関銃×4門（弾数各500発） |
| ロケット弾 | M10 3連装112mmロケットランチャー×4基（M8ロケット弾×12発）または 5連装127mmロケットランチャー×2基（HVAR*2ロケット弾×10発） |
| 爆弾 （非ロケット弾 搭載時） | 2,000lb（908kg）爆弾または1,000lb（454kg）爆弾×2発（機体内ハードポイント） 500lb（227kg）爆弾または250lb（114kg）爆弾×4発（機体内ハードポイント） 500lb（227kg）爆弾または250lb（113kg）爆弾×6発（機体内ハードポイント） 500lb（227kg）爆弾または250lb（113kg）爆弾×2発（主翼下ハードポイント） |
| その他 | ドロップタンク×2基（機体内ハードポイント） |
バリエーション †
- XP-38：
原型機。エンジンはV-1710-11/15（出力960hp）を搭載。
- YP-38：
武装を施した生産前機。エンジンはV-1710-27/29（出力1,150hp）を搭載。
外側のみであった胴体ブームのラジエーターを両側に装備して冷却能力を高めている。
また発動機を左右入れ換えて、XP-38とはプロペラ回転方向が逆回りとなり、以後、標準となった。
- P-38：
初期生産型。武装はT-9 37mm機関砲×1門、AN/M2 12.7mm機銃×4門。
操縦席後方に防弾鋼板が装備された。
- Lightning Mk.�機�
イギリス空軍向け仕様。
ただし、軍事機密としてターボチャージャーが外され、エンジンも同方向回転型のアリソンV-1710-C15R（離昇出力1,090馬力）を搭載するなど完全な廉価版であった。
143機が生産されたが、英本土にあった3機以外の受け取りは拒否されてしまったため、残りはアメリカ陸軍航空隊が引き取った。
- Lightning Mk.�供�
イギリス空軍向け仕様。524機が発注されたがキャンセル。
全機F-13/-15型またはG-13/-15型に改修された後にアメリカ陸軍へ供給された。
- P-38B：
A型の派生型。生産されず。
- P-38C：
A型の派生型。生産されず。
- P-38D：
水平安定板取り付け角を変更し、防弾燃料タンクを装着した型。36機生産。
この改修により尾部の振動が改善された。
- P-38E：
実戦投入を想定し、武装を37mm機関砲からM1（イスパノ・スイザHS.404）20mm機関砲（装弾数150発）に変更、プロペラをハミルトン油圧式からカーチス電動式に変換した型。
210機が生産され、そのうち100機以上が武装をカメラ4台に置き換えたF-4写真撮影偵察機に改造された。
- P-38F：
爆弾倉を双胴に設置し、空戦フラップを装備した型。
エンジンはV-1710-49/53（出力1,330hp）を搭載。527機生産。
- P-38G：
エンジン出力の強化と性能が向上した通信機を搭載した型。
エンジンはV-1710-51/55（出力1,325hp）を搭載。1,082機生産。
- P-38H：
G型の発動機出力強化型。自動油圧ラジエーターフラップを装備する。
エンジンはV-1710-89/91（出力1,430hp）を搭載。601機生産。
- P-38J：
インタークーラー（中間冷却器）の位置を変更し、電動式ダイブブレーキを装備したタイプ。
燃料搭載量も増加している。
一部機体は複座軽爆撃機や偵察型のF-5C/E/Fに改修された。2,970機生産。
- ドループスヌート：
J型の武装を全廃して機首に爆撃手席を設けたパスファインダー（爆撃先導機）型。
- ミッキー：
J型に爆撃照準レーダーを搭載した型。
- ドループスヌート：
- P-38K：
G型に大型プロペラとV-1710-75/77エンジン（出力1,425hp）を搭載し、出力向上を図った型。
試作のみ。
- P-38L：
最も多く生産された型で3,923機が生産された。
爆弾や1,140リットルのドロップタンクを搭載するためのパイロンや油圧ダイブフラップ、補助翼を装備している。
武装として対地攻撃用の5インチロケット弾を搭載するクリスマスツリー型のランチャーが装備可能となった。
エンジンは水噴射装置付きのV-1710-111/113（出力1,475hp/1,600hp（水噴射時））を搭載。
また、生産されたうちの113機はコンソリデーテッド・バルティエンジンを搭載している。
- P-38L-VL：
バルティー社で生産された機体の呼称。113機が生産された。
- P-38L-5：
コンソリデーテッド社で製作された機体。L型準拠。
- TP-38L：
L型改修の複座練習機型非公式呼称。J型改修のTP-38Jもある。
- P-38L-VL：
- P-38M：
F・K・L型の機首下にレーダーポッドを装備し、中央胴体後部にレーダー手席を設置した夜間戦闘機型。
活躍は主に戦後だったが、P-82「ツインムスタング」の戦力化により活躍期間は短かった。
- RP-38：
P-38改修の左右非対称機体による操縦特性調査任務機。
- RP-38D：
D型の（米空軍移行後の）改称後呼称。主に偵察任務用。
- RP-38E：
E型の（米空軍移行後の）改称後呼称。主に偵察任務用。
- F-38J：
J型の（米空軍移行後の）改称後呼称。
- F-38L：
L型の（米空軍移行後の）改称後呼称。
- F-4：
E型の写真偵察機改装型。カメラを4台搭載。
- F-4A：
F型の写真偵察機改装型。カメラを4台搭載。
- F-5A：
G型の写真偵察機改装型。カメラを5台搭載。
- F-5B：
J型の写真偵察機改装型。カメラを5台搭載。
- F-5C：
F-5Bのカメラ装備を改善した型。
- XF-5D：
複座偵察戦闘機に再生されたF-5Aの呼称。
- F-5E：
F-5Cに改装されたP-38JまたはP-38Lの改称後呼称。
- F-5F：
カメラ装備をF-5C準拠に改修した後のF-5Bの呼称。
- F-5G-6：
P-38L-5を改装した写真偵察機改装型。
- XFO-1：
F-5Bのアメリカ海軍向け。評価用に4機が運用された。
- XP-49：
コンチネンタル�将�-1430-9/11エンジン搭載の強化型原型。生産されず。
- XP-58「チェイン・ライトニング」：
V-3420-11/13エンジン（出力2,600hp）搭載の発展型原型。量産されず。
