Last-modified: 2023-07-30 (日) 09:52:06 (272d)

【AIM-54】(えーあいえむごじゅうよん)

AIM-54 Phoenix(フェニックス).

アメリカが、F-111大型戦闘機の海軍型として計画した「F-111B」への搭載を目的に開発された長射程空対空ミサイル
しかし、当初の搭載母機になるはずだったF-111Bがキャンセルとなったため、AWG-9とともにF-14へ受け継がれ、1974年に実戦配備が開始された。

本ミサイルの起源は、F6D?F-108?YF-12?に搭載される予定だった空対空ミサイルで、その技術が元となり、F-111Bと同時に開発された。
射程は160〜200kmと、実用空対空ミサイルでは世界最長である*1
艦隊防空に特化したミサイルであり、事実上、搭載するレーダー火器管制システムの関係からF-14専用となっている。

誘導方式は中間セミアクティブレーダー誘導(飛行中のデータ更新あり)、終端アクティブレーダー誘導である。
後期型のC型では、慣性参照装置が搭載されたことからより効率的な軌道を描けるようになり、命中精度の向上と射程距離の若干の延長がはかられている。

主な目標は対艦ミサイルを装備したソ連軍爆撃機であり、艦隊防空の一番外において爆撃機アウトレンジ攻撃する目的で生まれた。
試験においては80%以上の高命中率を記録し、イラン・イラク戦争において、イラン軍は不確定情報ながらF-14の発射した本ミサイルでイラク軍機を多数撃墜しているが、アメリカ軍に配備されていた本ミサイルは撃墜を記録していない。

イラン・イラク戦争での戦果については、戦後にイラン側が発表した内容によると、1980年から1988年の間にF-14は合計30機の撃墜戦果を記録し、このうち、フェニックスによる確定戦果が16機・未確定戦果が4機、としている。
また、この期間中にフェニックス71発を射耗し、10発が搭載したF-14の被撃墜・事故等によって喪失された、としている。

ソ連の崩壊に伴い、アメリカの機動部隊を攻撃する能力を持った国が地球上に存在しなくなった現在、AIM-54は存在意義を失ってしまった。
また1発約100万ドルと、高価といわれているAIM-120の2倍以上という高コストも裏目に出てしまっている。
そのため、アメリカ軍は2004年9月30日をもってAIM-54の運用を終了、30年に渡る艦隊防空の中核としての役割に幕を閉じた。

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スペックデータ

タイプAIM-54AAIM-54C
全長4.01m
直径38.1cm
翼幅92.4cm
発射重量443kg463kg
射程200km
速度マッハ5.0
飛行高度30,000m
推進方式固体燃料ロケットモーター
推進装置Mk47(WPU-3/B)ロケットモーターMk60 ロケットモーター
弾頭HE連続ロッド(60kg)
誘導装置更新付SARH及びARH更新付SARH・INS及びARH


主なバリエーション

  • XAIM-54A:
    1965年より飛行試験を実施していたプロトタイプ。

  • AIM-54A:
    1974年から運用が開始された、もっとも初期のモデル。
    中間誘導にはセミアクティブレーダー誘導、終末誘導にはアクティブレーダー誘導を使用する。

  • AIM-54B:
    製造過程を短縮出来るようにされた簡易量産モデル。
    主翼とフィンをハニカム構造を採用した板金とし、液体冷却を必要としないモデルであった。
    費用対効果が無いとしてキャンセルされたが、仕様の一部はA型の後期モデルに取り入れられた。

  • AIM-54C:
    改良型。
    レーダーのソリッドステート化が行われ、デジタル式の電子機器、固定式慣性航法装置が組み込まれて中間誘導方式に慣性誘導が追加された。
    信管の精度も上がり、低および高高度を飛行する対艦ミサイル巡航ミサイルに対処することが可能になっている。

  • AIM-54C+:
    F-14D向けに1986年より生産と配備が開始されたタイプ。
    電気交換ユニット(ECU)が再設計され、温度調節液を使用しない自己完結型の密閉サイクル冷却システムが装備された。
    これにより、携行飛行時に液体による冷却が不要となっている。
    搭載機が上昇したときやダイブしたときの海や温度変化などへの耐性と信頼性向上なども図られている。

  • AIM-54C ECCM/Sealed:
    1988年から運用が開始されたC型の改良型でECCM能力が強化された。
    C+型と同様、携行飛行時に液体による冷却が不要となっている*2

  • AEM-54:
    試験および評価のための特別なテレメトリ電子機器を有する型。

  • ATM-54:
    非アクティブ弾頭を装備する型。

  • CATM-54:
    キャプティブ弾。

  • DATM-54:
    地上での整備訓練型。

  • シーフェニックス:
    シースパローの代替として計画されていた艦対空ミサイル型。
    計画のみ。

  • Fakour-90:
    2013年2月にイランが発表した物。
    AIM-54の機体を流用しつつシャヒン*3地対空ミサイルの弾頭とシーカーを搭載している。

  • Maqsoud:
    2013年11月に明らかとなった、AIM-54を基にした新型ミサイル。


*1 現在では本ミサイルの退役により、世界最長の座はR-33(AA-9「エイモス」)に譲っている。
*2 ただし、冷却がされないことから、この型のミサイルを搭載したF-14は飛行速度に制限が課せられた、といわれている。
*3 イランがホークをコピーして改良したもの。

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