Last-modified: 2023-09-23 (土) 00:53:09 (218d)

【酸素魚雷】(さんそぎょらい)

1930年代、日本海軍巡洋艦駆逐艦の武装として開発した魚雷の一種。
内蔵のエンジン燃料を燃焼させる酸化剤に空気を用いず、純酸素を用いているのが特徴。

約80%が窒素で占められる大気から純酸素に切り替える事によって内蔵酸化剤の重量が5分の1に削減され、航続距離が延長された。
また、窒素酸化物が生じないため出力に比して排気量が非常に少なく、排気に由来する気泡も少なく、魚雷の航跡を発見されにくい。

大気をそのまま用いず純酸素を用いるという発想はさほど目新しい事ではなかったが、純酸素は極めて危険な物質であり、各国で爆発事故が多発。
日本海軍でも1916年の燃焼実験で爆発事故を起こして開発中止に追い込まれているが、1928年に開発を再開し、1933年に開発が成功した。
最終的にこれを実戦配備したのは日本海軍のみであり、秘密兵器とされた。
その作動原理は機密指定され、「特用空気」「第二空気」などと呼ばれた酸化剤が実際に何であるかは乗員にも知らされていなかった。

当時の魚雷としては世界最高峰の破壊力と、30km以上に及ぶ有効射程を誇る。
当時のアメリカ海軍艦載砲優先で魚雷を軽視するドクトリンを採用していた事も相まって、特に艦隊士気に絶大な影響を与えた。

一方、非常に大型化したため雷撃機に搭載できず、航空戦主体となった太平洋戦争では使用例が少なく倉庫に在庫が山と積まれたという。
あまりの長射程ゆえ、外れた魚雷が戦域外に迷い込んで友軍を誤爆したり別の敵に命中した例も散見される。

大量の在庫は、戦争末期において悪名高い特攻兵器・人間魚雷(特殊潜航艇)「回天」として改修・転用される事にもなった。

酸素魚雷各型

  • 九三式魚雷一型:艦艇用。
  • 九三式魚雷三型:艦艇用。炸薬量を780kgに増加した。
  • 九五式魚雷一型:潜水艦用。
  • 九四式魚雷一型:航空魚雷。短期間で量産中止。

各種酸素魚雷の要目

形式九三式魚雷一型九三式魚雷三型九五式魚雷一型九四式魚雷一型
全長900cm715cm670cm
直径61cm53.3cm53cm
重量2,700kg2,800kg1,665kg1,500kg
射程36ktで40,000m
48ktで20,000m
36ktで30,000m
48ktで15,000m
45ktで12,000m
49ktで9,000m
45ktで4,000m
弾頭重量490kg780kg400kg200kg



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