Last-modified: 2019-04-22 (月) 09:04:03 (1832d)

【臼砲】(きゅうほう)

mortar

曲射砲のうち、砲弾が高角で発射され高い放物線を描く弾道を前提とするもの。
現存する兵器の中では迫撃砲が該当する。

その設計意図は、限られたコストの中で最大限の投射弾量を確保する事にある。
反動が許容可能な程度に弱まるまで装薬を抑え、これによって砲身の軽量化・基部の簡素化を可能とする。
前線に輸送できる重量の制約の中で、野戦砲として最大級の破壊力を発揮するようにも設計できる。
また、反動低減により砲弾の外殻も軽量化でき、その分榴弾爆薬などを増量できる。

冶金学・機械工学が未成熟な時代には、そもそも臼砲でなければ実用不能な場合も多々あった。

もちろん、より重厚な砲で潤沢に装薬を用いて発射した場合に比べれば最大射程は如実に悪化する。
有効射程は高角で発射すれば多少は補えるが、根本的な初活力の差は覆せない。

そうした特性のため、機械技術の発達と共に存在意義を失っていき、19世紀頃には完全に過去の遺物となっていた。
しかしその状況は第一次世界大戦で覆され、塹壕などに隠れた敵に上空から榴弾を投げ込むための火砲として復活を遂げる。
塹壕戦においては容易に敵陣近くまで物資を運び込めたため、有効射程の短さはさしたる問題にはならなかった。

なお、20世紀以降の近代臼砲を「迫撃砲」と称するのは日本語特有の表現。
「迫撃砲」も「臼砲」も英語では同じmortarである。

有効射程の短さは、特に大口径臼砲においては致命的な問題である。
このため、榴弾砲カノン砲ロケット弾の進歩と共に大型の臼砲は廃れていった。
一方、過剰な大型化を放棄して十分に軽量化すれば、臼砲は現代でも効率的な兵器である。
現代の臼砲は主に歩兵砲として、歩兵に継続的な支援火力を提供している。

関連:榴弾砲


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