Last-modified: 2023-11-03 (金) 18:49:38 (175d)
【ユーロファイター・タイフーン】 †
Eurofighter Typhoon.
イギリス・ドイツ・イタリア・スペインの4ヶ国が共同開発した双発マルチロール戦闘機。
トーネードの実績をもとに1986年に英・西独・伊の3ヶ国で開発が開始され、まもなくスペインもこれに加わった。
政治的トラブルによる計画の遅延が頻発し、量産開始は2002年までずれ込んでいる。
当初はフランスも計画で主要な位置を示していたが、元々軽量の多目的戦闘機を求めていたことやイギリスのエンジン設計面及び機体重量の変更提案などで態度を変え、脱退した*1。
その後、フランスは独自にラファールを開発する。
開発当初の仮称は「F/EFA（Future European Fighter Aircraft：未来のヨーロッパ戦闘機)」。
1992年には「EF-2000」と改称され、1998年には正式にタイフーンと命名された。
本機は開発時点から制空戦闘機としての性能が追求されたため、対地攻撃能力は同世代のマルチロールファイターであるラファールやグリペンに劣ると評価される場合が多い*2。
一方で、それらに無い超音速巡航能力があり、機動力に優れる。
また、パルスドップラーレーダー、IRST、先進防御支援システム（DASS）など高度なアビオニクスを搭載し、音声入力にも対応。
機体はフライバイワイヤーによるコンピュータ越しでの操縦を前提として、低翼のデルタ翼と高翼のカナード翼を組み合わせるなど静安定緩和に務めた設計となっている。
関連：EAP
スペックデータ †
| 乗員 | 1名/2名（複座型） |
| 全長 | 15.96m（主翼端ポッド含む） |
| 全高 | 5.28m |
| 翼幅 | 10.95m |
| 主翼面積 | 51.2�� |
| 空虚重量 | 11,000kg |
| 総重量 | 16,000kg |
| 最大離陸重量 | 23,500kg（過荷時） |
| 燃料容量 | 4,996kg（機体内） |
| エンジン | ユーロジェット EJ200?ターボファン×2基 |
| 推力 | 60kN（ドライ推力）/90kN（A/B使用時） |
| 最高速度 | マッハ2+ マッハ1.25（海面上） マッハ1.5（超音速巡航時） |
| 航続距離 | 2,900km |
| フェリー航続距離 | 3,790km（外部タンク×3基） |
| 戦闘行動半径 | 1,389km（AAM×6発、10分間のCAP（1,000l外部タンク×3基）） 185km（3時間のCAP（1,000l外部タンク×3基）） 601km（対地攻撃ミッション時、lo-lo-lo（1,000l外部タンク×3基）） |
| 実用上昇限度 | 19,812m |
| G限界 | +9G/-3G |
| 上昇率 | 318m/s |
| 翼面荷重 | 312kg/�� |
| 推力重量比 | 1.15（インターセプター構成） |
| 固定武装 | マウザーBK27 20mm機関砲×1門 |
| 兵装 | |
| ハードポイント | 計13ヶ所 主翼下8ヶ所、胴体下部パイロンステーション5ヶ所、最大ペイロード9,000kg |
| 空対空ミサイル （2〜6発） | AIM-120 AMRAAM ミーティア IRIS-T*3 AIM-132「ASRAAM」 AIM-9「サイドワインダー」 |
| 空対地ミサイル | AGM-65「マーベリック」 ブリムストーン SPEAR 3*4（搭載予定） |
| 巡航ミサイル （18発） | SCALP-EG/ストームシャドウ タウラス KEPD 350 |
| 空対艦ミサイル | AGM-84「ハープーン」（計画） シーキラー/マルテER（最大6発搭載可能） JSM（Joint Strike Mssile）（予定） |
| 対レーダーミサイル （4〜6発） | AGM-88 HARM ALARM |
| 爆弾類/ロケット弾 | 通常爆弾（500lb級12発、1000lb級7発、2000lb級5発） ぺイヴウェイシリーズ（��/��/�検� GBU-31 JDAM GBU-39「SDB」 HOPE/HOSBO スパイス250 CVR-7 ロケット弾ポッド |
| その他兵装 | 増槽×3基 「ダモクル」照準ポッド 「ライトニング�掘�レーザー照準ポッド 「スナイパー」照準ポッド |
| FCSレーダー | ユーロレーダー「キャプター（CAPTOR）」多モードパルス・ドップラーレーダー*5 |
| 電子装備 | DASS（防御支援サブシステム）：以下の機器で構成。 防御支援レーダー（DAC） レーダー警戒受信機（RWR） 電子戦支援装置（ESM） レーザー警戒受信機（LWR） ミサイル接近警戒器（MAW） チャフ・フレアディスペンサー ジャミング発生装置 曳航式デコイ |
| PILATE（受動式赤外線探知装置） MIDSデータリンク端末（MIDS-LVT(1)） VTAS（Voice and hands-on Throttle And Stick）*6 HMSS（ヘルメット装着式シンボリックシステム） （別名「ストライカー」。JHMCSに該当） | |
バリエーション（カッコ内は生産機数） †
- トランシェ1（Tranche 1）
- ブロック1（5機（飛行試験用）/31機（量産））：
DASS（防御支援サブシステム）を搭載していない初期量産型。
複座型で初期の乗員訓練と防空訓練のみに使用。
イギリスでは「タイフーンT.1」、スペインでは「CE.16」の名称で呼ばれている。
飛行試験用の5機と量産機31機が生産された。
- ブロック2（47機）：
防空能力を高め、完全な初期作戦能力を持った型。
メインコンピュータのソフトウェアをPSPIからPSPI2に変更し、一部簡略化されたDASSを搭載。
キャプターレーダーやIFF装置、MIDS（多機能情報伝達システム）はある程度のセンサー融合が為された。
簡易版の自動操縦装置、マイクロ波着陸装置、直接音声入力装置を搭載する。
イギリスでは「タイフーンF.2」、スペインでは「C.16」の名称で呼ばれている。
- ブロック2B（38機）：
ブロック2にケアフリーシステムを追加した機体。
- ブロック2B（38機）：
- ブロック5（21機）：
完全作戦能力を持った機体。
ペイブウェイ��や1,000lb通常爆弾の搭載が可能。
BK27の空対地使用が解禁され、DASS、直接音声入力装置、センサー融合共に完全な能力を得た。
またPIRATE（赤外線捜索追跡装置）を追加した（独向け機体を除く）。
イギリスでは単座型は「タイフーンFGR.4」、複座型は「タイフーンT.3」の名称で呼ばれている。
- ブロック5A（15機）：
ブロック5に準じたオーストリア向けの機体。
- ブロック1（5機（飛行試験用）/31機（量産））：
- トランシェ2（Tranche 2）
- トランシェ3（Tranche 3）
対地攻撃能力を完全実装した生産型で、3Aと3Bの二種に分けて調達する予定。
トランシェ3Aは合計112機の調達を確定させたが、トランシェ3Bは各国における防衛費削減を原因として先行きは不透明。
- トランシェ4：
ドイツ空軍がトランシェ1の代替として調達するモデル。
トランシェ3Aをベースにアップデートを行ったもの。
- ユーロファイター2020：
ユーロファイター・コンソーシアムの公式広報誌「ユーロファイター・ワールド」2011年2月号で掲載されたコンセプト。
主翼前端にLERXを追加し、EJ200エンジンの推力増強と推力偏向ノズルの導入、CFTへの対応などの改良が行われる。
*1 この時スペインも脱退したが、後に再参加している。
*2 一例として、スイス空軍が実施した次期主力戦闘機評価試験（2015年）では、対地攻撃能力においてラファール：7.63、グリペン：5.8、ユーロファイター：5.75の評価が下されている。
*3 Infra Red Imaging System Tail/Thrust Vector-Controlled.
*4 Select Precision Effects At Range Capability 3.
*5 トランシェ3では改良型の「キャプターE」アクティブフェイズドアレイレーダーを搭載予定。
*6 HOTASとDVIと呼ばれる直接音声入力装置で構成される、パイロットの作業効率を上げる為の装置。
*7 空対空と空対地任務を同時に行う事。
