Last-modified: 2022-12-13 (火) 19:21:42 (501d)

【フリッツX】(ふりっついくす)

Fritz X

第二次世界大戦中、ルフトバッフェ(ドイツ空軍)が運用した世界初の誘導爆弾
正式名称は ルールシュタール/クラマー X-1(Ruhrstahl/Kramer X-1)。
破砕爆弾のSD 1400X、徹甲爆弾のPC 1400X/FX 1400に分類される。

ドイツ空軍で運用されていた1,400kg爆弾を原型として開発された。
投下された後、投下母機の爆撃手が照準器によって弾体後部に付けられた光点を観測、ジョイスティックを用いて手動で誘導される*1(手動指令照準線一致誘導方式)。
当時の爆弾としては大型の1,400kg爆弾が時速1,000km/h以上の速度で従来より高確率に目標へ着弾、有効打を得やすいという点で優れていた一方、誘導時は投下母機の姿勢や周囲の天候、敵の迎撃状況に左右されるという弱点もあった。

初の実戦投入は1943年9月、連合国降伏枢軸国から離脱したイタリアの海軍艦艇に対する攻撃任務であった。
3機のドイツ空軍爆撃機*2より投弾されたPC 1400Xが戦艦「ローマ」の前部弾薬庫、機関室、左甲板(第2砲塔と艦橋の間近)に命中し爆沈、戦艦「イタリア」(旧称「リットリオ」)を大破させた。

その後、同時期の英米連合軍による「アヴァランチ作戦」(独呼称「サレルノ水際戦」)に対する反撃として陸上部隊の上陸支援を行っていた英米海軍を襲撃。
英戦艦クイーン・エリザベス級「ウォースパイト」、米ブルックリン級軽巡洋艦「サバンナ(USS Savannah,CL-42)」ほか輸送船を大破させ、サヴァンナは深刻な浸水が発生し、ウォースパイトは航行不能に陥った。
また、対地攻撃にも使用されている。

最終的に1,386発が生産されたものの実戦に投入された数は少なかった。
1943年〜44年までに約半数が性能試験に使用された。

スペックデータ

全長3.26m
全幅1.35m(フィン含む)
胴体直径56cm
重量1,570kg
最大降下速度1,035km/h(諸説あり)
弾頭アマトール爆薬
弾頭重量320kg
飛行高度5,000〜7,000m
射程5km
推進方式無し
誘導方式手動指令照準線一致誘導(Kehl/Strassburg : FuG203 & FuG230)


派生型

※基本型以外にも以下の派生型が作られたが量産はされていない。

  • X-1:
    基本生産型。

  • X-2:
    降下速度の増速と赤外線誘導装置の搭載を予定したもの。1機のみ試作。

  • X-3:
    弾体を大型化し、音速以上の降下速度と射程延長を計画したもの。

  • X-4?
    空対空ミサイル型。詳しくは項を参照。

  • X-5:
    弾体をさらに大型化し、増大した空気抵抗により減速した降下速度を炸薬量増加によって解決を図ろうとしたもの。
    総重量は2,250kgに達した。

  • X-6:
    弾体先端と炸薬を強化した重徹甲爆弾型。

  • ペーターX(Perter X):
    先行試作品の中の1つ。
    X-5に相当する大きさだが装薬量はX-1程度しかない*3


*1 後期型には航空灯が追加され、夜間爆撃での姿勢識別を容易にしていた。
*2 Do217?Ju88?He111?とも言われており、定かでは無い。
*3 He177?のマニュアルには2,500kg爆弾として記載されている。

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