Last-modified: 2022-03-29 (火) 10:27:19 (760d)

【ドクトリン】(どくとりん)

Doctrine.

科学的手法では解決できない問題について便宜的にもうけられる、十分な根拠のない架空の原理原則。
日本語では「教義」「教理」「主義」などと訳される。

正当性を保証できないため、必然的に論争・誹謗中傷・派閥抗争の的となる。
基本的には権威者が政治的意図をもって表明し、階級制度や権威による強制力で正否が判断される。

例えば「人を殺してはいけない」という観念はドクトリンの典型である。
客観的事実に基づいて科学的に考える限り、人が人を殺してはいけない本質的理由などない。
しかし社会は「人を殺してはいけない」とドクトリンを定め、人殺しを捕らえて刑罰を与えている。
これは論理的には正しくないが、正しかろうと間違っていようと「人を殺してはいけない」と決まっているのだ。

また、政治家の行動方針は、それぞれの状況や社会問題に合わせて提唱されるドクトリンである。
この類のドクトリンは、政府首班の名を冠して「アイゼンハワー・ドクトリン」「吉田ドクトリン」などと区別される。

原義では、"Doctorine"は宗教における教義・教理を指す。
実際、ドクトリンの多くは古来の宗教観に由来する固定観念の流用・言い換えである。
現代でもそのような色彩は強く、特定のドクトリンを盲信する排他的な原理主義者は広範に見られる。

軍事におけるドクトリン

軍隊は将来起こりえる危険に備え、そのために莫大な費用を投じて入念な準備を整えている。
そして、将来に備えて計画を練るには、将来何が起きるかを予想するドクトリンが不可欠である。
予算・資財・人員・訓練時間は全て有限であり、あらゆる事態に十分に備える事は不可能であるからだ。

このドクトリンは基本的に参謀の研究によって策定される。
蓋然性の高い予想を集め、より重大な脅威に備え、重要性の低い課題を切り捨てるのである。
この策定には多くの政治的意図が絡むため、ドクトリンを巡る派閥抗争も珍しい事ではない。

軍事ドクトリンがどの程度「正解」に近いかは、大抵の場合、バトルプルーフが出るまでは判断できない。
よって、軍事ドクトリンは新しい情報に応じて更新を要するのだが、更新は非常に難しい。
新しいドクトリンは、新しいがゆえに検証が不十分であり、旧来のドクトリンよりも潜在的な問題点が多い。
しかし一方で、古いドクトリンは既知のドクトリンであり、敵から技術的奇襲を受ける危険性を徐々に増していく。

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