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*&ruby(たいりょうはかいへいき){【大量破壊兵器】}; [#u1596124] Weapons of mass destruction(WMD).~ ~ 大量の人間を殺害し、あるいは都市などの構造物に決定的な破壊を及ぼす兵器。~ 語源・用法ともに政治的イデオロギーの色彩が強く、厳密な定義は存在しない。~ ~ 厳密な定義がないので、それが善いとか悪いとか、合法だとか違法だとかいう観念も基本的にはない。~ プロパガンダでは一般に「邪悪なもの」として喧伝されるが、厳密に判断するなら、元より正邪など問題ではない。~ あらゆる兵器がそうであるように、有利であれば使用されるし、不利を招くなら規制される。~ 大量破壊兵器の実際の取り扱いは、それがもっと具体的にどのような兵器で、どのような状況に置かれているかで決まる。~ >[[イラク戦争]]では「イラクが大量破壊兵器を保有している疑いがある」事が[[開戦事由]]になった、とされる。~ しかし実際の[[開戦事由]]は、「イラクが[[湾岸戦争]]における停戦協定に背いた」事である。~ イラクは停戦時の国連決議で大量破壊兵器を破棄する義務を負ったが、その義務を履行しなかった、とみなされた。~ もし[[湾岸戦争]]の講和が別の形であったなら、大量破壊兵器の保有は[[開戦事由]]にならなかったはずである。~ さらに付記しておくと、[[イラク戦争]]開戦時点において、イラクは大量破壊兵器を一切保有していなかったと考えるのが妥当である((戦後の大混乱を経てさえ現物が一切発見されないのだから、そう考えるしかない。))。 **発祥と定義の変遷 [#bea41d81] 最も古くは1937年に、新聞記事における表現として「大量破壊兵器」の語が出現している。~ この時点での「大量破壊兵器」とは[[爆撃機]]など[[エンジン]]駆動の[[プラットフォーム]]であった。~ この当時、大量破壊とはすなわち大量の[[爆弾]]であり、戦争そのものの不可避な結果を指していた。~ 当時、すでに存在していた[[毒ガス>化学兵器]]について、この時点で特別な言及はない。~ ~ [[第二次世界大戦]]終結後には、大量破壊兵器とはすなわち[[核兵器]]を指す語となった。~ [[相互確証破壊]]が当時の焦点であり、研究者や思想活動家も[[核兵器]]に焦点を合わせて弁明を行うのが常だった。~ 同時代の「通常兵器」でも物量次第で同等の大量破壊をもたらし得る、という事実は多くの場合に黙殺された。~ ~ [[冷戦]]の後半には、[[化学兵器]]や[[生物兵器]]もまた大量破壊兵器とみなされるようになった。~ 事実上けっして使用されない[[核兵器]]とは異なり、[[化学兵器]]や[[生物兵器]]は現実の脅威である。~ [[テロリスト]]にも製造できる安価な兵器であり、実際に製造され、[[テロ>テロリズム]]に使われた。~ また、当時の諸[[紛争]]ではしばしば[[化学兵器]]が投入され、その戦禍は[[マスコミ]]を通じて広く喧伝された。~ 「通常兵器」でもそれら以上の惨禍をもたらし得る、という事実は多くの場合に黙殺された。~ ~ 現代では[[NBC兵器]]が「大量破壊兵器」である、という見解でおおむね一致する。~ しかし、[[テロリズム]]の文脈では軍用高性能[[爆薬]]や、核爆発を伴わない[[放射性物質]]を大量破壊兵器に含める場合がある。 しかし、[[テロリズム]]の文脈では軍用高性能[[爆薬]]や、核爆発を伴わない[[放射性物質]]((いわゆる「汚い爆弾」として破壊活動に用い得る。))を大量破壊兵器に含める場合がある。