【Honda Jet】 †
Honda HA-420.
日本の自動車・輸送機械メーカー「本田技研工業」とその子会社「ホンダ・エアクラフト・カンパニー」が開発・生産している双発小型ビジネスジェット機。
本機最大の特徴は、主翼上部に自社開発*1のターボファンエンジン*2を取り付けた独自の構造*3である。
これにより、エンジン支持構造を胴体に組み込む必要がなくなってキャビン容積が向上、乗客の居住性改善が図られている。
また、従来のビジネス機の「胴体後部両舷にエンジンをつける」方式に比べて空気抵抗の軽減も図られる、としている。
(ただし、客室からの視界には多少の制限がかかるという欠点もある)
更に、上述のエンジンレイアウトや空気抵抗を軽減する主翼の構造、アルミニウム合金の削り出しで作られた構造材、低燃費エンジンなどの工夫により、従来に比べて40%の燃費向上が図られている。
本機は他の日本製ビジネス機と同様、アメリカの現地法人を拠点として生産・販売を行うこととしており、2015年12月より顧客への引き渡しが始まった。
2023年現在、200機以上が出荷されており、月産7機体制で生産が行われている。
当初、日本での販売は行われていなかった*4が、2018年からは日本でも販売されている*5。
三菱のスペースジェットが失敗に終わったことにより、本機は2023年現在、日本で開発・生産されている商用機としては唯一の「商業的に成功した」機体となっている。
2018年、航続距離の延長や騒音のさらなる低減、アビオニクスの改善などの改良が施された「Elite」がラインナップに加わった。
また、2020年にはさらにアップグレードされた「Elite S」がラインナップに加わっている。
スペックデータ †
タイプ | Honda Jet | Honda Jet Elite |
乗員 | パイロット1〜2名 | |
乗客 | 5〜6名(エアタクシー用) | |
座席数 | 6〜7席 | |
全長 | 12.99m | |
全高 | 4.54m | |
全幅(翼幅) | 12.12m | |
機内寸法 (長さ×幅×高さ) | 5.43m×1.52m×1.47m | |
最大離陸重量 | 4,808kg | 4,853kg |
エンジン | GE・ホンダ・エアロ・エンジン HF120ターボファン×2基 | |
推力 | 9,119N(2,050lbf)×2 | |
最大巡航速度*6 | 782km/h(422KTAS) | |
最大航続距離*7 | 2,265km | 2,661km |
最大巡航高度 | 13,106m | |
最大上昇率 | 1,216m/min | 1,250m/min |
離着陸距離 (離陸/着陸) | 807m/694m |
余談 †
本田技研工業のグループ企業に「本田航空」があり、埼玉県比企郡川島町に「ホンダエアポート」という飛行場を保有・運営しているが、本機は同飛行場への離着陸ができない。
これは、同飛行場の滑走路が720mと短いことと、周辺住民との取り決めによりジェット機の運用が制限されているためである。
*1 厳密には、GEとホンダの合弁会社である「GE・ホンダ・エアロ・エンジン」社が開発・製造している。
*2 現代の航空機産業において、機体のメーカーがエンジンまで自社開発するのは珍しい。
旧西側諸国の大手航空機メーカーであるボーイング・エアバス・ボンバルディア・ロッキード・マーチンでは、GE、P&W、ロールスロイスといった専業メーカーが作ったエンジンを採用している。
*3 同様の構造の機体には、1960年代に旧西ドイツで開発されたVFW614旅客機があった。
*4 日本ではビジネス機の生産・販売が商業的に成り立たないとみられていたため。その理由についてはビジネス機の項目も参照。
*5 2018年12月、日本での型式証明が発行された。
*6 高度9,144m、国際標準大気。
*7 全米ビジネス航空協会(NBAA)IFRでの航続距離、乗員4名。