Last-modified: 2024-05-11 (土) 20:26:38 (11d)

【潜水空母】(せんすいくうぼ)

かつて構想されていた、航空母艦としての艦載機運用能力と潜水艦の潜航能力を兼ね備える艦艇
現存しない艦種だが、その設計思想は現代の戦略潜水艦攻撃潜水艦に受け継がれている。

本項で「潜水空母」と称する艦は全て水上機を運用するもので、飛行甲板を持っていない。
一般に航空母艦の要件とされる「飛行甲板を有して艦上機を運用する」能力を持つ潜水艦の実例は存在しない。

概史

潜水空母という概念は、実用的な潜水艦航空機が出現した20世紀初頭から、各国の海軍で研究対象になっていた。
実用化されたのは1932年、大日本帝国海軍が就役させた「伊号第五潜水艦」にカタパルト飛行機格納筒(格納庫)が備えられ、世界初の「航空機を搭載する潜水艦」となった。
これは艦隊決戦に先だつ偵察任務を想定されたもので、日本では以後も同様に水上偵察機を搭載した潜水艦が作られていった。

なお、この設計思想で実用化レベルまで辿り着いたのは日本のみである。
(あるいは「この過ちを犯したのは日本だけだった」と評するべきなのかもしれないが)

しかし、実戦では航空主兵主義が台頭し、空母艦載機航続距離が当初の想定以上に進化。
あえて潜水艦に戦場偵察を行わせる意味は失われ、遊兵と化した「航空機搭載潜水艦」は通商破壊戦などの一撃離脱ゲリラ的用法に用いられた。
また、大戦末期にはここから発展し、攻撃機を数機搭載した「伊号第四〇〇潜水艦」も建造された。

それら「航空機搭載潜水艦」は1942年に潜伏したまま太平洋を踏破し、アメリカ本土に対する奇襲的な砲爆撃を成功させている。

1942年6月、伊号第二十五潜水艦がオレゴン州アストリア市郊外のフォート・スティーブンス陸軍基地に艦砲射撃を実施している。
同年9月、同艦から発進した零式小型水上偵察機?が、オレゴン州ブルッキングスの森林に焼夷弾を投下して火災を発生させている。

その奇襲戦略上なんの意味があったのかはさておき、性能上それが可能であった事実は各国の海軍にとって貴重な戦訓となった。
結果、次代の潜水艦運用思想に「飛翔体の搭載母艦」というヒントを与え、その設計思想は攻撃潜水艦として結実する。
なお、潜水艦に搭載する飛翔体としてはミサイルが選択され、潜水艦に有人航空機を搭載するという設計思想は途絶えた。

戦後、アメリカでF2Y「シーダート」ジェット水上戦闘機を搭載する原子力潜水空母が構想されたが、F2Yの開発中止に伴って構想のみで終わっている。

兵器としての評価

現在、潜水空母の兵器としての評価は「実用性皆無な、夢想に類するもの」という見解でほぼ確定している。

航空母艦潜水艦は両者とも設計上きわめて厳しい制約を伴い、技術的に両立が困難である。
また、航空母艦潜水艦の用途自体が根本的な段階で相互に排他的な関係にあり、両立はほぼ不可能に近い。

戦術的に考えて、「水中に潜伏する事」と「飛行機離陸させ、その帰還を待つ事」はふつう両立しない。
1940年代までは潜水艦を探知する技術が未発達であったため、それらが本来両立し得ないのだと発覚する事もなかった。
しかし、現代では綿密な対潜・対空警戒網が敷かれており、敵地近海での浮上はもちろん、潜航したままでも捕捉されるのは時間の問題である。

現代の潜水艦はこの制約により、自国制海権の圏外では著しく活動を制限されている。


トップ 編集 凍結 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS