Last-modified: 2024-02-18 (日) 01:31:36 (62d)

【植民地】(しょくみんち)

colony.

法制上の主権者と軍事的な実効支配者が一致しない土地。
通常、これは以下のいずれかである。

  • 首都からの距離が遠すぎて統制が効かないため行政管理が半ば放棄された、極端に地方自治権の強い土地
  • 敗戦・内戦・陰謀などで破綻した後、傀儡政権によって管理され他国の言いなりになっている国

典型的な植民地は、封建制や氏族社会を敷く地域に海外から列強がやってきて砲艦外交を仕掛けた、という場合に生じる。
ただ単に寄港して補給を受けたいというだけの要求でさえ、貿易と港湾にまつわる利権の錯綜は容易く内戦に発展し得る。
そもそも文民統制のない社会において内戦はほぼ常態であり、隣人を殺すために外患を誘致するのも特におかしな事ではない。

近代植民地の多くは、そのような混乱と荒廃に乗じて「平和維持」の名目で列強が侵略を仕掛ける事で完成した。
平和維持があくまで建前であって実際の開戦事由が植民地の利権にある事は誰の目にも明らかだが、同時に、それは虚偽ではなかった。
国益のために現地(に進出する邦人)の平和を維持する必要があったし、必要があるという事は、現地が混乱と荒廃の中にあるという事だった。

植民地支配においては残虐行為と搾取が横行したし、それが歴史解釈における複雑な政治問題を招いているのも確かである。
ただし、植民地化以前の先住民が朴訥で平和主義であったとか、搾取のない公平な社会を構築していたなどと考えるのは正しくない。

植民地の支配

植民地は建前上は支配者の主権が及んでいない事になっており、領土として編入されていないという点に特徴がある。
これは実効支配者の国家運営において、いくつかの利点をもたらす。

まず第一に、実効支配者がいくつかの法的制約を受けなくなる点である。
本国の国民に対して行う事が許されない残虐行為・搾取・収奪も、本国の法が適用されない植民地では実行可能となる。
また、本国に置いておくと問題を招く貧困層・囚人・少数民族などを植民地に押し込める棄民政策も近代ではよく行われた。

実際のところ、植民地支配を行った国家の多くは本国でも(現代の基準における)残虐行為や搾取や収奪を行った。
もちろん植民地においてはさらなる残虐非道が横行したし、そもそも支配者の意図とは関係ない所でも治安が悪かった。
治安良好になれば現地市民が独立を求めて紛争を起こすため、意図的に治安を悪化させる陰謀が行われる場合も多い。

第二に、本国は経済政策における「捨て駒」「被害担当」として植民地を活用する事ができた。
住民を狩り集めて奴隷として連行する事もできたし、農奴を餓死させる事を念頭に置く商品作物の大規模農場も構築できる。
本国以外の他国との交易を禁止ないし制限し、本国で作った農作物や工業製品を暴利で売りつける事もできた。

そうした行動により、植民地での過激な収奪によって短期的に莫大な富を得る事ができた。
一方で、植民地支配は続けば続くほど労働者を磨り潰して反逆者を増やすため、時間経過と共にその経済効果は落ちていく。
このため、ほとんどの植民地はいずれ利用価値を喪失して放棄されるか、紛争に勝利した現地民によって奪還される。

旧植民地

21世紀の現在において、かつての植民地は宗主国から離脱し、独立国となっている。
とはいえ、長きに渡る植民地支配によって国家としての政治基盤や産業構造が歪んだ地域も多い。

元から歪んでいて原始的であり、だから植民地支配に抗えなかったのだ、という「政治的に正しくない」主張もなくはない。
学術的見地から見ればそれも一面の事実だが、植民地支配からの解放を掲げて建国した国ではそのような政治思想は歓迎されない。

旧支配者の資本家が旧植民地の利権を買収する事は多く、植民地時代ほどではないにせよ搾取的な経営も珍しくない。
実際問題、植民地であった土地の脆弱な産業基盤から経済発展を志すなら、比較優位である物価・人件費の安さを活用せざるを得なくなる。
それが商業倫理の観点から見て「安く買い叩ける」「貧困層を安い賃金でこき使える」という搾取的構造であるのは明らかだ。
しかし公平な貿易(Fair Trade)で利潤を確保できるほど恵まれた企業は希少で、しかも列強各国に基盤を持つような多国籍企業に限られる。

外貨収入を特定の商品作物に強く依存するモノカルチャー経済が旧植民地にはよく見られる。
これが新規の市場参入が困難であるためなのか、転作のための農学的知見が足りないのか、政策を遂行する行政能力の欠如なのかは判然としない。

また、貧困問題は学問と文化の脆弱さとも密接に繋がっており、その事も旧植民地における産業育成・政権運営の妨げとなる。
植民地時代に先住民が殺戮された地域、異文化圏から多数の奴隷が送り込まれた地域、先住民が国家を形成していなかった地域において、学士は希少である。
学歴どころか公用語での日常会話すら困難を伴うような事例もままあり、いずれにせよ教育の不備は行政管理を著しく困難にする。
また、文化的蓄積の不足は相互理解の欠如を招き、無思慮な政治判断の原因となり、それが決定的な決裂を引き起こして国政を破綻させた事例も見られる。

貧困・無教養・多民族の組み合わせは明白に紛争を誘発するため、そのような国家は、少なくとも財源が安定するまで、独裁を布く必要に迫られる。
「独裁者に支配された失敗国家」というのは後発国に対する典型的な偏見で、実際に独裁体制の長期化が政治腐敗を招くのも事実である。
とはいえ、そのような国家の民主化が社会問題を解決へと導いた事例はほとんどなく、問題が解決しなければ結局は独裁体制に立ち戻る事になる。

残存する植民地

各国の領有権主張の面で、権利上残存している植民地(海外県)は今も数多い。
ただし、それらはほぼ全てが人頭からの経済的利益を見込めない離島である。

制度や慣習上、全ての離島が植民地と見なされているわけでもない。
例えば日本の小笠原諸島・佐渡島・沖縄諸島などは離島であるが植民地ではない。

多くは島嶼の領土からの収入よりも国防、外交、海運、または単に歴史的経緯から領有されているもので、行政管理も植民もさして行われていない。
複数の国家が領有を主張して法的な係争地となっていたり、どの当事国からも不干渉を約された非武装地帯となっている離島もある。
ただし、政治的経緯から紛争の事由となったり、後から海底油田が発見されるなどして利権が錯綜し始めた事例も見られる。

歴史的文脈において「植民地」という場合、この種の離島を含む場合と含まない場合がある。
狭義においては、原住民や棄民にまつわる歴史的軋轢を伴わないような離島は植民地に含まれない。
広義においては、近代帝国主義において漁業利権や補給港として影響を及ぼしていた離島は、植民地の一部に含まれる。

関連:フォークランド紛争


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