Last-modified: 2023-04-29 (土) 16:29:52 (356d)

【SA-10】(えすえーじゅう)

旧ソ連が開発した、現在ロシア軍の主力の一つである長射程地対空ミサイル
NATOコードではSA-10「グランブル」、ロシア軍では「S-300」と呼ばれている。
1960年に開発され設計はファケル・ミサイル設計局が担当し、旧式化したS-25「ベルクート(SA-1『ギルド』)」?S-75「ドヴィナー(SA-2『ガイドライン』)」S-125「ネヴァー(SA-3『ゴア』)」の後継として開発された。

車両構成は発射機*1・多機能交戦レーダー搭載車*2ミサイル補給車両・通信車・指揮車両・整備車両等で、どれもがトラックに搭載されているか牽引のため移動・機動展開能力が上昇した。
この辺りはアメリカ軍MIM-104「ペトリオット」とよく似ている。
ミサイル(5V55K)は発射機に4発搭載されており、発射の際は発射機を垂直の状態に上げ、コールド・ローンチ方式で発射される。

ミサイルは高度約30,000mまで到達でき、高高度目標は元より中高度・低高度目標の航空機巡航ミサイル撃墜できる。
弾道ミサイルに対しては、S-300Pが限定的な弾道ミサイル対応能力を持つ。
最大射程は47kmでTVM誘導方式だがレーダー索敵距離は不明である。
SA-10の登場は、それまで旧ソ連軍で最新であったSA-6「ゲインフル」SA-5「ガモン」を一気に旧式に追い込んだと言っても過言ではない。

1980年から量産が開始され、現在も継続中である。
これまでにベラルーシ・ブルガリア・ウクライナ・クロアチア・ギリシャ・ハンガリー・中国・インド・イラン・シリア等に輸出され、現在も積極的に販売が続いている。
なお、SA-10の発展型として1980年代半ばにS-300V(SA-12『グラディエーター/ジャイアント』)が登場し、さらにはキーロフ級スラヴァ級等の巡洋艦艦対空ミサイル(S-300F)としても採用された。

関連:SA-12 SA-6 SA-5 カーラ キーロフ スラヴァ 051C型

SA-10 1.jpg
SA-10 2.jpg

Photo:Ukraine Department of Defense

スペックデータ

全長7m
直径45cm/51.5cm(PMU-1)
翼幅90cm
発射重量1,480kg/1,450kg(SA-N-6)/1,500kg(PMU-1)
射程ミサイル一覧参照
速度ミサイル一覧参照
推進方式固体推進ロケットモーター
弾頭HE(100kg/133kg(SA-N-6))または核弾頭(2kT)
誘導方式指令?慣性セミアクティブレーダー(TVMモード)


ミサイル一覧

名称全長直径重量最大射程最高速度弾頭重量誘導方式
5V55K/R7m450mm1,450kg47km/75km1,900m/s100kgCommand
5V55R/KD75km/90km133kgSARH
5V55RM
(S-300F(SA-N-6))
725cm508cm1,664kg90km2,000m/s
5V55U7m450mm1,470kg150km
48N67.5m500mm1,780kg150kgTVM
48N6P-011,800kg195km
48N6E750cm519mm1,900kg120km2,100m/s143kg
48N6E2約800cm約600cm2,250kg200km180kg
9M82-420kg100km
30km
(98,000ft)
2,400m/s150kgSARH
9M83-75km
25km
(82,000ft)
1,700m/s
9M83ME-200km-
9M96E1-330kg40km900m/s24kgARH
9M96E2-420kg120km1,000m/s
40N6-400km-


レーダー性能一覧

索敵レーダー
名称36D676N664N696L6E9S159S19MR-75MR-800
NATO
コード
ティン
シールド
クラム
シェル
ビッグ
バード
-ビルボードハイ
スクリーン
トップ
スティール
トップ
ベア
用途-低高度
検出
-全高度
対応型
-追跡用海軍
(艦船用)
索敵範囲180〜360km120km300km250km-300km200km
同時索敵
目標
120300-30020016-


追跡レーダー
名称30N630N6E130N6E29S32-13R41
NATO
コード
フラップ
リッドA
フラップリッドBグリルパントップドーム
索敵範囲-200km140〜150km100km
同時追跡目標41210012-
同時攻撃目標46366
備考-フェイズドアレイレーダー-


主な搭載艦艇(S-300F)

主な種類。

  • S-300P(SA-10A):
    初期生産型。

    • S-300PT-1/PT1-A(SA-10B/C):
      初期生産型の改良型。

    • S-300PS/PM(SA-10D/E):
      核弾頭搭載型。

  • S-300PMU(SA-10F):
    中期生産型。

  • S-300PMU-1(SA-20A「ガーゴイル」):
    中期生産型の改良型。

  • S-300PMU-2 "Favorit"(SA-20B):
    後期生産型。

  • S-300F(SA-N-6「グランブル」):
    P型の艦対空ミサイル型。
    「フォールト*3」/「リフ(輸出型)」と呼ばれる。
    システムは5V55RMミサイルとB-203Aリボルバー式VLS、3R41「ヴォルナ(NATOコードネーム:トップ・ドーム)」射撃指揮装置によって構成される。

    • S-300FM「フォールトM」(SA-N-20):
      PMU-1型の艦対空ミサイル型。輸出型は「リフM」と呼ばれる。
      キーロフ級ミサイル巡洋艦4番艦「ピョートル・ヴェリーキィ」や051C型に搭載された。

  • S-300V(SA-12)
    PMU型の発展型。詳しくは項を参照。

  • 紅旗9(HQ-9)
    中国がS-300PSを参考に独自開発した長距離地対空ミサイル。
    詳しくは項を参照。

  • 紅旗10(HQ-10):
    S-300PMU-1の中国でのライセンス生産型。

  • 紅旗15(HQ-15):
    HQ-10の改良型。
    射程距離が延長されている。

  • 紅旗19(HQ-19):
    S-400相当。詳細不明。

  • S-400(SA-21)
    P型の発展型で後継。
    当初はS-300PM3もしくはS-300PMU3とされていた。


*1 ウラル375トラックで牽引される5P85T牽引式発射機またはスカッドB短距離弾道ミサイルのMAZ-543自走発射機を改造した5P85S自走式発射機。
*2 索敵レーダーとして、ティンシールド・クラムシェル・ビッグバード・ビルボード・ハイスクリーンが、追跡レーダーとして、フラップリッドA/B・グリルパン・トップドームがある。
*3 Форт:ロシア語で要塞の意。

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