*&ruby(ほまれ){【誉】}; [#p302c24f]
[[中島>中島飛行機]] 誉/[[ハ45]]~
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[[中島飛行機]]が開発、[[日本軍]]で運用された[[航空機]]に搭載された[[空冷エンジン]]。~
海軍制式名称「誉」略符号「NK9」、陸軍制式名称「四式一八五〇馬力発動機」ハ番号「[[ハ45]]」。~
主な搭載機は[[銀河>銀河(爆撃機)]]、[[流星]]、[[四式戦闘機「疾風」>疾風(戦闘機)]]、[[紫電]]、[[紫電改]]、[[烈風]]など。~
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当初、誉は[[零式艦上戦闘機]]や[[一式戦闘機>隼(戦闘機)]]等に搭載された1,000馬力級の[[栄]]エンジンをベースに18気筒化、回転数を増加し吸気系統を改善、高オクタンガソリンによって異常燃焼を抑え、ブースト圧を高めることで1,800[[馬力]]を発揮するエンジンとして計画され、開発は1940年から始まった。~
1941年3月に完成した試作エンジンは、不調こそありながらも同クラスのエンジンとしては極めて小型・軽量でかつ計画通りの性能を発揮、1942年2月に採用された。~
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その性能は当時の世界的にも優れたもので、[[太平洋戦争]]後期の日本の機体の多くが誉を搭載した。~
しかしながら量産態勢に入ると、全体的な工業力の低下や、当時の生産工場に勤めていた動員学徒などの臨時工が組み合わさり、試作時と同等の精度をもつものはあまり生産されなかった。~
さらに、オクタン価100の燃料使用を前提に開発されながらも、実際に使用されたのはそれ以下のものであったことで最大出力での運用は不具合に繋がった。そのため、誉には運転制限が実施され、離昇出力は本来2,000馬力のところ、約1,800馬力程度まで低下した。~
また、その複雑さは整備性に欠けており、搭載機の稼働率も芳しく無かった。~
しかし生産工場の技術的限界を超える繊細な設計は戦時量産において粗製品を多発させ、複雑で整備困難な構造は[[稼働率]]を如実に悪化させた。~
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結果として、本エンジンは1940年代の日本の工業技術力の優秀さと工業生産力の限界の両方を証明することになってしまった。~
また、[[燃料]]にオクタン価100を要求し、これも当時の日本においては非現実的であったため、低品質ガソリンに合わせて最大出力を低下させる必要があった。~
[[カタログスペック]]上の離昇出力は2,000[[馬力]]に達するが、実際の運用では約1,800[[馬力]]程度が安全限界であった。~

**搭載機 [#pe02f14f]
-中島 [[四式戦闘機「疾風」>疾風(戦闘機)]](日本陸軍[[制式]]機)
-川西 [[局地戦闘機]]「[[紫電(N1K-J)>紫電]]」(日本海軍[[制式]]機)
-局地戦闘機「[[天雷(J5N)>天雷]]」(日本海軍[[試作機]])
-[[艦上戦闘機]]「[[烈風(A7M)>烈風]]」(日本海軍[[制式]]機)
-陸上爆撃機「[[銀河(P1Y)>銀河(爆撃機)]]」(日本海軍[[制式]]機)
-[[艦上攻撃機]]「[[流星(B7A)>流星]]」(日本海軍[[制式]]機)
-陸上攻撃機「[[連山(G8N)>連山]]」(日本海軍[[試作機]])
-[[艦上偵察機>偵察機]]「[[彩雲(C6N)>彩雲]]」(日本海軍[[制式]]機)

**性能諸元 [#b5988dc8]
|CENTER:形式|CENTER:誉一一型&br;(ハ45-11)|CENTER:誉二一型&br;(ハ45-21)|
|CENTER:タイプ|>|CENTER:空冷星形複列18気筒(9気筒2列)|
|CENTER:全長|>|CENTER:1,690mm|
|CENTER:直径|>|CENTER:1,180mm|
|CENTER:乾燥重量|>|CENTER:830kg|
|CENTER:ボア×ストローク|>|CENTER:130mm×150mm|
|CENTER:排気量|>|CENTER:35,800cc|
|CENTER:圧縮比|>|CENTER:7.0|
|CENTER:バルブ挟み角|>|CENTER:75度|
|CENTER:[[過給器]]|>|CENTER:水エタノール噴射装置付き&br;遠心式[[スーパーチャージャー]]1段2速|
|CENTER:離昇出力|1,800PS/2,900rpm/+400mmHgブースト|2,000PS/3,000rpm/+500mmHgブースト|
|CENTER:公称出力|一速全開:&br;1,650PS/2,900rpm/+250mmHgブースト&br;(高度2,000m)&br;二速全開:&br;1,460PS/2,900rpm/+250mmHgブースト&br;(高度5,700m)|一速全開:&br;1,860PS/3,000rpm/+350mmHgブースト&br;(高度1,750m)&br;二速全開:&br;1,620PS/3,000rpm/+350mmHgブースト&br;(高度6,100m)|
~
**バリエーション [#h661d51f]
--誉一一型 / ハ45-11 / NK9B:~
初期生産型。~
冷却フィンは砂型鋳造方式で製作されていた。~
水エタノール噴射装置の噴射位置がスロットルの直前(キャブレター内)にあった。~
~
--誉一二型 / ハ45-12:~
一一型の[[過給器]]の減速比を変更し性能向上を図った型。~
水メタノール噴射位置が過給機翼車内に移された。~
[[流星]]、[[銀河]]に搭載された。~
~
--誉二一型 / ハ45-21 / NK9H:~
一一型の改良型。~
回転数・ブースト圧を上昇させ、最大出力を200馬力向上させた。~
[[水メタノール噴射]]装置は過給機インペラ背後に噴射する方式に改められた。~
この型より、冷却フィンは植え込みひれ方式を採用した(後期生産型はブルノー方式)。~
運用時には不具合防止のために運転制限が実施され、最大出力は誉一一/一二型相当に制限された(ハ45特)。~
本格的に生産されることとなった[[四式戦闘機>疾風(戦闘機)]]や[[紫電]]が搭載した最多量産型。~
~
--誉二二型 / ハ45-22 / NK9K:~
二一型の[[プロペラ]]減速比を変更し、強制冷却ファンを装備した型。~
試製[[彩雲]]や試製[[烈風]]に搭載された。~
~
--誉二三型 / ハ45-23 / NK9H-S:~
二一型に中島式低圧[[燃料]]噴射方式を採用した型。~
[[紫電三二型>紫電改]]に搭載試験中に終戦を迎えた。~
~
--誉二四型 / ハ45-24 / NK9K-S:~
二二型に低圧燃料噴射装置を搭載した型。~
~
--誉二四ル型 / ハ45-24ル / NK9K-L:~
二四型の過給器を[[排気タービン式過給器>ターボチャージャー]]に変更した型。試製彩雲改に搭載。~
~
--誉二五型 / ハ45-25:~
過荷重に対応してクランクシャフトの形状を改善した型。試験中に終戦を迎える。~
~
--誉二六型 / ハ45-26:~
プロペラ減速機構にVDM方式を採用した型。試作のみ。~
~
--誉三一型 / ハ45-31 / NK9K-O:~
出力向上(離昇2,200馬力程度)を計画、二一型に強制冷却ファンを追加し、さらに高回転・高ブースト化した型。~
計画段階で中止された。~
~
--誉四一型 / ハ45-41 / NK9A:~
過給器を2段3速に変更し、強制冷却ファンとインタークーラーを設けた型。試作のみ。~
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--誉四二型 / ハ45-42 / NK9A-O:~
四一型の出力向上型で、離昇出力2,200馬力。試作のみ。~
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--ハ145 / ハ45-43:~
陸軍向けで、2段3速過給器を備えた誉四〇型系統の型。~
二式単座戦闘機「鍾馗」三型に搭載され試験が行われていた。~
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--誉四四型 / ハ45-44:~
四一型と同等ながら、インタークーラーが省かれたことで出力が抑えられた型。~
離昇出力1,810馬力で、試験中に終戦を迎えた。~
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--ハ245 / ハ45-51:~
陸軍向けで、高高度性能の向上を図ったとされる型。~
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--誉五二型 / ハ45-52 / NK9L:~
[[排気タービン]][[過給器]]、燃料直接噴射装置、強制冷却ファンを装備した型。~
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--誉六一型 / ハ45-61 / NK9M:~
[[推進式>プッシャー式]]の機体向けに延長軸と強制冷却ファンを装備した型。~
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