*&ruby(ごしゃ){【誤射】}; [#ld4be8d8]
Friendly Fire.~
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[[銃火器>ガン]]や[[ミサイル]]等の発射時に誤って味方を撃つ等、意志外の標的を攻撃してしまうこと。~
[[爆撃]]で発生した場合は「誤爆」と言う。~
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厳密には、攻撃する意志があり、射手の認識や命中精度を原因とする場合のみを指す。~
攻撃する意志なく操作ミスや機械的欠陥によって生じた場合は「不時発射」「暴発」と呼んで区別する。~
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攻撃する意志なく操作ミスや機械的欠陥によって生じた場合は「不時発射」「暴発」と呼んで区別する。

**諸原因 [#s02dbb08]
誤射が発生する根源的原因には、これらが挙げられる。~
-''人間の心理''~
「敵かもしれないが撃つな」という命令を実施した場合、自身やその周囲へ直接的な命の危険が放置されることとなる。~
一方で「敵ではないかもしれないが撃て」という命令の場合、味方であった場合は法律上の責任を負う事になるが、命の危険は確実に排除できる。~
よって、多くの兵士は前者の命令を無視し、未確認目標は誤射であったとしても攻撃する傾向にある。~
この性向は訓練・法律・社会道徳によって矯正されることとなっているが、兵士が自身やその周囲の者の生存を望む限り、完全には抑止できない((そもそもどの程度まで矯正すべきなのか、という倫理学上の問題についてはあえて言及を避ける。))。~

***人間の心理 [#d60b8f16]
「敵かもしれないが撃つな」という命令を実施するためには、自分たちに迫っているかもしれない生命の危険を放置する必要がある。~
一方で「敵ではないかもしれないが撃て」という命令は、法律上の責任が生じるかもしれないが、生命の危険は確実に排除できる。~
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-''条件反射''~
よって、多くの兵士は「撃つな」という命令を無視・拒否し、未確認目標は誤射であったとしても攻撃したがる傾向にある。~
この性向は現代的な[[交戦規定]]には沿わないものであり、訓練・法律・社会道徳によって矯正する必要がある。~
一方で[[戦術]]的に見て、戦闘の目的は敵を打倒する事であって誤射を防ぐ事ではなく、誤射を危惧して攻撃をためらう事は望ましくない。

>「誤射かもしれないが攻撃を強行する」という選択肢、または「誤射の危険性があるため攻撃できない」という制約には[[戦術]]上重大な意味がある。~
ことさら敵による能動的な欺瞞・[[奇襲]]を想定する場合、誤射を避ける安全策がかえって将兵の命を損なう危険性も無視できない。

この種の誤射に対する一般的な対策として、敵味方の識別が容易になるよう徽章・[[ハイビジ塗装]]など目立つ装飾を施す慣習が長く続けられていた。~
とはいえ、[[偵察]]・攻撃の精度が向上し[[ステルス]]が極めて重要な意味を持つようになった現代でこれを遵守するのは難しい。~
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また、敵が誤射に関する認識の齟齬を意図的に利用してくる場合、心理的に誤射を回避しようのない状況も発生する。~
[[ゲリラ戦]]で[[非合法戦闘員]]が私服のまま襲ってくるようになったら、それに応戦する兵士は民間人であろうと構わず射殺するようになるだろう。~
誤射を防ぐ配慮の欠如は総じて戦災を拡大させ惨禍を招くため、[[ハーグ陸戦条約]]では[[戦闘員]]に識別容易な徽章を装備する事が義務づけられている。

***条件反射 [#c793d629]
脊髄反射で逃走・応戦する未確認の標的に対処する際、論理的判断を終えてから撃つのではほぼ間に合わない。~
このことから、大抵の射手は標的に似たものの正体を理解する前に、脊髄反射でまず撃ってしまう。~
十分な実戦経験のある射手であっても、銃を構えた後から誤射を回避する事はほぼ不可能であり、むしろ熟練者ほど危険である((「撃ってはならないものを視界に捉えた瞬間に条件反射で射撃を中止する」技術を修めた超人的な射手が存在し得る事は否定しない。&br;  しかし、トップアスリートの世界でさえ反射的な判断ミスは起こり得る。ましてや一介の兵士や狩人となれば。))。
従って、大抵の射手は標的に似たものの正体を理解する前に、習慣的な条件反射でまず撃ってしまう。~
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誤射事故防止のための一般的原則として、射手は実際に射撃を行う直前まで銃の引き金に指をかけてはならないとされる。~
いかなる訓練体系であれ、射手が銃を構えた後から誤射を回避する事はほぼ不可能である。むしろ熟練者ほど誤射する危険性が高い。~

>こうした事故を防ぐ技術として、「BRASS」という射撃手順が知られている。~
>「撃ってはならないものを視界に捉えた瞬間に条件反射で射撃を中止する」技術を修めた超人的な射手が存在し得る事は否定しない。~
しかし、トップアスリートの世界でさえ反射的な判断ミスは起こり得る。ましてや一介の兵士や狩人となれば。

こうした事故を防ぐ技術として、「BRASS」という射撃手順が知られている。~
深呼吸し(''B''reathe)、リラックスして(''R''elax)、構えて(''A''im)、照準し(''S''ight)、引き金を引く(''S''queeze)。~
この一連の作業によって数秒の猶予を確保し、その間に状況認識を正し、条件反射での誤射を回避する。~
……とはいえ、あらゆる状況でそれほど余裕ある射撃が行えるわけではないのだが。
……とはいえ、あらゆる状況でそれほど余裕ある射撃が行えるわけではない。

-''生理反応''~
***生理反応 [#ybc9fa87]
予期しない誤射の多くはこれによって発生する。~
人間は一般に強いストレス環境下では瞬発力や筋力が向上する反面、知覚認識に齟齬が生じる((脳のメカニズムに齟齬が生じる関係上、後から思い出した記憶についても多大な齟齬が生じ得る。&br;  このため、後日に[[軍法会議]]などで戦闘状況について問われた時「覚えていない」と主張したり、事実に反する証言を行う者は非常に多い。))。~
人間は一般に強いストレス環境下では瞬発力や筋力が向上する反面、知覚認識に齟齬が生じる。~
緊急時には視野狭窄による事実誤認や、触覚・身体感覚の鈍麻による不時発射などが多発する。~
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脳のメカニズムに齟齬が生じる関係上、後から思い出した記憶についても多大な齟齬が生じ得る。~
このため、後日に[[軍法会議]]などで戦闘状況について問われた時「覚えていない」と主張したり、事実に反する証言を行う者は非常に多い。

**航空機・艦船における誤射 [#r678b122]
長距離での戦闘が主体となる近代的な[[航空機]]や[[艦艇]]においては、標的の直接視認が困難な為に誤射の危険が大きかったが、近年、その多くは防止策として[[マスターアームスイッチ]]、[[敵味方識別装置]]等各種安全装置を装備している。~
しかし、そういった装備が存在したとしても、陸上戦支援の場合にそのような装置はほとんど機能しない((陸上戦は状況が複雑化して敵味方の区別が困難となることが多く、また敵の状況を事前に予測できない事も多いため、敵味方の識別によるタイムロスは誤射よりも戦況にとって致命的となり得る、と判断される。))。~
このため、戦場における誤射・誤爆の大半は[[近接航空支援]]や[[間接砲撃]]などの[[制圧射撃]]によって発生する。~
***砲爆撃 [#kbb6e847]
[[榴弾砲]]などの重火器や[[航空機]]の[[爆撃]]では、標的が射手の視界外にあり、伝令や通信によって標的の位置を推定して撃つという事がままある。~
こうした[[間接砲撃]]・[[爆撃]]では複数の人間が意思を疎通しなければならず、攻撃の所要時間の長さから不測の事態も生じやすいため、結果的に誤射を起こす確率が高い。~
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一方、技術的に敵味方の識別をほとんど人間に頼らざるを得ない時代、[[航空機]]や[[高射砲]]、[[艦艇]]による誤射が多発した。~

>対抗策として、機体の一部をわざと目立つデザインに塗装して敵味方の識別を簡単にする、というものがあり、世界各国の[[空軍]]がこれを実施した。~
有名な例として、ノルマンディー上陸作戦頃からヨーロッパの連合軍機の標準塗装となった「インベイジョン・ストライプ」がある。~

[[冷戦]]終盤以降、電子制御技術の発達後には[[マスターアームスイッチ]]・[[敵味方識別装置]]など各種安全装置が普及している。~
しかしそうした技術的支援は完全ではない。~
戦況を単純化しやすい海戦・空戦はまだしも、状況が複雑化して敵味方識別に困難が伴う陸戦での誤射は現代でも重大な問題となっている。~
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また、現地で何が巻き込まれようとも知った事ではない、という前提で兵器を蛮用する事例も絶えない。~
[[制圧射撃]]や[[戦略爆撃]]においては、味方を誤射しないための配慮はしても、現地の民間人に対する配慮はほとんど行われないのが実情である。
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