【XB-70】(えっくすびーななじゅう) †

NorthAmerican? XB-70 "Valkyrie(バルキリー)"(北欧神話に登場する、戦死者を導く乙女が語源)

アメリカが開発したマッハ3級の超音速戦略爆撃機。
弾道ミサイルが存在しなかった1950年代、ソビエトの戦闘機や対空砲火をくぐり抜けて水素爆弾を投下する目的で作られた。
機体案は1954年に発表され、1957年にノース・アメリカン?主契約で製作することが決定した。
ただしバルキリー計画自体が非常に規模の大きく、また当時のアメリカ技術の粋を集めた機体だったためボーイングなど多数の企業が製作に携わっている。

本機の特徴は、マッハ3.2という超高速で飛行可能で、さらに優に10,000kmを超える航続距離も持ち合わせていることである。
マッハ3.2というスピードを出すため構造材としてスチールを使用し、エンジンは推力約13,000kgのターボジェットエンジンを6基搭載、長大な航続距離を有するため約18万リットルもの燃料が搭載可能となっている。
また大型のエンジンを多数搭載しているため、必然的に機体は大型化し、全長は約58mと、B-52と比べても10m近く長い。
主翼は高速を飛行するためデルタ翼を採用、またコンプレッションリフト?を生み出すため翼端約3分の1が下方に折り曲げることが可能となっている。
コックピットには緊急脱出のために射出カプセル?を採用している。
本機の塗装は白一色であるが、これは核爆発時の閃光から機体を保護するためといわれている。

このように最新の技術を投入した本機は、当時としてはまさに「神話」とすら言える性能を持っていたが、スペックを極限まで追求した設計のため開発費が高騰。プロジェクトにかかった費用は一説には5兆円とすら言われている。
これは後年、日本の航空自衛隊に採用されたF-2支援戦闘機の開発費が約3200億円だったことを考えると凄まじい数字といえるだろう。
また60年代に入り弾道ミサイルが核戦略の主力を担うようになってしまったために、コストの高い本機を採用する意義が薄れてしまった。
そして1961年、ヴァルキリー計画の打ち切りが決定した。

しかし採用中止が決定した後もXB-70復活を願う声は大きく、1964年に試作機がロールアウト、1966年には一周4500kmのコースでマッハ3.08を33分間維持するという記録を打ち出した。

だがその年、広告撮影に参加した試作2号機が後ろを飛行していたF-104を後流に巻き込み空中接触、両機が墜落するという事故が発生した。
そして事故により支援を受けられなくなった本機はその後もSSTや偵察機としての復活を果たせず、完全に未来を失ってしまった。

しかし本機の出現が世界に与えた影響はきわめて大きく、本機を脅威と見なしたソビエトが急遽MiG-25を開発したのは有名な話である。

そして1969年2月4日を最後の飛行とし、現在ライト・パターソン基地で静かに眠りについている。


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