【VH-71】(ぶいえいちななじゅういち)

Agusta-Westland/Lockheed Martin/Bell VH-71 "Kestrel(ケストレル)*1"

アグスタウェストランド社の大型対潜/輸送ヘリコプター・AW101の派生型のひとつ。
アメリカ海兵隊が大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」として用いてきたVH-3及びVH-60「プレジデント・ホーク」の後継*2として開発・発注された。

本機は当初、2005年にロッキード・マーチン社が「US-101」としてライセンス生産契約を締結するも、技術的問題から挫折*3
計画はベル・エアクラフト社に引き継がれ、2008年に初飛行を行うところまでこぎつけた。

しかし、開発に当たって1,900項目にのぼる膨大な要求項目*4が出されていたため、開発費が極度に高騰。
最終的には開発費112億ドル・機体単価4億ドルにも達してしまい、プロジェクトは実質的な破綻に陥った*5
そして2009年6月、当時のバラク・オバマ大統領の意向により調達中止が決定された*6*7

この決定により、大統領専用ヘリコプターとしては従来のVH-3Dを改修して充てることが検討されたが、2014年5月になって、海軍は本機に代わる機体の調達を決定。
これを受けてシコルスキーは、開発済みのS-92*8を母体とした機体を「VH-92」として納入することを決定している。

関連:金の壁

スペックデータ

乗員4名
全長22.81m
全高6.65m
主回転翼直径18.59m
空虚重量10,500kg
最大離陸重量15,600kg
ペイロード14名(立席なら45名)または担架16個
エンジンGECT7-8E?ターボシャフト×3基
エンジン出力2,520shp(1,879kW)×3基
超過禁止速度309km/h
航続距離1,389km
上昇限度4,575m
上昇率2,000m/min



*1 長元坊(ハヤブサの一種)の意。
*2 前者は原設計から50年近く経過して老朽化・陳腐化が否めず、後者は(原設計であるUH-60由来の)キャビンの狭さが問題となっていた。
*3 その40年前、ロッキード・マーチンの母体であったロッキード社もAH-56で同じようなミスを犯している。
*4 代表的なところでは「核爆発に伴う強力な電磁パルスからの防御」や「キャビン内にキッチンを設けること」などがあった。
*5 ちなみに、イージス艦タイコンデロガ巡洋艦及びアーレイ・バーク級駆逐艦(フライトIIA))一隻が約10億ドル、F-22戦闘機一機が約1.6億ドル程度、VC-25一機が約3億ドル程度である。
*6 この時点で2機が完成し、7機が組立途中であった。
  ちなみに、プロジェクトが予定通り進めば2017年までに27機が調達される予定であった。

*7 これと同じ時期に、空軍戦闘捜索救難ヘリコプターとして採用が決まりかけていたHH-47もキャンセルされている。
*8 なお、同機は本機とともに一度「大統領専用ヘリコプター」の候補に挙がったが敗れている経緯がある。

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