【VH-71】(ぶいえいちななじゅういち)

Agusta-Westland/Lockheed Martin/Bell VH-71
アグスタウェストランド社の大型対潜/輸送ヘリコプター、AW101の派生型で、アメリカ海兵隊が大統領専用ヘリ「マリーン・ワン」として導入しようとした機体。
愛称は「ケストレル*1」。

海兵隊は、陸軍航空隊から大統領の近距離移動任務を引き継いで以来、この任務にSH-3対潜ヘリをベースとした「VH-3」を使用していたが、原設計から半世紀経過した同機は老朽化・陳腐化が否めなかった。
また、この後継としてSH-60をベースとした「VH-60」も使用されていたが、こちらは輸送機で容易に運搬できる反面、キャビンの居住性が劣っていた。
これら2機種を代替すべく、「US-101」という名称で採用されたのが本機であった。

当初、海兵隊は本機を27機導入する予定だったが、開発の過程で、核爆発によって起きる電磁波障害への対処やキッチンの設置など、生存性・居住性をさらに高める改修項目がどんどん追加され、開発予算総額や1機あたりの価格がオリジナルの20倍にも高騰することになってしまった。

最終的に、開発予算総額が112億ドル(1ドル=85円換算で9,520億円)と、タイコンデロガイージス艦10隻が建造できる額まで膨れ上がり、1機当たりの価格も4億ドル(340億円・F-22約2.5機分相当)と、VC-25(3億2500万ドル)よりも高額になってしまった。

そのため、2008年の選挙で勝利したバラク・オバマ大統領が打ち出した経費削減策の一環として、2009年6月に導入の中止が決定された。*2
今後、同機のために積み立てられた資金はVH-3/VH-60のアップデートに活用されるという。


*1 チョウゲンボウの意。
*2 ロッキード・マーチンを主契約者、ベル?を機体製造者として23機がライセンス生産の予定であり、2機が既に完成済み、7機が完成間近の状態であった。

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