【UH-60】(ゆーえいちろくじゅう) †

Sikorsky UH-60"Blackhawk(ブラックホーク)"

1974年に初飛行し、1978年から量産を開始した軍用の汎用ヘリコプター。
当初はアメリカ陸軍に採用された機体だが、盛んに輸出された傑作機で、民間機も含めて多くの派生モデルを持つ。

アメリカ陸軍の「UTTAS*1」計画により立案。
UH-1の後継機として航空各社のコンペティションが行われた。
ボーイング・バートル案のYUH-61?とシコルスキー・エアクラフト案のS-70が提示され、比較性能試験の結果、シコルスキー・エアクラフト案のS-70が採用され、このS-70にUH-60の型式が与えられた。

ベトナム戦争の戦訓から、特に生存性が重視された設計。
操縦システムの多重化や装甲の装備、墜落時に乗員を保護するショックアブソーバーなどの対策がなされている。
ヘリコプターには珍しくスタビレーターを備えており、強襲に際しての急停止を可能としている。
一部の機体はFLIRや気象レーダーによって夜間作戦にも対応している。

武装としてドアにブローニングM2重機関銃、胴体側面にM240軽機関銃を装備。
必要に応じてスタブ翼やアウトリガーを増設し、増槽・対戦車ミサイル・ロケット弾などを装備可能。

海外派兵を想定し、機体そのものを中型輸送機に搭載して貨物として運搬する事が可能。
この要求のために全高が低く抑えられたため、駆動性能に比してキャビンが狭く、ペイロードに多大な余剰がある。
原型モデルにおいてペイロードの余剰は機動力を確保するために空けられているが、貨物の懸垂輸送などに転用する事も可能。

関連：ブラック・シーの戦い

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スペックデータ（UH-60L） †

乗員2名
積載能力兵員11名または担架6床、1,200kgまでの貨物
全長19.76m
胴体長15.27m
全高5.13m
全幅2.36m
主ローター直径16.36m
円板面積210��
空虚重量4,819kg
運用時重量9,980kg
最大離陸重量10,660kg
エンジンGE T700-GE-701Cターボシャフト×2基
（出力1,890hp（1,410kW））
超過禁止速度193kt（357km/h）
最大速度159kt（294km/h）
巡航速度150kt（280km/h）
戦闘行動半径592km
航続距離2,220km（フェリー飛行、ESSS*2スタブウィング、外部燃料タンク搭載時）
実用上昇限度5,790m
上昇率4.5m/s
回転面荷重35.4kg/��
パワー/マス158W/kg
武装M240 7.62mm機関銃×2挺
M134 7.62mmガトリング砲 or GAU-19 12.7mmガトリング砲×2基
VOLCANO 地雷散布システム
以下は外部搭載支援システム（ESSS）に搭載可能な武装
M260またはM261ロケット弾ポッド（ハイドラ70 70mmロケット弾7発又は19発）
AGM-114「ヘルファイア」×最大4発
AIM-92「スティンガー」×2発
ガンポッド (7.62mm or 20mm or M230 30mmチェーンガン）


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UH-60のバリエーション（陸上型） †

※艦載型に関してはSH-60項を参照。

  • 汎用型
    • YUH-60A：
      試作型。

    • UH-60A：
      米陸軍向け初期主力量産型。
      アメリカ陸軍所属の機体に関しては、後年赤外線抑制装置が追加された。
      エンジンはT700-GE-700?を搭載し、4名の乗員と11名の兵士が搭乗可能。
      イスラエル空軍向けは「ヤンシャフ（ינשוף‎）*3」と呼ばれる。

    • UH-60B：
      エンジン・トランスミッションを強化し、アビオニクスを改善した型。
      多くの機体の基礎となったが不採用。

    • UH-60C：
      指揮及び統制システム（C2）を搭載した改良型。

    • CH-60E：
      アメリカ海兵隊向け提案型。

    • UH-60JA：
      陸上自衛隊向けライセンス生産機。
      UH-60B準拠の機体に赤外線抑制装置?を追加している。

    • UH-60L：
      中期主力量産型。
      エンジンをT700-GE-701Cに換装し、トランスミッションを強化、赤外線抑制装置?を追加した。

    • UH-60M：
      現行主力量産型。
      翼弦が広げられたテールローターや強化型ギアボックス（Integrated Vehicle Management Systems,IVHMS）を採用。
      エンジンをT700-GE-701D（最大出力2,000shp×2基）に換装。
      アビオニクスの強化やグラスコックピット化もされ、火器管制装置も装備された。

    • UH-60M「アップグレードブラックホーク」：
      改良型。
      フライバイワイヤーやCAAS*4型コックピットを採用している。

    • UH-60P：
      韓国陸軍向け輸送型。L型をベースに多少の改善が行われている。

    • UH-60V：
      UH-60Lの近代化改修型で、アビオニクス等がUH-60M相当にアップグレードされる。

    • AH-60L Arpía*5 �掘�
      コロンビア向け輸出型。
      FLIRやレーダーなどの電子機器を搭載し、小型ロケット、汎用機関銃などの武装を施したCOIN機仕様。

    • AH-60L「バトルホーク」：
      オーストラリア向け輸出型。入札の失敗により採用されず。
      プロジェクトAIR87計画によりオーストラリア陸軍に採用される予定であった。
      機体仕様はAH-60L Arpía IIIに酷似している。

    • UH-60S：
      米空軍向けの軽量化試作機。

  • S-70シリーズ
    • S-70A：
      民間用モデル。
      ただし実際には高価すぎて民間の顧客がつかず、事実上の軍用機扱い。
      オーストラリアやサウジアラビア等が採用。

    • S-70A-1「デザートホーク」：
      サウジアラビア陸軍向け輸出型。

    • S-70A-L1「デザートホーク」：
      サウジアラビア陸軍にて採用されている負傷兵搬送任務機型。

    • S-70-5：
      フィリピン空軍向け輸出型。

    • S-70-6：
      タイ陸軍向け輸出型。

    • S-70A-9：
      オーストラリア空軍/陸軍向け輸出型。
      デ・ハビランド・オーストラリアによるノックダウン生産。

    • S-70-11：
      ヨルダン空軍向け輸出型。

    • S-70-12：
      航空自衛隊/海上自衛隊向け捜索救難型。
      自衛隊では他の派生モデルと同様に「UH-60J」の型式を割り振っており、区別は不明瞭。

    • S-70-14：
      ブルネイ向け輸出型。

    • S-70-16：
      ロールス・ロイス/チュルボメカ RTM332ターボシャフトエンジン用のテストベッド機。

    • S-70-17：
      トルコ向け輸出型。

    • S-70-18：
      韓国向け輸出型。
      UH-60P、HH-60Pのライセンス生産モデル。

    • シコルスキー/ウエストランド S-70-19（AWS-70）：
      ウエストランド・エアクラフトによるイギリス向けライセンス生産型。
      バーレーン向けに1機のみ製造された。

    • S-70-20：
      タイ向け輸出型で要人輸送仕様。

    • S-70-21：
      エジプト向け輸出型。

    • S-70-22：
      韓国空軍向け輸出型。
      要人輸送仕様であるVH-60Pのライセンス生産モデル。
      通常型のHH-60Pと区別するために胴体先端部が白色に塗装されている。

    • S-70-24：
      メキシコ向け輸出型。

    • S-70-26：
      モロッコ向け輸出型。

    • S-70-27：
      香港政府により運用される捜索救難型。

    • S-70A-30：
      アルゼンチン空軍向け輸出型で要人輸送仕様。生産数1機のみ。

    • S-70A-39：
      チリ向け輸出型で要人輸送仕様。生産数1機のみ。

    • S-70A-42：
      オーストリア向け輸出型。

    • S-70A-43：
      タイ陸軍向け輸出型。

    • S-70A-50：
      イスラエル向け輸出型。

    • S-70i：
      軍事用輸出型。
      ポーランドにあるPZL Mielec（ポーランド・アビエーション・ワークス、シコルスキー社の子会社）によって組み立てが行われている。

      • T70：
        トルコ向けS-70i。トルコ製アビオニクスを搭載する。

    • S-70C-2：
      中国人民解放軍向け。高地での運用に対応した改良が施されている。
      六四天安門事件を機に輸出停止。

  • 電子戦機型
    • EH-60A「クイック・フィックス」：
      米陸軍の電子作戦機型。敵無線通信の発信位置を探知・妨害を行う。
      電子機器が増えたことによる電力確保の為、電気系が2系統化されている。

    • YEH-60B：
      特殊レーダーとアビオニクス搭載する型。
      スタンドオフ機能を試験的に搭載した。

    • EH-60C「クイック・フィックス」：
      A型の改良型。特殊電装機器と外部アンテナを搭載。

    • EUH-60L：
      UH-60Lの改良型。指揮及び統制システム（C2）を搭載。

    • EH-60L：
      EH-60Aの改良型。搭載機器が改良された。

  • 捜索救難機型
    • UH-60A「クレディブルホーク」：
      米空軍向け捜索救難型。
      空中給油機構の装備、燃料タンクの大型化、荷室後部に寝台の設置などの改良が施されている。

    • UH-60J：
      航空自衛隊および海上自衛隊向け捜索救難型。
      三菱重工業によるライセンス生産機でUH-60B準拠。
      「UH」、「ロクマル」、「レスキューホーク」等の愛称で呼ばれる。

    • UH-60J(SP*6)：
      48-4579号機以降の機体。
      チャフ/フレア・ディスペンサーやミサイル警報装置（MAWS）を装備。
      アビオニクスも改良されている。

    • UH-60J（近代化）：
      J型の近代化改修モデル。通称「UH-60J�供廖�
      エンジンやアビオニクスの強化。 空中受油プローブや赤外線抑制装置?の追加などがされている。

    • HH-60A「レスキュー・ホーク」：
      米空軍向け戦闘捜索救難型の試作機。装甲などを強化。

    • HH-60M：
      米陸軍型。
      M型に医療機器を搭載したMEDEVAC*7対応型。

    • HH-60D「ナイトホーク」：
      HH-60Aの燃料搭載量を増加した試作型。少数のみ採用。

    • HH-60G「ペイヴ・ホーク」：
      HH-60Dを大幅に改良した型。

    • HH-60W：
      M型ベースの捜索救難型。
      メインローターを幅の広い複合材製に変更。
      キャビンスペースおよび燃料搭載量の増大、低空での高機動や腐食に対応した機体構造の採用などの改良が行われている。

    • S-70C-1：
      台湾空軍向け。

  • 強襲/特殊作戦型
    • MH-60A「ナイトホーク」：
      HH-60Aの特殊部隊作戦用。
      アビオニクス改良としてナイトビジョンやFLIRを搭載し、増槽を追加、ドアガンにM134ミニガンを採用した。

    • MH-60G「ペイヴ・ホーク」：
      HH-60Gのエンジンを換装し特殊部隊作戦能力を付与した型。

    • MH-60K「ブラックホーク」：
      特殊作戦用の強化モデル。非常に高価で機数が少ない。
      コックピットをグラスコックピット化。
      レーダー（AN/APQ-174B マルチモードレーダー）およびMILデータバスを装備。
      空中給油用プローブを追加。
      エンジンはT700-GE-701を搭載。

    • MH-60L「ブラックホーク」：
      HH-60GにUH-60Lの設計改善を反映させたもの。

    • MH-60L DAP*8：
      MH-60Lをベースにした改良型。
      外部搭載支援システム（ESSS）又はETS（External Tank System）翼を装備。
      M230機関砲やロケットポッド、その他の武装が施された型があり、ドアガンにはM134Dミニガンが搭載された。

    • MH-60M「ブラックホーク」：
      UH-60Mを基にした特殊作戦機の改良型。

  • その他
    • UH-60A RASCAL*9：
      NASAに納入された実験機。ヘリコプターの運動性検証用。

    • UH-60L「ファイヤーホーク」：
      水タンクを装備した消火用機。

    • UH-60Q：
      CASEVAC(Casualty Evacuation：戦傷救難活動。負傷兵の後送)を目的とした医療任務型。
      通称「ダストオフ（DUSTOFF, dedicated unhesitating service to our fighting forces.)」。

    • HH-60L：
      UH-60Lをベースとした、UH-60Qの後継機。
      救助用ホイスト、患者の滑落事故を防ぐための固定具、酸素吸入器、耐衝撃座席などが装備されている。

    • VH-60D「ナイトホーク」：
      アメリカ海兵隊の要人輸送モデル。HH-60Dベース。
      エンジンはT700-GE-401Cを搭載。
      後にVH-60Nに置き換えられた。

    • VH-60N「ホワイトホーク（「プレジデントホーク」とも）」：
      アメリカ海兵隊の大統領専用機。
      主に外遊用だが、VH-3の都合がつかない場合の国内移動に用いられることもある*10。

    • S-71：
      アメリカ陸軍の発展型攻撃ヘリ計画向けにS-70をベースに試作した攻撃ヘリコプター型。

*1 Utility Tactical Transport Aircraft System（汎用戦術輸送機システム）の略。
*2 External Stores Support System.
*3 ヘブライ語でフクロウの意。
*4 Common Avionics Architecture System.
*5 スペイン語でハーピーの意。
*6 Self Protectionの略。
*7 Medical Evacuation.
*8 Direct Action Penetrator.
*9 Rotorcraft-Aircrew Systems Concepts Airborne Laboratory.
*10 なお、本機は要人輸送用としてはキャビンが狭く、居住性に劣るとされている。

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