【UH-1】(ゆーえいちわん)

Bell UH-1 "Iroquois(イロコイス)"
アメリカ陸軍の発注に応じてベル・エアクラフト社が開発した中型汎用ヘリコプター
旧称"HU-1"にちなんで「ヒューイ」という愛称でも呼ばれる。

前線での使用を念頭において発注したもので、軽量で信頼性が高く整備の容易な機体として知られる。
軽量化のため、旧西側諸国のヘリコプターとして初めてターボシャフト動力を採用した。

原型機XH-40は1956年に初飛行し、量産型はその多くがベトナム戦争に投入された。
高い信頼性ゆえに最前線の激戦地に投入されることが多くなり、損耗・遺棄された機体も非常に多い。

後継のUH-60「ブラックホーク」UH-72「ラコタ」などの登場により退役の途上にあるが、エンジンや胴体を強化した発展型が作られており、現在でも多くの国や民間組織などで使用され続けている。
また、派生型として、世界初の実用攻撃ヘリコプターであるAH-1(ベル209)が存在する。

スペックデータ

乗員2名+兵員14名
4名+兵員6〜8名(UH-1N)
2〜4名(操縦士・副操縦士・ガンナー等)+兵員6〜10名(UH-1Y)
主ローター直径14.6m
14.88m(UH-1Y)
全長17.4m
12.69m(UH-1N)
17.78m(UH-1Y)
胴体長2.60m
全高4.40m
4.5m(UH-1Y)
空虚重量2,365kg
2,721.5kg(UH-1N)
5,370kg(UH-1Y)
最大離陸重量5,080kg
4,762.7kg(UH-1N)
8,390kg(UH-1Y)
ペイロード1,760kg(最大)
エンジンライカミング T53-L-13Bターボシャフト推力1,044kW)×1基
P&W・C T400-CP-400 ターボシャフト(出力671kW)×2基(UH-1N)
GE T700-GE401Cターボシャフト(最大出力1,360kW)×2基
速度
(最大/巡航)
119kt/111kt
120kt/110kt(UH-1N)
164kt(30分間)/158kt(UH-1Y)
上昇率8.9m/s
12.8m/s(UH-1Y)
実用上昇限度5,910m
5,273m(UH-1N)
6,100m(UH-1Y)
航続距離510km
460km(UH-1N)
241km(UH-1Y)
兵装M60またはGAU-17 7.62mm機関銃×2挺、12.7mm機銃、2.75inロケット弾ポッド×2基等
ハイドラ70ロケット弾×2基、GAU-16 50口径12.7mm機関銃GAU-17 7.62mmミニガン
またはM240 7.62mm軽機関銃用マウント×2基(UH-1Y)


UH-1の直系バリエーション(カッコ内は生産・改修機数)

※ベル209シリーズはAH-1の項を参照。

ベル204シリーズ

  • XH-40(3機):
    原型機。エンジンはXT53を搭載。

  • YH-40(6機):
    評価兼開発用の生産前機。エンジンはT53-L-1を搭載。

  • HU-1A(182機):
    初期生産型。後にUH-1Aに改称。

  • HU-1B(1,033機):
    エンジンをT53-L-5に換装し、新型ローターを装備した改良型。
    後にUH-1Bに改称。
    日本でも富士重工業(現在のSUBARU)が陸上自衛隊向けにライセンス生産していた*1

  • UH-1C(767機):
    B型の出力強化型。エンジンはT53-L-11を搭載。
    ほとんどがガンシップとして使用された。

    • UH-1M:
      C型の出力強化型。

  • UH-1E:
    B/C型の海兵隊向けモデル。
    アルミ合金による軽量化が図られている。
    主として連絡・観測・負傷者後送のほか、ガンシップとしても運用された。

    • TH-1E:
      E型の訓練機型。

  • UH-1F(120機):
    B/C型のアメリカ空軍向けモデル。
    エンジンはT58-GE-3(出力1,250hp/932kW)を搭載。

    • TH-1F:
      F型の訓練機型。

    • UH-1P:
      F型を特殊作戦用に改造したモデル。
      強襲作戦や心理操作に使用。

  • HH-1K(27機):
    アメリカ海軍向け短距離救難機型。
    エンジンをT53-L-13に換装し、電子機器を海軍仕様とした。

  • UH-1L(8機):
    アメリカ海軍向け汎用型。

    • TH-1L(90機):
      L型の練習機型。

  • ベル204B:
    HU-1Bの民間型。

    • 富士ベル204B:
      ベル204を富士重工がライセンス生産したモデル。
      日本では中日本航空やアカギヘリコプターなどで7機が運用されている。

ベル205シリーズ

  • YUH-1D(7機):
    前量産型。

  • UH-1D(2,008機):
    胴体の延長し、搭載力を強化したモデル。

    • HH-1D:
      D型のSAR型。

    • ベル205A:
      UH-1Dの民間型。

  • UH-1H(5,500機以上):
    D型の出力強化型で最も量産された主要モデル。
    エンジンはT53-L-13(出力1,044kW/1,400shp)を搭載。

    • CUH-1H:
      H型のカナダ軍向けモデル。

    • EH-1H:
      ELINT任務型。

    • HH-1H:
      アメリカ空軍向けSAR・救急任務型。

    • JUH-1H(4機):
      戦場監視任務型。

    • TH-1H:
      アメリカ空軍向け訓練機型。

    • ベル205A-1:
      UH-1Hの民間型。

  • UH-1G:
    UH-1D/Hをガンシップ化した機体の非公式愛称。

  • UH-1J(UH-1H改):
    富士重工が開発した陸上自衛隊向けモデル。
    N型相当の胴体にAH-1Sと同じT53-K-703エンジンを搭載し、ワイヤーカッターを装備している。
    一部の機体は暗視ゴーグル対応コックピットで生産されているほか、大半の機体に映像伝送装置か赤外線監視装置を搭載している。

    • 富士ベル205B:
      UH-1Jの民間型。

    • UH-1HP「ヒューイII」:
      ベルが提唱したUH-1Hの延命計画。
      UH-1Jと同等の改修が行われている。

  • AB205:
    ベル205をイタリアでライセンス生産した型。

ベル210シリーズ

ベル212シリーズ

  • CH-135:
    カナダ軍向けにエンジンを双発(900馬力×2基)にした発展型。

  • UH-1N「ツインヒューイ」:
    CH-135の逆輸入版。
    米海兵隊米空軍で使用。

  • ベル212:
    UH-1Nの民間型。
    エンジンを655馬力×2基に減格されている*3
    日本では海上保安庁などで使用している*4

    • AB212:
      ベル212をイタリアでライセンス生産した型。
      対潜型も開発されている。

ベル214シリーズ

  • ベル214A:
    イラン軍向けモデル。 205A-1を大型化し、1,900馬力のエンジンを搭載している。

    • ベル214B「ビッグリフター」:
      214Aのエンジンを2,930馬力に強化した民間向け。

    • ベル214ST:
      214Bの胴体を更に大型化し、エンジンを双発(1,625馬力×2基)にした機体。
      日本では国土交通省関東地方整備局が1機導入している。

ベル412シリーズ

  • ベル412:
    ベル212のメインローターを4枚ブレードとして速度性能を向上させた機体。
    エンジンはPT6T-3Bを搭載。
    チリ空軍では「H-48」の名称で輸送ヘリコプターとして採用されている。

  • ベル412SP:
    412の燃料搭載量を55%増加させ、航続距離を延長した機体。
    エンジンもPT6T-3BFに換装・強化されている。

  • ベル412HP:
    412SPのトランスミッションを強化、ホバリング能力を改善した機体。
    エンジンもPT6T-3BG/-3Dに換装・強化されている。
    日本では三重県防災航空隊などで使用されている。

  • ベル412EP:
    CH-146の民間型。
    エンジンはPT6T-3Dを搭載。
    日本では海上保安庁、各県警察航空隊や岡山県消防防災航空隊、群馬県防災航空隊、静岡市消防局航空隊など、警察・消防・防災用として多数使用されている。

    • ベル412CF(CH-146「グリフォン」):
      412EPをベースにしたカナダ軍向け汎用輸送機型。

    • ベル412SA:
      サウジアラビア空軍向け。

    • ベル グリフィンHT Mk.1:
      イギリス空軍向け高等訓練ヘリコプター型。

    • ベル グリフィンHAR Mk.2:
      イギリス空軍向け捜索救難ヘリコプター型。

    • アグスタ・ベル412EP:
      アグスタでのライセンス生産機で、民間向け汎用輸送型。

    • アグスタ・ベル AB412「グリフォーネ」:
      アグスタでのライセンス生産機で、イタリア軍向けの汎用輸送型。

    • アグスタ・ベル AB412 CRESO:
      機首下に地上監視レーダーを装備した型。

    • Nベル412:
      インドネシアン・エアロスペース(IAe)社でのライセンス生産型。
      SP型、HP型、EP型が製造されている。

  • ベル412プラス:
    1999年に計画された型。
    新しい動的コンポーネントとPT6Cエンジンで最大離陸重量を5.647kgに増加させ、ロジャー・クラトスのアビオニクスを搭載するもの。
    開発は2001年初頭に終了した。

  • ベル412EPI:
    412EP型ベースの改良型。
    完全統合型グラスコックピット「ベル BasiX Pro」を採用した。
    エンジンはFADECを採用したPT6T-9を搭載する。

  • 富士ベル412+(仮称):
    富士重工業との共同開発機。
    ドライラン能力*5を向上させ、トランスミッションの出力向上、総重量の増加、機体の耐久性の改善などを実施予定。
    また、富士重工が開発した金属表面加工技術や民間機の大量生産で培った高効率の生産技術なども投入される予定である。
    陸上自衛隊の次期多用途ヘリコプター(UH-X)のベースになる予定。

    • 新多用途ヘリコプター(UH-X):
      富士ベル412+をプラットフォームとした陸上自衛隊向けの機体。
      コックピットを改良し、ヘリコプター映像伝送装置(ヘリテレ)または赤外線監視装置を搭載する。

ベル450シリーズ

  • UH-1Y「ヴェノム」:
    アメリカ海兵隊で運用されているUH-1Nの近代化改修型。
    部品や運用についてAH-1Zとの共通化を図っている。


*1 型番はアメリカでの名称変更後も「HU-1」のままだった。
*2 アメリカ陸軍のLUH計画でも有力候補とみられていたが、要求性能を満たしておらず提示されなかった。
*3 軍用と同格のものもある。
*4 海保の機体は2015年までに全機退役。
*5 メイン・トランスミッション内の潤滑油が抜けた状態でも30分飛行可能な能力。

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