【TT33】(てぃーてぃーさんじゅうさん)

Tokarev TT33(英)
Токарэв ТТ33(露)
ソ連軍のトカレフ技師が、ナガン・リボルバーの後継として開発した半自動式拳銃
日本で単に「トカレフ」と言った場合、このTT33、あるいはそのデッドコピーにあたる五四式手槍を指すことが多い。

設計上重視されたことはふたつ。極寒のロシアでも確実に動作する信頼性と、多くの将兵に行き渡るよう高い生産性を持つことであった。
これらを満たすため、優れた軍用拳銃であったM1911?を参考にしつつ、きわめて単純化された設計が目指された。
まずハーフコック?を除いて安全装置が一切存在しない。そして部品の固定は単純な板バネ状の部品のみで成されており、工具を一切用いず分解整備が可能となっていた。
また厚手の手袋をはめても射撃ができるように、用心金が大きく、銃把(グリップ)は細い。
さらに広大なユーラシア大陸での撃ち合いを鑑み、貫通力の高いマウザーC96用の7.62mm弾をほぼそのままコピーした7.63mmトカレフ弾が用いられた。
こうして開発された銃はTT1930として採用された。TT1930とはツールスキー・トカレヴァ1930年式の略であり、通常はこれをさらに縮めTT30と呼ばれる。
後の1933年には、これを更に簡素化したTT1933(TT33)として多数が量産され、シベリアなどの極端な環境下では信頼性の高い銃として重宝された。

しかしそれ以外の場所では、単に安っぽい、それでいて無闇に危険な銃でしかなかった。
特に中国の北方工業公司が「五四式手槍」としてデッドコピーしたものが香港・台湾・日本などへ大量に密輸され、暴力団抗争などの犯罪に多用された。
手袋の着用を前提に設計された銃把は素手で握ると把持性が極端に悪く、狙いが外れて無関係の市民が誤射されることもあった。
また小銃弾に近い貫通力を持つトカレフ弾は壁などを貫通し、やはり無辜の市民を巻き添えにする危険が大きかった。
さらに安全装置が存在しないうえ、チャイニーズコピー品はオリジナルよりも信頼性に劣ることもあり、人知れぬ暴発事故も少なくなかったと思われる。
このため日本では、トカレフといえば軍用銃というよりも、犯罪道具としてのイメージを強く持たれている。

当のソ連(ロシア)でも、信頼性を偏重したTT33に替わり、バランスの良いPM(マカロフ拳銃)が採用されている。


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