【SQQ-89】(えすきゅうきゅうはちじゅうきゅう)

General Electric AN/SQQ-89.
アメリカ海軍の水上艦に装備されている統合対潜システム (ASWCS: ASW Combat System) 。
ジェネラルエレクトリック(現ロッキード・マーティン)社によって開発されたもので、目標の探知・識別と攻撃を担当し、対潜戦を飛躍的に自動化する。

本システムは、しばしば「イージスシステム?の対潜版」として紹介される。
実際、対潜戦闘における意義としては、本システムはまさにイージスシステムに匹敵するブレークスルーであったと言えるだろう。
しかし実際には、イージスシステムが目標の探知から脅威度判定・攻撃指令、射撃指揮から実際の火力発揮までを包括していたのに対し、SQQ-89それ自体には意思決定支援機能を持たないことから、そのコンセプトは、むしろイージスシステムの前任者であるターター-D・システム?に近い。

1960年代末から1970年代にかけて、仮想敵であったソ連海軍における潜水艦の原子力推進化と潜水艦から発射される巡航ミサイル(USM)の配備に対処するため、アメリカ海軍は、対潜作戦のパッシブ・オペレーション化による交戦距離の延伸を志向していた。
パッシブ・オペレーションにおいては、艦装備のソナーのほか、艦載の多目的ヘリコプター(LAMPS)および艦装備の戦術曳航ソナー(TACTASS)が重要なセンサーとなるが、潜水艦捜索海面の広域化に伴い、これら各センサーの探知情報を統合する必要性が増大した。

SQQ-89の開発は、これに応じて、ASW-CSI (対潜戦闘システム統合)計画のもとで開始された。
システム開発は1976年に開始され、コンセプト開発は1979年に完了した。
1981年にはジェネラルエレクトリック社に対して全規模開発が発注され、1986年1月より、「ムースブラッガー」(DD-980)の艦上にて運用試験が開始された。

本システムの基本的な構成は、下記のようなものである。

  • 船体装備ソナー
  • 戦術曳航ソナー (TACTASS)
  • AN/SQQ-28 LAMPS? Mk III ソノブイ・データ・リンク装置
  • UYQ-25? SIMAS
  • Mk.116水中攻撃指揮装置(UBFCS)

最初に開発されたSQQ-89(V)1は、駆逐艦または巡洋艦に搭載されるもので、船体装備ソナーとしては、艦首装備で大出力のAN/SQS-53を、水中攻撃指揮装置としてはMk116mod 5を使用していた。
SQS-53?TACTASS?は、それぞれが探知したデータをMk 116に送ると同時に、4基のOJ-452/UYQ-21音響表示装置にも転送していた。
このシステム構成は海上自衛隊で開発されたOYQ-102OYQ-103?に類似している。

一方、次に開発されたSQQ-89(V)2はフリゲート向けの簡素版であり、船体装備ソナーとして、より小型のAN/SQS-56を採用したほか、UYQ-21も2基に減っている。
(V)2では、TACTASSとLAMPS Mk IIIが2つの主要なセンサーと位置づけられており、それぞれ1基ずつのUYQ-21が割り当てられている。
その後、(V)2はタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の初期型にも搭載された。

SQQ-89の初期型においては、それぞれのサブシステムは、固有の処理装置としてUYS-1を有していた。
これらは、それぞれが操作用にUYQ-21端末を有しており、UYK-20コンピュータとOJ-190/UYQ-21?それぞれ1基を介して、SQQ-89に対して情報を入力している。

Mk.116水中攻撃指揮装置(UBFCS)は、いわゆる射撃指揮装置(FCS)であるが、武器管制装置としての機能も有している。
ただし、目標の脅威度判定の機能を持たなかったため、現代の艦載戦術C4Iシステムに求められるTEWA機能(目標判定および武器割当)までには至らなかった。
このため、のちに、目標の脅威度判定を担当するAN/USQ-132 TDSSが導入された。また、TDSS?は、SQQ-89とJOTS?との接続も担当した。

なお、本システムの名称は、当初はSQQ-39となる予定であったが、ミスタイプによってSQQ-89となったと言われている。


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