【SA-12】(えすえーじゅうに)

現在ロシア軍で使用されている、最新式の長距離地対空ミサイル
NATOコードではSA-12A/B「グラディエーター/ジャイアント」、ロシアではS-300V「アンティ300(ミサイルと発射機を含むシステム全体の形式名は『9K31』)」と呼ばれている。
1970年代に開発が始まり、1980年代半ばから実戦配備された。
1980年代前半にアメリカが開発し、西ヨーロッパに配備していたMGM-31「パーシングII」?準中距離弾道ミサイルを迎撃するために開発されたという。

車両構成はS-300(SA-10「グランブル」)と殆ど同じで、一部レーダー搭載車や発射機に違いがある。
レーダー搭載車の方は2種類の車両を使用しそのため索敵距離が長くなったらしいが、詳しい事は不明。
発射機はウラル375トラックで牽引される5P85T牽引式発射機やスカッドBミサイル用のMAZ-543トラックを改造した5P85S自走発射機から、T-80戦車と同型のシャーシを利用した無限軌道型の9A82/9A83自走発射機に変わった事で、弾体が大型化されたSA-12でも自力での走行が可能となった。
9A83には9M83が4連装、9A82には9M82が2連装で搭載される。

9A83にはミサイル(9M83「グラディエーター」)を4発搭載する事ができ、高度25,000mまで到達出来る点は初期バージョンのS-300Pと同じだが、最大射程は75kmと延びている。
輸送の際は水平姿勢で、発射時は垂直状態になり、コールドローンチ方式で発射される。
誘導方式は慣性誘導セミアクティブレーダーホーミングで、航空機ヘリコプター無人機巡航ミサイル等、あらゆる飛翔物に対応可能である。
また、S-300Pでは限定的だった弾道ミサイル対応能力が付与された事で、本ミサイルは弾道ミサイル迎撃を目的とした本格的なMDシステムとなっている。
しかし、索敵距離などは不明なためよく分かっていない。

9A82にはミサイル(9M82「ジャイアント」)を2発搭載することが出来、最大有効射程は100km、最大有効射高は30,000mである。
これも詳しい事は分かっていないが、9M82は中距離弾道ミサイル用、9M83は短・準中距離弾道ミサイルおよび巡航ミサイルの迎撃用といわれている。

戦闘時は9M83搭載車両1両、9M82搭載車両1両の計2両(ミサイル計6発)で常にペアを組んで行動する。

一応ロシアの最新式ミサイルであるため、輸出はかなり限定されており、現在では中国とインドから輸出用ダウングレード型のS-300VM(アンテイ2500)の発注を受けている。
現在では、新型のSA-21「グロウラー」(S-400「トライアンフ」)が配備中であるが、まだ数年はかかりそうである。

S-300Vの紹介動画


SA-12.jpg

photo:Ukraine Department of Defense

Photo:SA-10 SA-20

スペックデータ

全長6.1m(9M82)
4.7m(9M83)
直径85cm(9M82)
50cm(9M83)
発射重量1,500kg(9M82)
1,000kg(9M83)
射程13-100km(9M82)
6-75km(9M83)
速度2,400m/sec(9M82)
1,700m/sec(9M83)
飛行高度1,000-30,000m(9M82)
20-25,000m(9M83)
推進方式固体推進ロケットモーター
弾頭コントロールされた爆破弾頭(150kg)
誘導方式慣性/セミアクティブホーミング

主な種類

  • S-300V(9K38/アンティ300(SA-12A/B)):
    ロシア軍使用の型。

  • S-300VM(アンテイ2500):
    輸出用ダウングレードモデル。多少のスペックは落ちていると思われる。

  • S-300V4(SA-X-23):
    S-200の最新型で現在も開発中。
    最大射程は300kmと言われている。

  • 紅旗18(HQ-18):
    中国でのS-300V1 type2(9M83)のライセンス生産型。


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