【OH-6】(おーえいちろく)

Hughes OH-6 "Cayuse(カイユース)*1"
ヒューズ?(現MDヘリコプターズ)がL-19(O-1)「バードドッグ」*2やベル47などの後継として開発した、小型軽量の観測ヘリコプター
社内呼称ではヒューズ369(民間型はヒューズ500)と呼ばれる。
「LOH(Light Observation Helicopter:軽観測ヘリコプター)」にちなんだ「ローチ」や、胴体形状にちなんだ「フライングエッグ」などの通称も存在する。

1960年代、アメリカ陸軍のLOH計画に入札して採用を勝ち取り、ベトナム戦争では観測・索敵に活躍したが、価格高騰や納期遅延などの問題を起こし*3、1434機で調達終了となり、ほどなくOH-58によってその座を追われた。
そのため、本来の用途においては短命であった。
しかし、特徴的な卵形の胴体は軽く丈夫で抗力も小さいうえ視界も広く、軽快な機体にターボシャフトを搭載しており、ループが可能なほどの運動性を誇った。
また、コンパクトな機体でありながら4名まで乗ることができて汎用性が高く、機体構造も簡素で保守性も良かった。
これらの長所から、各国で軍民を問わずさまざまな用途で現在も使われている。

陸上自衛隊ではJ型およびD型を観測ヘリコプターとして採用した。
本機の後継としてOH-1が開発されたが、偵察機としては高額で、各対戦車ヘリコプター隊への配備にとどまったことから、今後も使用される予定である。
海上自衛隊でもJ型やD型を練習機として使用していたが、これらが老朽化し、川崎重工のライセンス契約も切れたため、代替として民間型のMD500EをOH-6DAの呼称で購入、使用していた。
(こちらも後継として、ユーロコプター社のEC135が導入される予定となっている。)

派生型として、歩兵支援用に機銃やロケット弾を装備した軽攻撃型のAH-6や、胴体横にベンチシートを追加した特殊部隊強襲用のMH-6などが存在する。
また、FLIRを備えた夜戦対応型、通称「ナイトフォックス」も存在する。

更には第三世界向けに、民間型を改良して武装を施した500M「ディフェンダー」シリーズも製造された。
軍事予算の少ない小国では重宝され、機銃やロケット弾のみならず、MMS対戦車ミサイル魚雷などを装備され、本格的な運用をされることもある。
アジア・中南米・アフリカなどへ輸出されたが、多数の機体が北朝鮮へ密輸されたとの情報も存在する。

民間用の発展型として、世界初のノーターヘリコプターであるMD520Nや、そのキャビンを拡大したMD600Nが存在する。

なお湾岸戦争において、イラク軍のヒューズ500がホバリング中、F-15Eから投下されたレーザー誘導爆弾の直撃をうけ撃墜されている。

関連リンク:http://www.mdhelicopters.com/products.php?id=MD_500E

oh6_ser.JPG

MD500E(OH-6DA)

スペックデータ

OH-6D
乗員1名+3名
主ローター直径8.03m
全長9.30m
胴体長7.23m
全高2.73m
全幅8.05m
スキッド幅2.06m
空虚重量520kg
最大離陸重量1,200kg
全備重量1,361kg
エンジンアリソン T63-A-5Aターボシャフト推力236kW)×1基
速度
(最大/巡航)
282km/h / 239km/h
実用上昇限度4,481m
航続距離435km
兵装なし


AH/MH-6
乗員2名
定員6名(外装式ベンチ使用時)
全長9.80m
全高3.0m
ローターメインローター6枚、テイルローター4枚
主ローター直径8.30m
空虚重量722kg
最大離陸重量1,406kg
発動機アリソン T-63-A-5-AまたはT63-A-700 ターボシャフト×1基
出力317kW(425shp)/375shp(280kW)(離陸時)
搭載可能燃料量242リットル
速度
(最大/巡航)
282km/h / 250km/h
航続距離430km(5,000ft時)
実用上昇限度5,700m
上昇率10.5m/秒
武装機銃:M230?機関砲×1門, またはGAU-19?(AH-6のみ(M型除く))またはM134×2門
ロケット:LAU-68D/A ハイドラ70
ミサイル:AGM-114「ヘルファイア」またはスティンガー×2基(AH-6のみ(M型除く))
その他:Mk.19 自動擲弾銃(AH-6のみ(M型除く))


OH-6のバリエーション(テイルローター)

  • Model 369:
    OH-6の社内呼称。

  • OH-6A(HO-6)「カイユース」:
    原型機で初期生産型。価格高騰や納期遅延により調達中断。

  • OH-6B:
    エンジン換装型。

  • OH-6C:
    エンジン換装提案型。

  • OH-6J:
    500Cを川崎重工陸上自衛隊向けの観測ヘリコプターとしてライセンス生産したもの。性能はA型に準拠。
    海上自衛隊練習機として利用)

  • OH-6D:
    500Dの観測ヘリコプター仕様。
    陸上自衛隊や南米諸国の陸軍などが使用(海上自衛隊練習機として利用*4)。

  • OH-6DA:
    500Eを海上自衛隊練習機として採用したもの。機首部形状が異なる。

  • AH-6C「キラーエッグ」:
    OH-6Aの軽攻撃型。

  • MH-6C「リトルバード」:
    攻撃/輸送兼用型。現在訓練用として使用。

  • MH-6E:
    C型改良の特殊部隊向け軽攻撃輸送型。

  • MH-6H:
    E型改良の特殊部隊強襲型。

  • MH-6J:
    AH-6Jの特殊部隊強襲型。

  • EH-6B/E:
    特殊部隊向け電子戦機型。C2や通信中継に利用。

  • TH-6B:
    アメリカ海軍向けの練習機型。

  • TH-6J:
    練習機型。

  • AH-6J:
    500MDに530MGの動力系を組み合わせ、GPSFLIRなどを追加したもの。

  • AH-6H:
    500MDを改良型で特殊部隊支援用。米陸軍が採用した。

  • A/MH-6M MELB*5
    AH-6JとMH-6Jの統合後継型。
    MFDや6枚羽のメインローター・4枚羽のテイルローターなどを装備した。

  • AH/MH-6X:
    AH-MH-6MのUAV型。

  • MH-6S:
    メインローターをAH-64DブロックIII仕様のローター(ロングボウレーダー含む)へ換装し、エンジンをより強力なロールス・ロイス plc製250-CE30に換装したモデル。
    OH-58カイオワ後継機のトライアル提出機。

  • MH-6I:
    国際輸出仕様。

  • ヒューズ500A:
    OH-6Aの民間型。
    エンジンはアリソン 250C-18Bターボシャフト(出力317shp(236kW))を搭載。

  • ヒューズ500C:
    500Aの飛行能力向上型。
    エンジンはアリソン 250C-C20(出力400shp(298kW))に換装された。

  • ヒューズ500D:
    メインローターを4枚から5枚に増やし、T尾翼を装備、トランスミッションを強化して飛行性能を向上したもの。
    エンジンはアリソン 250-C20B(出力420shp(313kW))を搭載。

  • ヒューズ500M「ディフェンダー」:
    500Cの輸出用攻撃型。

  • ヒューズ500MD:
    500Dの輸出用攻撃/多用途型。広範囲の兵装を搭載できる。

  • ヒューズ500MD/ASW:
    500MDの対潜ヘリコプター型。

  • ヒューズ500MD/TOW:
    500MDの攻撃ヘリコプター型。

  • ヒューズ500MD/MMS-TOW:
    500MD/TOWの改良型。ローターマスト上に光学照準器を搭載した。

  • MD530MG:
    500MDの胴体を流線型に再設計し、エンジンやトランスミッションを強化したもの。

  • MD530F:
    530MGの民間型。高地での飛行に適する。
    エンジンはアリソン 250-C30B(出力650shp(485kW))を搭載。

  • ULB:
    530FベースのUAV試験機。
  • MD500E:
    500Dに530MGの胴体を組み合わせ、速度性能を向上したもの。

OH-6のバリエーション(ノーター)

  • MD520N:
    500Eをベースにした初のノーター実用機。

  • MD600N:
    520Nの胴体を延長し、8人乗りにしたもの。


*1 アメリカ先住民のカイユース族から。
*2 セスナ170の軍用型。
*3 生産上の問題ではなく、入札時に非現実的な価格を提示したためといわれている。
*4 2011年6月運用終了。
*5 Mission Enhancement Little Bird.

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