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*&ruby(えむでぃーいれぶん){【MD-11】}; [#id31c250]
McDonnell Douglas/Boeing MD-11.~
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1980〜1990年代、アメリカの[[マクダネル・ダグラス]]社が開発・生産した三発[[ワイドボディ>広胴機]][[旅客機]]。~
1980〜1990年代、アメリカの[[マクダネル・ダグラス]]社が開発・生産した[[三発>多発機]][[ワイドボディ>広胴機]][[旅客機]]。~
[[DC-10]]を基に、各部を近代化した形で開発された。~
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[[マクダネル・ダグラス]]は1997年に[[ボーイング]]に吸収合併されたため((なお、[[DC-9]]に源流を発する[[ナローボディ機>狭胴機]]「MD-95」はボーイングに引き継がれ「[[B717]]」として生産された。))、同社が開発した最後の[[大型旅客機>旅客機]]となった。

**開発の経緯 [#c8facc3c]
1970年代、[[マクダネル・ダグラス]]の[[DC-10]]は[[ロッキード]]の[[L-1011]]との販売競争を繰り広げた。~
この競争は最終的にロッキード側の自滅に近い形((元々民需向けの販売網が弱かったところに「ロッキード事件」として知られる日本政府・[[全日本空輸]]に対する贈賄事件で信用を落としてしまった。))で決着したが、勝利したDC-10の前途も明るくなかった。~
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[[DC-10]]の開発当初に求められていたコンセプトは「[[超音速旅客機]]の補完」であった。~
しかし、実際に完成した[[超音速旅客機]]・[[コンコルド]]は航空技術史上でも最大級の欠陥機であり、登場時点ですでに商業的に破綻((これは、先にソ連で完成していた[[Tu-144]]も同様であった。))。~
また、[[中東戦争]]を契機に[[燃料]]価格が高騰し、より低燃費な機体が求められるようになった。~
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時を同じく、[[エアバス>エアバス(企業)]]の[[A300-600>A300]]・[[A310]]、[[ボーイング]]の[[B767]]などの[[双発機]]が登場。~
いずれも[[グラスコックピット]]・[[2マンクルー]]を実現した次世代[[双発機]]であった。~
この時点で、三発のエンジンと[[3マンクルー]]を備えるDC-10の設計は非効率とみなされ陳腐化。~
このため、DC-10をベースに[[グラスコックピット]]・[[2マンクルー]]などを取り入れて近代化されたのが本機である。~
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**セールス [#o76fcce3]
マクダネル・ダグラスでは本機を「経済的効率」を重視して売り出した。~
曰く「大型四発機と同じ[[ペイロード]]で、安い経費で運行できる((特に「[[B747]]を投入するほどの需要がない長距離路線に最適」としていた。))」~
曰く「大型[[四発機>多発機]]と同じ[[ペイロード]]で、安い経費で運行できる((特に「[[B747]]を投入するほどの需要がない長距離路線に最適」としていた。))」~
曰く「大型[[双発機]]に比べて洋上飛行の制約が少ない機体である」~
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しかし実際の所、一座席あたりのコストは[[B747-400]]を凌駕し得るほどのものではなかった((B747-400は400〜500席以上を収容可能だったのに対し、300席クラスと[[ペイロード]]の面で明らかに見劣りしていた。))。~
また、諸事情から開発が遅れたため、その期間に新型機でもさらなる改善・改修が行われ、洋上飛行の制約も緩和されていった(([[ETOPS]]の項も参照。))。~
このように、着実に進歩と実績を積み重ねた[[双発機]]に対し、本機は明らかに立ち位置を見失っていた。~
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セールスは不調なまま推移し、業績不振のマクダネル・ダグラスは[[ボーイング]]に吸収合併されるに至る。~
ボーイングは本機を[[貨物機]]として生産し続ける事を検討したが、継続に値する収益性はないと判断。~
2001年2月、経営リソースは競合機の[[B777]]に振り分けられ、生産中止が決定された。~
合計生産機数は200機。これは旅客機としては特筆に値する少数であった。~
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2017年現在、旅客型としては全機退役済みで、現存する少数の機体は全て[[貨物機]]として運用されている。

>日本では[[日本航空]]が国際線専用機材として10機を導入、「&ruby(ジェイバード){J Bird};」として鳥の名前に由来する愛称を与えて用いていたが、わずか10年で退役。~
これは[[DC-10]]もより早い退役であり、また、JALの歴代[[フリート]]でも、[[コンベア880]]に次ぐ短命機でもあった。

**スペックデータ [#g04664b4]
|タイプ|CENTER:MD-11|CENTER:MD-11F|CENTER:MD-11C|CENTER:MD-11ER|
|乗員|>|>|>|CENTER:2名([[機長]]・[[副機長]])|
|乗客|410名(1クラス)&br;323名(2クラス)&br;293名(3クラス)|CENTER:-|290名(1クラス)&br;214名(2クラス)&br;181名(3クラス)|CENTER:410名(1クラス)&br;323名(2クラス)&br;293名(3クラス)|
|全長|>|>|>|CENTER:61.21m|
|全高|>|>|>|CENTER:17.60m|
|翼幅|>|>|>|CENTER:51.66m|
|最大離陸重量|CENTER:273,314kg|CENTER:285,990kg|CENTER:283,700kg|CENTER:285,990kg|
|[[エンジン]]|>|>|>|CENTER:[[ターボファン]]×3基(以下から選択)&br;[[P&W>プラット&ホイットニー]]PW4460(出力267kN)&br;P&W PW4462(出力276kN)&br;[[GE>ジェネラルエレクトリック]][[CF6-80C1D2F>CF6]](出力274kN)|
|巡航速度|>|>|>|CENTER:[[マッハ]]0.87|
|[[実用上昇限度>上昇限度]]|>|>|>|CENTER:13,000m|
|[[航続距離]]|CENTER:12,633km|CENTER:7,242km|CENTER:12,392km|CENTER:13,408km|
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**バリエーション [#g60dc7e6]
***開発された仕様 [#c1122611]
-MD-11:~
基本型。~
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-MD-11ER:~
航続距離延長型。~
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-MD-11C:~
貨客混載型。~
機体前方を客室、機体後方を貨物室として胴体後部の側面に幅4.06m・高さ2.59mの貨物扉を設置した。~
客室と貨物室の比率は変更することが可能。~
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-MD-11F:~
胴体前方の側面に幅3.56m・高さ2.59mの貨物扉を設置し、床を強化した純貨物型仕様。~
床上貨物室の容積は440立方メートルで、カーゴパレット26枚の搭載が可能で、床下貨物室の容積は158立方メートル。~
~
-MD-11CF:~
旅客・貨物転換型。~
貨物型と同様に胴体前方の側面に幅3.56m・高さ2.59mの貨物扉を設置しているが、客室窓・乗降扉もそのまま残されている。~
床上[[キャビン]](旅客仕様なら客室、貨物仕様なら貨物室)の容積は410立方メートルと純貨物型よりやや少ない。~
~
***計画のみ [#s390e0f0]
-MD-11LR:~
長距離型。~
翼端を3.6mずつ延長した上で中央脚を4輪として、8,000[[海里]](14,820km)の航続距離を得る計画だった。~
~
-MD-11(ストレッチ型):~
胴体を主翼の前後で合計34フィート(10.36m)延長する仕様。~
3クラスで最大337席、[[エコノミークラス]]を増やした2クラスであれば474席を設けることができた。~
~
-MD-11(パノラマキャビン仕様):~
MD-11ストレッチ仕様の前方床下貨物室を客室として使用することで、さらに旅客定員の増加を図ったモデル。~
階下席には[[ビジネスクラス]]で2列-2列の配列で66席、[[エコノミークラス]]を2列-3列の配置とすると99席が設置できる計画であった。~
~
-MD-11XX:~
胴体を主翼の前後で合計12フィート(3.6m)延長した上で、後退角をやや小さめにした上でアスペクト比を高める新設計の主翼を組み合わせるもの。~
~


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