【M48】(えむよんじゅうはち)

M48 Patton.

M47?戦車の後継として1950年から開発されたアメリカ陸軍主力戦車
俗に言う「パットン戦車」シリーズの3代目。

車体は前部が鋳造で後方が船形の溶接とされた。
主砲はA1からA3型まではM41 90mm砲を搭載していたが、A4型からM68 105mm砲に換装された。
1959年の生産終了までに12,000輌が生産され、6,000輌前後は西側諸国に輸出された。

現在ではアメリカをはじめとする多くの国から退役したが、韓国や台湾、イスラエルなど一部の国では近代化改修を施して運用している。
バリエーションとして、火炎放射器を搭載したM68火炎放射戦車、ボフォース40mm機関砲2門を搭載したM247「サージェント・ヨーク」対空戦車、装甲回収車型のM88「ハーキュリーズ」がある。

余談ながら、日本が1950年代に(後に「61式」となる)国産戦車の開発を進めていた際、本車も参考のひとつになっている。

性能諸元

乗員4名
全長9.3m
全高3.10m
全幅3.65m
戦闘重量52t
懸架方式トーションバー
エンジンコンチネンタル AVDS-1790-5B V型12気筒空冷ツインターボチャージャー ガソリンエンジン
(M48A1/A2に搭載)
コンチネンタル AVDS-1790-2 V型12気筒空冷ツインターボチャージド・ディーゼル
(M48A3/A5に搭載)
機関出力810hp(AVDS-1790-5B)
750hp(AVDS-1790-2)
登坂力60%
超堤高0.91m
超壕幅2.59m
最大速度48.2km/h(路上)
行動距離463km
装甲120mm(車体前面)/110mm(砲塔前面)
兵装M41 43口径90mm戦車砲×1門(M48)
M36 43口径90mm戦車砲×1門(M48A1〜A3)
M68 51口径105mm戦車砲(弾数54発)×1門(M48A4〜A5)
M2 12.7mm重機関銃×1挺(車長用キューポラ、弾数300発)
M73 7.62mm機関銃×1挺(同軸、後にM60E2に交換)
M60E2 7.62mm機関銃×1挺(同軸、弾数10,000発)
生産台数11,703輌


各型及び各国のバリエーション

  • T48:
    M47の改良試作型。

    • T48E1:
      T48の砲塔を新型にした改良試作型。

    • T48E2:
      T48の車体を新型にした改良試作型。
      M48として制式化された。

アメリカ

  • M48:
    主砲にM41 90mm砲を装備する初期型。
    マズルブレーキは当初Y字型だったが、後にT字型へ変更された。

    • M48E1:
      M48の主砲をM68 51口径105mm戦車砲に換装した試作車。
      M60開発の基礎となった。

    • M48E2:
      M48のエンジンをイギリス製の自動燃料噴射装置付き空冷ガソリンエンジンに換装した試作車。
      M48A2の基礎となった。

  • M48A1:
    新型の運転席ハッチとM1車長用キューポラを搭載した初期生産型。
    M1キューポラはM2 12.7mm重機関銃の操作と装弾を車内から行うことが可能である。

    • M48A1E1:
      M48A1の主砲を、ロイヤル・オードナンス L7を国産化したM68に換装した試作車。
      M48E1と並びM60開発の基礎となった。

    • M48A1E2:
      M48A1のエンジンをコンチネンタル社製空冷ディーゼルエンジンに換装した試作車。
      上部支持輪が片側5個から3個に変更され、誘導輪が新型のものになっている。
      M48E1、M48A1W1と共にM60開発の基礎となり、M60の試作型であるXM68に発展した。

    • M48A1E3:
      M48A1の車体にM60の砲塔を搭載し、空冷ディーゼルエンジンとクロスドライブ式自動変速機を搭載した試作車。
      その他各部を改修した後に制式化され、M48A5となった。

  • M48A2:
    パワーパックやトランスミッション、砲塔制御装置の改良やリアプレートの改設計を行った型。
    • M48A2C:
      M48A2に改良型のM17測距儀?と操向装置、駐退復座機を搭載し、テンションホイールを省略した型。
      当初は訓練用戦車として開発されたが、照準装置を始め各部の扱いが簡便なことから、主に友好国への供与車両として用いられた。

  • M48A3:
    M48A1のエンジンをディーゼルエンジンに換装し、新型の射撃統制装置を搭載した型。
    • M48A3 Mod.B:
      排気装置とテールランプに装甲を追加し、車長用キューポラを持ち上げた型。
      ベトナム戦争での戦訓から開発され、主にベトナム派遣部隊で使用されたため、「ベトナム型(Mod.V もしくはVietnam.Mod)」とも呼ばれる。
      現地改造で12.7mm機銃をキューポラ内装式からキューポラ上部に銃架を増設して外装式にしたり、装填手ハッチの周囲に7.62mm機関銃用の銃架を増設した車両も存在する。

  • M48A4:
    M60A2の生産で生じた余剰のM60の砲塔をM48A3に搭載した結合型。

  • M48A5:
    既存のM48/A1/A2/A3に主砲をM68 105mm戦車砲に、パワーパックをM60戦車と同一規格に換装した改修型。
    • M48A5PI:
      キューポラをM1からイスラエル製のウルダン(Urdan)に換装した型。

  • M48C:
    「生産上の不備から装甲防御力が不足している」とされた初期の生産車、約120両を前線部隊から引き揚げて訓練用戦車としたもの。
    通常の車両と区別するため、車体前面上部には「Non-Ballistic(耐弾能力なし)」と表記されている。

  • M48DB(M48 Dozer Blade):
    M8及びM8A1ドーザーブレードキットを装着した車両の通称。

  • M67 "Zippo":
    M48に火炎放射器を搭載した火炎放射戦車。
    • M67A1:
      M48A1の火炎放射戦車型。
    • M67A2:
      M48A2の火炎放射戦車型。

  • M88「ハーキュリーズ」:
    M48の車体を基にした装甲回収車型。
    エンジンはコンチネンタル AVSI-1790-6Aガソリンエンジンを搭載。
    キューポラにはM2 12.7mm重機関銃を搭載しており、ベトナム戦では防盾付きに改造された例もある。

    • M88A1:
      改良型。
      エンジンはコンチネンタル AVDS-1790-2DRディーゼルエンジンに換装された。
      欧州や中東を中心に、数多くの国に輸出されている。
      イスラエルに輸出された車両では、独自改修(バーアーマー(スラットアーマー)の追加装備など)が施された例もある。

    • M88A2:
      M88A1の改良型。
      エンジンをコンチネンタル AVDS-1790-8CRディーゼルエンジンに換装した他、車体への装甲版やサイドスカート?の追加、クレーン本体の強化など改修は多岐に渡っている。
      回収能力が従来の56tから70tに増加し、M1エイブラムスなど、重量のある車両の回収作業も可能となっている。

  • M247「サージェント・ヨーク」:
    M48の車体にボフォース L70 40mm機関砲2門と火器管制装置を装備した対空戦車型。
    一度はアメリカ陸軍に制式採用されたが、システムの信頼性の不備に加え、アメリカ軍の絶対的な制空能力の前に対空砲の必要性自体が疑問視され、初期生産分50輛のみでキャンセルされ、配備にまでは至らなかった。
    初期生産分の50両は空軍の爆撃訓練の標的などに使用された。

イギリス

  • M48 Marksman:
    Marksman砲塔を搭載した自走対空砲仕様。

イスラエル

  • E-48:
    イスラエルにおけるM48の制式名。

    • E-48(M48A1):
      第3次中東戦争においてヨルダン軍より鹵獲したM48A1。

    • E-48(M48A2):
      西ドイツ軍が使用していたM48A2を購入したもの。

    • E-48(M48A2C):
      西ドイツ軍が使用していたM48A2Cを購入したもの。

    • E-48(M48A3):
      アメリカ軍が使用していたM48A3を購入したもの。

  • E-48 AVLB:
    M48にイスラエル製の橋を搭載した架橋戦車型。

  • マガフ:
    M48やM60爆発反応装甲を取り付けるなどした、イスラエル製の改良型。
    M48を基にした型では、A1/A2/A3を基にしたMagach3とA5を基にしたMagach5が存在する。

    • マガフ3:
      M48A1/A2の改修型。
      主砲をイギリス製L7 105mm戦車砲に換装し、動力系もコンチネンタルAVDS-1790-2AディーゼルエンジンとアリソンCD-850-6変速機にそれぞれ換装され、Urdan社製キューポラを装備している。
      後にブレイザーERAを追加している。

    • マガフ5:
      M48A5もしくは既存のマガフ3からの改修型。
      マガフ3とほぼ同じだが、動力系をAVDS-1790-2DエンジンとCD-850-6A変速機に変更している。

      • ペレフ:
        マガフ5を改造した対戦車車両。
        “ペレフ”とはヘブライ語で「ローマ式投石機(オナガー)」の意。
        砲塔前半部はダミー砲身とくさび形のERAあるいは複合装甲ブロックが装着され、砲塔後半部に12発のスパイク-NLOS対戦車ミサイル発射機を搭載している。
        2014年頃に存在が確認され、当初は「マガフ スパイク(Magach Spike)」と呼ばれた。

ヨルダン

  • AB1:
    ヨルダン製の装甲回収車仕様。

  • AB9B1:
    M48に120mm滑腔砲を搭載した型。

スペイン

  • M48A5E:
    M48A5規格に改修した型。
    主砲を105mm戦車砲に換装、M17B1C測距儀、M13A4弾道計算機、アメリカ軍仕様とは異なる白色光/赤外線サーチライトを搭載した。

    • M48A5E1:
      M48A5Eの改修型。
      ドイツ製の発煙弾発射器を搭載する等の小改修が行われている。

    • M48A5E2:
      M48A5E1の改良型。
      暗視装置をパッシヴ式に変更し、レーザー測距儀、半導体素子式弾道コンピューターを備えるヒューズ社製 Mk.7火器管制装置に換装、車長用キューポラをウルダン社製の低姿勢キューポラに変更している。

    • M48A5E3:
      M48A5E2の改修型。
      夜間用照準器を熱線映像式に変更し、主砲安定装置を改修したもの。
      1993年に計画がキャンセルされたため、試作車が製作されたのみに終わった。

  • Alacran CZ-10/25E:
    M48の戦闘工兵車仕様。
    ドーザーブレードを装備し、砲塔には主砲の代わりにショベルアームが装備されている。

    • Alacran CZ-10/30E:
      CZ-10/25Eの改良型。

韓国

  • M48A3K:
    M48A3に射撃統制装置、煙幕弾発射器、3つの補助輪、T字型マズルブレーキ、車長用ペリスコープを追加し、エンジンをディーゼルエンジンに換装した改良型。

  • M48A5K:
    M48A5にサイドスカートを追加し、LTFCS*1と呼ばれる新型射撃統制装置を追加した型。

台湾

  • CM11/M48H「勇虎式戦車」:
    M48A2の砲塔をM60A3の車体に搭載し、爆発反応装甲射撃統制装置を追加した改良型。
    • CM12:
      CM-11と同等の武装と射撃統制装置をM48A3に追加した型。

トルコ

  • M48A5T1:
    M48にM68 105mm砲とMTUディーゼルエンジン、光増幅式暗視装置を搭載してM48A5仕様にアップグレードした改良型。

  • M48T5 "Tamay" ARV:
    M48の車体をベースにして開発した装甲回収車型。

旧西ドイツ

  • Minenraeumpanzer Keiler:
    M48A2Cの車体を基にした地雷処理戦車型。

  • Kampfpanzer M48A2GA2:
    M48A2の主砲をL7 105mm砲に、同軸機銃のM73 7.62mm機関銃キューポラM2 12.7mm重機関銃を西ドイツ国産のMG3 7.62mm汎用機関銃に換装し、キューポラもM1から背の低いキューポラに交換した改良型。

  • スーパーM48:
    民間で考案されたM48の改修キット。
    主砲をM68 51口径105mm戦車砲に、砲塔を新設計の物に換装。
    エンジンも新型のディーゼルエンジンに換装した。
    試作車が開発されたのみで、実際に採用されることはなかった。


*1 Laser Tank Fire Control System.

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