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M4(戦車) †
M4 Sherman
第二次世界大戦時にアメリカ軍に制式採用され、主力戦車として活躍した中戦車。
1940年頃から開発が始まり、1941年10月に制式採用。
その後、1942年2月から量産が開始され、1945年までに5万両近くが製造された。
10社・11工場で分散して製造されたため、搭載エンジンや実戦部隊からの要求による武装変更などの派生型が製造された。
戦歴では、ヨーロッパでのドイツ軍との戦いや太平洋戦争での沖縄戦に投入されたほか、朝鮮戦争や印パ戦争、中東戦争などで使用された。
現在でも、パラグアイでは少数が主力戦車として使用されている。
スペックデータ †
乗員 | 5名 |
全長 | 7.47m(砲身含む) |
車体長 | 6.19m |
全高 | 2.74m |
全幅 | 2.62m |
重量 | 32.3t |
懸架方式 | 水平渦巻きスプリング・ボギー式(HVSS) |
発動機 | コンチネンタル R975 C4 4ストローク星型9気筒空冷ガソリンエンジン×1基 |
出力 | 400shp |
速度 | 42km/h(最高)/38.6km/h(整地)/19.3km/h(不整地) |
行動距離 | 160km |
武装 | M1 75mm戦車砲×1門(71発) M1919A4 7.62mm機銃×2挺(6,250発) M2 12.7mm機銃×1挺(600発) |
装甲 | 88.9mm(砲塔防盾) 63.5mm(砲塔側後面) 63.5mm(車体前面) 38.1mm(車体側後面) |
主なバリエーション(カッコ内は英軍呼称) †
オリジナル †
- T6
試作車の呼称。
- M4(Sherman I)
初期モデル。溶接構造車体にコンチネンタルR975星形エンジンを搭載。
- M4 Hybrid(Sherman I Hybrid)
車体前面のみに一体鋳造構造を用いた「コンポジット型」モデル。主に英国へ供与。
- M4A1(Sherman II)
車体を一体鋳造構造としたモデル。避弾経始は高まったが、車内スペースが狭くなってしまった。
- M4A2(Sherman III)
溶接車体に鋳造砲塔を搭載。
エンジンは民間トラック用に開発されていたGM製 6046直列6気筒2ストローク液冷ディーゼルエンジン×2基を連結して搭載。
海兵隊のほか、レンドリース用としてイギリス軍と自由フランス軍で使用された。
- M4A3(Sherman IV)
溶接車体に鋳造砲塔を搭載。フォードGAA V8液冷ガソリンエンジン(450馬力)×1基を搭載。
- M4A4
溶接車体に鋳造砲塔を搭載。クライスラー製A-57複列30気筒液冷ガソリンエンジン*1×1を搭載。
- M4A6
溶接・鋳造のハイブリッド構造。キャタピラー社製空冷星型ディーゼルエンジンを搭載。
生産数は75両と少なく、訓練用として使用された。
- M4A1(76mm)(Sherman IIA・後期型はIIIAY)
A1型の主砲をM1A1 76.2mm戦車砲に変更したモデル。砲塔はT23試作中戦車と同型。
- M4A2(76mm)(Sherman III)
A2型の主砲をM1A2またはM1A1C 76mm戦車砲に変更したモデル。砲塔は後期型のもの。
- M4A3E4(Sherman IVA)
朝鮮戦争当時、北朝鮮軍のT-34-85に対抗するために開発されたモデル。
主砲および砲塔はM4A1(76mm)と同様だが、車体はM4A3がベースになっている。
- M4(105mm)(Sherman IB)
主砲を105mm榴弾砲へ変更したモデル。試作車はM4A4E1と呼称された。
- M4A3(105mm)(Sherman IVB)
主砲を105mm榴弾砲へ変更したモデル。試作車はM4A4E1の改良型であるM4E5。
- M4A3E2
突撃戦車「ジャンボ」。
A3の装甲強化型で、177.8mm厚の防楯を装備し、重量増加のため履帯の脇に「ダックビル」と呼ばれるアタッチメントを装着している。
- M4A3E8
「イージーエイト」と呼ばれる最終モデル。
朝鮮戦争などでも使用された他、創設期の陸上自衛隊にも「特車」として供与されていた。
追加装備モデル †
- T34「カリオペ」
砲塔上部に46inch長ロケット弾発射機を搭載した自走ロケット砲型。
- T40(M17)
砲塔上部に72inch長ロケット弾を装填した箱形ランチャーを搭載したもの。
- T76
主砲の替わりに75inch長ロケット弾発射装置を搭載したもの。
- T99
砲塔側面に45inch長ロケット弾22発を装填した箱形ランチャーを搭載したもの。
- T31 Demolition Tank
陣地破壊用に榴弾砲とT94ロケットランチャーを装備した試作車両。
- T1E3(M1)Aunt Jemima
車体前部に大型ローラー2基を装着した地雷原処理車。
- T3
英国の"Scorpion"地雷処理装置をベースにした地雷原処理車。
- M4 Doozit
T40ロケットランチャーとドーザーブレードを装備した障害物除去車。
- POA-CWS 75-HI
主砲に火炎放射装置を組み込んだ火炎放射戦車。
- T33
75mm砲の脇にE20火炎放射装置を並列配置した火炎放射戦車。
- Sherman Prong
別名Cullin hedgerow。車体前面に灌木切除装置を装備したモデル。
その他派生型 †
- グリズリー巡航戦車
カナダのモントリオール・ロコモーティブ・ワークスでM4A1(シャーマンII)をライセンス生産するにあたり、装備品などの規格をイギリス・カナダにあわせるために改設計を行ったモデル。
砲塔後部にNo.19型無線機を格納するための張り出しを設けたり、2インチ発煙弾発射機などが増設されている。
- シャーマン・ファイアフライ
ドイツ軍戦車に対抗するためにM4の車体にオードナンスQF・17ポンド砲を搭載した砲塔を組み合わせたモデル。
- M10「ウルヴァリン」/M36「ジャクソン」
M4の車体をベースにした駆逐戦車型。
- M7「プリースト」
自走榴弾砲型。M2(M101)105mm榴弾砲を搭載。
- M32
砲塔を撤去し、回収用クレーンを装備した戦車回収車型。
- シャーマンDD
ノルマンディー上陸作戦のためにイギリス軍が開発した水陸両用戦車(Duplex Drive)。
車体周囲に展開する防水スクリーンと、後部に誘導輪で駆動する推進用プロペラ2基を備えていた。
- シャーマンフレイル
地雷処理用のチェーンローラーを装備した地雷除去車両。
イスラエル製派生型 †
- M50/M51「スーパーシャーマン」
イスラエル軍での改修型。
砲塔にフランスのAMX-13と同じ高初速の75mm砲を搭載し、砲身長に合わせて砲塔後部のカウンターウェイトも延長した他、全金属製のT80履帯を使用している。
懸架装置はM4と同様、水平渦巻きスプリング・ボギー式である。
M51では、76mm砲搭型のM1シャーマンにフランス製CN105-F1 105mm戦車砲の短縮型を搭載し、エンジンもカミンズVT8-460に換装している。
第三次〜第四次中東戦争でT-34-85、T-54/T-55、T-62などを相手に奮戦した。
- M50
自走榴弾砲型。
M4A4のエンジンを前部の補助操縦席部分に移して、オープントップの後部にフランス製M50 155mm榴弾砲を搭載している。
- L33
M50自走榴弾砲の後継として開発された型。
M4の車体上に密閉型の戦闘室を設けてイスラエル国産のソルタムM68 33口径155mm榴弾砲を装備している。
- マクマト
自走迫撃砲型。退役したM50の車体前部をオープントップ式の戦闘室に改造して、ソルタムM66 160mm迫撃砲を装備している。
- シャーマンMRL
砲塔を撤去して多連装ロケットランチャーを搭載した自走多連装ロケット砲。
MLRSに更新されて現役装備から外された。
- キルション
退役したM51の車体にAGM-45「シュライク」対レーダーミサイルの単装ランチャーを装備した対レーダー車両。
- アンビュタンク
救護車型。
M4の砲塔を外してその下にエンジンを移して後部を救護室にしたタイプと、退役したM50の戦闘室を密閉してそのまま救護室にしたタイプの2種が存在する。
- ヤール
M1スーパーシャーマンの砲塔を外し、最大30mに達する巨大な伸縮式の観測台を備えた観測車輌。
- モンスター
戦車部隊の移動目標砲撃訓練の仮想標的として用いられる車両。
退役したM4の砲塔を撤去して車体外部に斜めに傾斜した装甲板をボルト止めしている。
- トレイルブレーザー
M51をベースにした回収車。