【M270】(えむにひゃくななじゅう)

M270 MLRS (Multiple Launch Rocket System)

アメリカ軍などで運用されている自走ロケット砲
M110 203mm自走榴弾砲の後継として開発が始まり、1978年に試作車が完成、1983年から配備された。
主な戦歴は湾岸戦争・イラク戦争など。

発射機はM2ブラッドレーの車体をベースに開発されたM993運搬車両。
車体前部にエンジンと装甲キャビンを配し、後部に専用の発射機を搭載する。

発射器はM269LLM*1と呼ばれるボックス型。
発射ポッド2基を装填でき、標準装備では個々のポッドにロケット弾6発、計12発を装填する。
左右194度まで旋回し、俯角は0〜60度まで。再装填の所要時間は約3分。
発射操作は全てFCSの電子制御で行われる。

陸上自衛隊にも1992年から特科部隊に配備されている。
公募での愛称は「マルス」だが、一般的には「多連装」の通称で呼ばれる。
火器管制装置は東芝、発射機は日産自動車宇宙航空事業部がライセンス生産していた*2*3

運用国(退役国も含む)

  • アメリカ:991両
  • イギリス:67両
  • イスラエル
  • イタリア:22両
  • エジプト(退役):26両
  • ニジェール(退役):30両(オランダ陸軍が運用。退役後はフィンランド陸軍に一部売却。)
  • ギリシャ:36両
  • 韓国:96両
  • デンマーク(退役):12両
  • ドイツ:252両(MARS(Mittleres Artillerie Raketen System)の名称で運用)
  • トルコ:12両
  • 日本:99両
  • ノルウェー(退役):12両
  • バーレーン(退役):9両
  • フィンランド:22両
  • フランス(退役):56両

スペックデータ

乗員3名(車長・砲手・操縦手)
全長7.06m
全高2.6m
全幅2.97m
全備重量24.756t
懸架
・駆動方式
全電気操作式
交差ドライブ・ターボ変速機
エンジンカミンズVTA903 V型8気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル(出力500hp)
速度64km/h
行動距離480km
武装12連装227mmロケット弾発射機×1基(6×2発)
再装填時間8分


主な弾種

  • M26:
    227mmクラスターロケット弾。M77子弾×644個を内蔵。

  • M26A1:
    向上型M85子弾を使用する延長射程ロケット(ERR*4)。
    射程45km。

  • M26A2:
    M26A1の子弾をM77子弾に変更した型。
  • M27:
    装填訓練用コンテナ。
  • M28:
    訓錬用ロケット弾。
    M26子弾の場所にバラスト・コンテナ×3基、煙幕コンテナ×3基を搭載。

  • M28A1:
    縮射程訓練ロケット(RRPR*5)。
    丸い先端部を持ち、射程が9kmへ短縮されている。

  • XM29:
    対装甲探知破壊弾(SADARM*6)を子弾として運ぶ。
    制式化されなかった。
  • M30:
    誘導型MLRS(GMLRS)が搭載するGPS搭載の精密誘導ロケット弾。
    射程60〜100km。
    M85複合目的改良型通常弾頭(DPCIM)子弾×404個を搭載。

  • M31:
    M30の派生型。単一の高性能爆薬弾頭を持つ。

  • XM135:
    2液式神経化学剤(VXガス)搭載ロケット。制式化されなかった。

  • MGM-140A「ATACMS」
    「陸軍戦術ミサイルシステム(Army Tactical Missile System)」と称する長射程地対地ミサイル?
    M270を発射機として使用する多種類の弾頭がある。
    標準のロケット弾に比して極めて巨大で、ミサイル1発でロケット弾6発分のペイロードを占有する。

  • AT2(ドイツ製):
    SCATMINロケット。対戦車地雷×28個を搭載。射程38km。


*1 Launcher Loader Module:発射装填モジュール
*2 現在はIHIエアロスペース。
*3 ライト類などの形状、右側ライト下の有線通信用端子などのマイナーチェンジが行われている。
*4 Extended Range Rocket.
*5 Reduced Range Practice Rocket.
*6 Sense and Destroy Armor.

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