【M16】(えむいちろく)

  1. アメリカ軍の制式小銃として装備されている突撃銃
    多数のバリエーションが存在し、資本主義諸国家でもっとも有名な銃の一つに挙げられる。

    基本設計はフェアチャイルド社の小火器部門として立ち上げられた、アーマライト・ディビジョン・オブ・フェアチャイルド・エンジン・アンド・エアプレーン・コーポレーション(以下アーマライト)のチーフエンジニアで、海兵隊出身のユージン・モリソン・ストーナーが担当した。

    使用する弾薬は5.56mmx45(.223)弾(ちなみに、この仕様の弾丸を世界で初めて用いた銃である)。

    それまでの軍用銃では、一般的に鉄と木がおもな素材であったのに対し、アルミ合金とプラスチックを全面的に採用する事で大幅な軽量化を図っているのが特徴であり、アメリカ空軍?にSAC用火器として制式採用された初期のタイプ(M16)では、空マガジン付きでの重量は3kgに満たなかった。

    当初、30-06弾(直後NATO?制式弾として採用された7.62mmx51(.308)弾に変更)を使用するAR10が設計された。
    アルミ合金製レシーバーやプラスチック製ストック&ハンドガード、さらに初期の試作品ではチタン製バレル(後に耐久性不足からスチール製に変更)等の素材や、発射ガスの一部をボルトキャリアーに直接吹き付けることでボルトを後退させるリュングマン・システムの採用によりガスピストン周りの部品を廃する等、軽量化に徹底して拘った設計となっており(現在のM16A2より軽い)、アメリカをはじめ各国軍にオファーされたが、登場したのが1955年と遅く、その頃には、すでにアメリカ軍のM14をはじめ、各国の正式採用銃の趨勢はほぼ決まりつつあったため、大量採用には至らなかった。

    一方、同時期にアメリカ陸軍で行われていた、M14の後継火器となる予定であったSPIW(特殊目的個人火器)プロジェクトは、あまりに過大な要求(フレシェット弾の採用、40mmグレネード?を3発以上連射出来る、重量10ポンド以下等々)により遅々として進まずにいた。
    そこで、1957年、陸軍はストーナーにAR10の小口径化を打診、これを受けて1958年初頭、後のM16の原型となるAR15?が完成し、軍にテストされることになった。
    同時に、ウィンチェスターやスプリングフィールド造兵廠からも小口径弾を使用するライフルのプロトタイプが提出されたが、それらは単にM2カービンやM14のサイズ違いに過ぎず、操作性やフルオートマチック射撃時の安定性等、AR15?の優位は揺るぎなかった。
    しかし、弱小メーカー製の革新的ライフルに対する、保守的なアメリカ陸軍の対応は冷淡であり、またアーマライト自体が軍への納入に対応できる生産設備を持っていなかったことから、1959年末、フェアチャイルドはアーマライトの持つAR10およびAR15?の製造権をコルト?(コルト・パテント・ファイヤーアームズ)社に委譲し、以後の製造販売はコルト?社が受け持つことになった(その直後ストーナーはアーマライトから去っている)。

    その後、度重なる改良を受け、当初、1962年にアメリカ空軍がSAC用火器として採用(このときにM16の正式名がついた)、合わせて当時戦争の激化しつつあったベトナムへテストのために送られ、ここで挙がった問題点を元にさらなる改良が施された。

    軽量で射撃の容易なM16は、陸軍の実戦テストにおいてもおおむね好評ではあったが、陸軍の上層部は保守的な考えが抜けず、難癖を付けてはM16の採用を渋った。
    特に陸軍が拘ったのが、「装填不良時にボルトを外から強制的に閉鎖する機能が無い」という点であった。これは、歴代のライフルM1903M1ガーランド?M14等)にはその機能があるのだから、次期制式ライフルにも無ければならないという理由による物であった。

    これを受けて、コルト社は強制閉鎖装置(ボルトフォワードアシスト)を追加(ストーナーは「不要であり、危険ですらある」と主張)、そのほか実戦テストで挙がった問題点を基に改良をくわえた物が、1963年、アメリカ陸軍に納入され、XM16E1の名称が与えられた。
    当初はグリーンベレーなどの特殊部隊が使用するほか、南ベトナム軍への援助物資として多数がベトナムに送られた。
    しかし、陸軍上層部では、次期制式ライフルをめぐり、現場の声を受けてM16を支持する一派と、SPIWプロジェクトを推進しようとする一派に分裂し、追加の納入は1965年まで待つことになった(その後1966年にも追加納入)。

    仮制式のままで60万挺以上が製造され、その殆どがベトナムに送り込まれ、現場の兵士からは軽くて扱いやすいと声も多く、SPIWプロジェクトはもはやこれ以上の進展は望めないと悟った陸軍は、遂に1967年、XM16E1を「U.S.RIFLE 5.56mm M16A1」として制式に採用した。

    ベトナムでの爆発的とも言える需要に対応するため、コルト?社以外にジェネラルモータース社の子会社やハーリントン&リチャードソン社等でも量産が行われた。

    その後、一般兵士に行き渡るにつれ、作動不良が続発し、合衆国議会で問題にされたほどであった。
    その理由を調査したところ、現場において、その未来的なスタイルから
    「このライフルはセルフクリーニング機能を持ったメンテナンスフリーの未来ライフルだ」
    といったような誤解が蔓延し、加えて、まともな教育を受けておらず、マニュアルすら全く読まない(読めない)者までが戦場に送り込まれるようになった*1ことによるメンテナンス不足、さらに、ベトナムに送られた弾薬が、試験の時に使われた物に比べてカーボンの付着が起こりやすい性質を持ち、銃が汚れやすいということが原因であることがわかった(練度の高い部隊ほど、きちんとしたメンテナンスをしているために作動不良の確率は低かった)。
    そこで、かの有名な「コミック版マニュアル」が作製され、合わせてストック内にメンテナンスキットを収容出来るようにする事で携行を容易にし、メンテナンスの実施を徹底させることで、作動不良問題はほぼ沈静化した。

    M16に関する醜聞の大半は、この時期にささやかれた物であるといえる。
    ベトナム戦を戦った兵士から、「マテル・スペシャル」(プラスチックを多用しているので)、「ハイテク・ジャンク」(新型銃のくせに作動不良が多い(自分の取り扱い要領のまずさを棚に上げて、ではあるが))等と揶揄されていた事が伝わってきたことから、「M16は駄作である」というイメージを日本のガンマニアに植え付けることとなった。
    しかし、その多くは、あまりに斬新な外観故の先入観から来た物であったり、作動不良についても、前線に行き渡る過程で十分な教育訓練が出来なかったことが原因である。

    ベトナム戦争終結後は、韓国、タイ、フィリピンなど、主に東南アジア方面に供与された他、ライセンス生産も行われた。

    その後、1970年代後半になると、M16A1の老朽化が問題となり、後継となるライフルの選定が急がれることとなった。
    これを受け、コルト?社と海兵隊の主導により、M16の近代化改修プロジェクト、「M16PIP」が進められる事になった。

    また、ヨーロッパ各国においても、ベトナム戦争における小口径高速弾の有用性に着目し、新たに小口径弾およびライフルの選定・採用へ動き始めたが、ヨーロッパの地形等の特性などを考慮した場合、米軍採用のM193弾の場合、射距離400mを越えたあたりでの急激な弾速の低下と、それによる弾着のばらつきが問題視されるようになった。
    そこでNATOは新たに制式小口径弾のトライアルを開始し、1980年10月、ベルギーのファブリック・ナショナール?(FNハースタル)社原案によるSS109弾が採用されることになった。

    SS109弾は、外形の寸法はM193弾と同型ながら、M193弾が55グレイン(約3.6g)の弾を12インチピッチのライフリングを持つ銃身で打ち出す設定であるのに対し、62グレイン(約4.0g)の弾を7インチピッチのライフリングを持つ銃身から打ち出す設定となっており、重い弾を早いピッチのライフリングを持つ銃身で打ち出すことで、400mを越える射距離でも弾道を安定させ、有効射程を延ばしているほか、ソ連(現ロシア)軍制式弾である5.45mmx39弾に倣い、ジャケット先端内部に空洞を設けて人体への効果を高めるとともに、スティール製の芯によりボディアーマーに対する効果を高める等の工夫がされていた。

    このため、「M16PIP」においても、弾薬についてはSS109弾を使用する方向で作業が進められることになった。
    その後、ストーナーが移籍した兵器開発会社、ナイツ・アーマメントの協力もあり、1982年末、M16A2として制式化され、海兵隊を皮切りに全軍に採用、あわせて弾薬もM855弾として採用されることになった。

    M16A1からM16A2への主な変更点は、
    1.ストックの材質をナイロン系として耐久性を向上させるとともに全長を1インチ延長
    2.ハンドガードキャップより前方のバレルの外径を0.625インチから0.750インチに増やし、強度と耐久性を向上
    3.フルオートマチックモードに代わり3発バーストモードを採用
    4.工具を使わずにリアサイトを調整できるように変更
    5.ハンドガードを左右分割の三角形状から上下分割の円筒形状とし、強度を向上
    6.グリップにフィンガーチャンネルを追加
    7.エジェクションポートにブラスデフレクターを追加し、左利き射手に対応
    8.フラッシュハイダーのスリットを等間隔に6本から上方に5本に変更
    9.エジェクションポートカバーのプランジャーを強化
    10.ハンドガードリングをテーパー形状に変更
    11.ロアレシーバーのテイクダウンピン周りに補強を追加
    12.フロントサイトベースを強化、フロントサイトポストを円柱から角柱に変更
    等々となっている。

    更新が始まった当初は、完成したライフルの他に、コンバージョンキットを部隊のアーマラーが組み替えるという形での更新も行われた。そのため、ロアレシーバーにM16A1の特徴を残す個体も多く存在した。
    現在でも、部隊によってはM16A2からM4ないしM16A4への更新の際にコンバージョンキットによる更新が行われた。

    1990年代半ば頃、M16A2の米軍納入の為の入札が行われ、コルト?社とFNマニュファクチャリング社(FNハースタルの北米法人)との競合の結果、FNマニュファクチャリング社が納入権を獲得した。以降、20インチバレルを持つライフルサイズのモデルに関してはFNマニュファクチャリング社が現在に至るまで(現在は海兵隊向けのM16A4)納入を担当している。

    現在、アメリカ陸軍はM4カービン海兵隊は主にM16A4と、使用している火器が異なる。これは太平洋戦争初期にM1ライフルとジョンソンライフルをそれぞれ採用していた時以来の事態であると言えよう。

    なお、アメリカ軍はM16やM4の後継となる次期制式ライフルの選定に向けて様々なテストを行っているが、有力候補とみられていたH&KのXM8もキャンセルされ、様々なアクセサリーを追加・交換する事によりあらゆる任務に対応できる環境が整備されており、もはや「M16というインフラ」とも言えるような状況であるだけに、アメリカ軍制式ライフルの座はM16あるいはM4シリーズということで当分揺るぎそうに無いようである。

    余談だが、M16は日本では劇画「ゴルゴ13」の主人公が愛用する銃として有名である。
    後に同作のファンから「どうして超一流のスナイパーがあんな欠陥品の銃を使っているのか」という指摘もあった*2

    狙撃については、不向きどころか高い精度が出せる資質を秘めた構造で、高度なカスタマイズによって100ヤードで1/2MOA前後の精度を出せる物もあり、アメリカ軍でも各種狙撃仕様が運用されている。
    ただ、おおむね射距離300〜500m以下の狙撃になら対応できるが、使用する弾薬の威力により、600m程度を越えるような狙撃には専用の大口径狙撃ライフルが使われる。

    関連:AR-18

  2. M16 SkyCleaner?
    第二次世界大戦時、M3ハーフトラックの後部にブローニングM212.7mm機関銃を4門搭載したアメリカ軍自走対空砲?
    航空優勢を獲得した後に登場したため、本来の対空戦闘に使われることは少なく、主に対歩兵戦闘に用いられ、朝鮮戦争では、兵士から「ミートチョッパーズ」(肉切り包丁)と呼ばれるほどの威力を発揮し、大きな戦果をあげた。
    また、創設当初の陸上自衛隊にも168両が供与された。
    戦後は、M19やM42「ダスター」といった本格的な対空戦車の採用で引退している。


*1 当時のアメリカは徴兵制を採っており、そうした兵士としての資質に欠ける人物まで戦場に送られた。
*2 作者が専門家に相談した際に「狙撃に用いる」という点を説明し忘れた為、当時最新鋭のM16を薦められたことが原因らしい。
  作品中に於いては、『様々な状況に対応可能な様、狙撃だけでなく近・中距離戦にも対応できるM16が選ばれた』という設定になっている。


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