【IED】(あいいーでぃ)

Improvised Explosive Device (即席爆発装置)

迫撃砲弾や手榴弾地雷などに適当な起爆装置を取り付けて作った即席の爆弾
路肩に設置して車両を攻撃する事が多いので「路肩爆弾」とも呼ばれている。
法治国家では火薬を民生用化学薬品から調合したり、余興用の花火などから抽出する事もある。

いわゆるブービートラップの一種で、瓦礫、死体、遺棄された車両などで偽装し、不用意に近づいた者を殺傷する。
起爆方法は千差万別で、簡易なものではワイヤーによる接触信管、複雑なものでは家電製品や携帯電話の部品を使ったリモコンまで様々。
爆発の破壊力もやはり千差万別で、拾った人間の手首を吹き飛ばす程度の小規模なものから、軽装甲車両や戦車さえ破壊する大規模なものまである。
また、(ショットシェルの要領で)ボールベアリングや金属片を仕込み、対人殺傷力を高めたものや「自己鍛造弾」の技術を用いたものまである。

あまりにも多彩なため、回避するための抜本的な対策は存在しない。
情報収集や探知機、動物などを使って事前に発見する事が最善の対策であるが、それは常に可能なわけではない。
処理中に起爆する事も珍しくないため、半ば消耗品として用意されたロボットによる遠隔操縦での調査・解体・撤去も行われている。
遠隔操作式に対しては妨害電波を発信して起爆装置を無効化する試みもある*1

発想自体は火薬そのものと同程度に古いが、有名になったのはアフガニスタンやイラクでゲリラが活用し始めてからである。
アメリカ軍に対するIEDを使った奇襲は、特に市街戦において大いに戦果を挙げ、常に流血を強いる事が可能な常套戦術と化しつつある。
このため、IEDの存在が疑われる戦場では「疑わしきは機関銃で薙ぎ払って誘爆させる」という極端な対策を取らざるを得なくなっている。

爆発に耐える強固な歩兵戦闘車、迅速・長距離から爆薬などを探知する化学センサーなどの新技術の登場が待たれる所である。
とはいえ、そうした新技術がどこまで有効かは疑問の余地があり、IEDという戦術が完全に無効化される可能性は今のところ見出されていない。

関連:MRAP


*1 無線を利用しない起爆装置には無意味なため被害抑止には繋がらなかった。また、地域住民の携帯電話などを使用不能にして不満を募らせるなどのデメリットもある。

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