【FN ハイパワー】(えふえぬ はいぱわー)

Fabrique Nationale Grande Puissance.(仏)
Fabrics National Hi-Power / Browning Hi-Power.(英)
ベルギーのファブリック・ナショナル社が製造する半自動式拳銃
口径は9mmルガーが基本であるが、近年は10mmショートを使用するものも存在する。

メーカー名を取って「FNハイパワー」と呼ばれるが、ジョン・ブローニングが基礎設計を担当したため、「ブローニング・ハイパワー」と呼ばれることも多い。*1
ブローニングの遺作として有名であるが、彼が試作した銃はストライカー撃発機構を備えたり、折り畳み銃床を標準装備したりするなど、当時としては前衛的すぎる設計であった。
これをFN社のサイーブ技師が現実的な設計へと変更して完成したが、それでも13発装填できる複列弾倉*2や、バレルリンクのないティルトバレルロッキングといった、革新的な機構を備えた銃であった。
これらの特徴はその後に登場した軍用拳銃のほとんどに踏襲されているため、近代軍用拳銃の祖と呼ばれている。
特に装弾数の多さからGrande Puissance(グランド・ピーザンス)と名づけられ、その英訳であるHi-Power(ハイパワー)の名前が広まった。

ベルギー軍やイギリス軍をはじめとして、多くの国が軍用拳銃として採用していた。
第二次世界大戦中は、生産設備を鹵獲したドイツが使っていた一方、カナダに亡命した技術者の手により、ジョン・イングリス社においてライセンス生産されていたこともあった。
SASや、日本の海上保安庁が使用していたことでも知られる。
世界的に人気が高く、ハンガリーやインドネシアなどではデッドコピー品も生産されていた。

しかしトリガーシステムがシングルアクションであるため、ダブルアクション拳銃が主流である現代においてはその姿を消しつつある。
ハイパワーをダブルアクション化した HP-DA もつくられたが、他の銃が普及した後であったため広まらなかった。
また弾倉を外すと発射できなくなるマガジン・セフティを備えているが、弾倉交換時に隙が生じ、また弾倉の表面が磨耗するという問題があり、この機構も軍用拳銃の主流とはならなかった*3

主なバリエーション

  • M1935:ベルギー軍制式採用品
  • L9A1:イギリス軍制式採用品
  • Mark3:AFPBを取り入れて安全性を高めたタイプ
  • コンペティション: 射撃競技用に大型の照準器を備えたもの。
  • プラクティカル: 使い勝手や耐久性を考慮し、ラバーグリップやクロムめっきを取り入れたもの

*1 後にアメリカへ輸出された際には、ブローニング社が販売を担当した
*2 それでいてグリップが細く握りやすいため、現在でも評価が高い。
*3 実際に、マガジン・セフティを外して納入されることも。

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