【FAL】(ふぁる)

FN FAL*1
ベルギーのFN社が1948年に開発した自動小銃
西側諸国の第1世代突撃銃の中でもごく初期のライフルで、現在のカテゴライズではバトルライフルに相当する。

AK-47よりやや遅れるが、共産圏を除けば最古の突撃銃のひとつ。
セミオート射撃の命中精度に優れ、レシーバー(機関部)は少々コスト高ながら削り出し加工で製造され、工具なしで主要部品を分解できるなど、耐久性・整備性も良好。
パーツのクリアランスを極めて小さくすることで動作の確実性を優先する精密な構造のため砂塵には弱いが、他の環境では酷使してもおおむねよく耐える。
当時の傑作であり、1980年代までNATO諸国など多くの国で正式採用されていた。
ただし、フルオート射撃における制御性は決して芳しくない。

開発途中で北大西洋条約機構の結成に伴う兵站整理が行われ、想定外の弾丸を使うよう設計変更が行われた。
結果、威力が大きくなりすぎ、単発射撃に偏った性能に仕上がっている。

ベトナム戦争戦訓から突撃銃の小口径化が推進されると共に、需要を失っていった。
しかし近年では有効射程の関係からバトルライフルの需要が生じ、再び必要とされ始めている。

スペックデータ

全長1,090mm(STD)
736〜990mm(Para)
銃身長533mm(STD)
431mm(Para)
重量4,325g(STD)
3,770g(Para)
施条方式6条右転
作動・閉鎖方式ショートストロークピストン式ガス圧作動・ティルトボルト式
発射速度650〜700発/分
装弾数20発(箱型弾倉)
使用弾薬7.62mm×51NATO弾


バリエーション

  • FALO:
    LAR-HB(ヘビーバレル)とも呼ばれ、肉厚銃身と二脚を追加し、30連発マガジンを装備した分隊支援火器仕様。
    プラスチック製銃床を装備したFAL 50.41型と木製銃床を装備したFAL 50.42型が存在する。

  • FAL 50.61:
    FAL Para(パラトルーパー)と呼ばれる、空挺部隊向け金属製折畳み式銃床装備型。
    • FAL 50.63:
      上記のFAL 50.61を基に、銃身長を458mm、もしくは436mmに短縮したカービンタイプ。
    • FAL 50.64:
      FAL 50.61を基に、ロアレシーバーをアルミニウム合金製に変更した改良型。

  • LARコマーシャルモデル:
    米国輸出向けに、FAL(LAR)やFALO(LAR-HB)のフルオート機構を除去したモデル。

  • G1:
    ドイツ連邦軍に採用されたモデル。
    ベルギー政府とFN社は「西ドイツにFN FALのライセンスを与えれば、再び我々ベルギーがFN FALで攻撃されるかもしれない」という理由で、西ドイツでのライセンス生産を認めなかった。
    そのため、ドイツ連邦軍はトライアルを繰り返し、G2(SIG SG510)を経て、G3(H&K HK31)を採用した。

  • L1A1:
    イギリスによって再設計されたモデル。L1A1は採用名で、正式にはSLR(Self Loading Rifle)と呼ばれる。
    フルオート連射機能を省略し、泥や塵を排出するためボルトキャリアにスリットを施し、66mmライフル・グレネードを銃口に装着し発射することが可能。
    イギリスではヤード・ポンド法を施行していたため、インチに設計し直されおり、そのためメートル設計のFALと部品の互換性が無い。
    • 1A:
      インドがFN社のライセンスを得ずに、無許可で開発したモデル。
      旧宗主国イギリスのSLRに基づいており、イシャポール造兵廠で生産された。

  • C1:
    カナダに採用されたモデル。L1A1同様インチ設計でフルオート機能を持たない。

  • Sturmgewehr 58(StG 58):
    1958年にオーストリアでは採用された、銃口にライフルグレネード射出用スリットが多数施されたモデル。
    前期型はFN社で生産され、後期型はステアー社で生産された。

  • T48E1:
    アメリカ軍の制式アサルトライフル選定のために、米国内で2,000挺限定生産したFALに与えられた形式番号。
    M14との比較試験を実施した。

  • SA58:
    米国DSA社が生産するカスタムモデル。
    G1、Stg58、T48を模したモデルや、SA58Tactical Seriesでは、アッパーレシーバーに光学機器用マウントレールが標準装備され、RASが装備されているカービンSA58 Eliteや、さらに短くしたSA58 OSW、狙撃銃のSA58 SPRなどがある。
  • インベル MD:
    ブラジルの国営軍需企業であるインベル社が開発したアサルトライフル。
    過去にFALを製造していた経験を元に1982年から開発を開始し、FALの代替として制式化。
    ブラジル軍に配備された。
    5.56×45mm(.223NATO))とNATO標準のSTANAGマガジンを使用し、そのために全長がFALより90mmほど短くなっている。

  • SAR48:
    インベル社がスプリングフィールドアーモリー社を介して米国市場に投入したセミオートモデル。
    ハンドガードの形状がイスラエルIMI社製と酷似し、グリップが木製、通気口部分が金属製となっている。

  • FM FAL:
    アルゼンチンの国営造兵廠であるFM社がライセンス生産したもの。
    フォークランド紛争にも使用され、敵対するアルゼンチンとイギリスの双方がFALを使用し、戦闘を行っている。


*1 Fusil Automatique Leger:フランス語で「軽自動小銃」の意。輸出向けモデルでは「LAR(Light Automatic Rifle)」とマーキングされる。

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