【F-86】(えふはちじゅうろく)

North American F-86"Sabre(セイバー)"

ノースアメリカン社が1940年代に開発した、後退翼を持つ黎明期のジェット戦闘機
当初、直線翼による設計が行われていたが、第二次世界大戦終結後のドイツからの戦利品の中に後退翼における空力データが発見されたため、その有効性に着目した同社は急遽後退翼に設計変更した。
固定武装として12.7mm機関銃6門を搭載、その他に赤外線探知式の空対空ミサイルを最大4発装備できる。

1950年に勃発した朝鮮戦争にてA型が実戦初参加。
当初はパイロットの技量もあり、ライバルのMiG-15を圧倒したが、上昇力、旋回性能、耐久力において劣っていた。
MiG-15に匹敵・もしくは上回る性能を得たのは、後に配備されるF型からである。
また同機は、金門馬祖上空戦において歴史上初めて空対空ミサイルによる戦果を挙げた。

わが国では、航空自衛隊発足当初の主力戦闘機として導入され、「旭光」「ハチロク」などとも呼ばれた。
特に運動性が良好で、「当時ハチロクに乗れなかった奴はかわいそうだ」と異口同音に語られるほどである。
空自では、機首下に対空ロケットランチャーを装備した全天候迎撃機型のD型と昼間戦闘機(後に支援戦闘機として運用された)F型、F型を改造したRF-86F偵察機が配備されていた。
中にはブルーインパルス用に改修された機体も存在し*1、特に1964年の東京オリンピックで、快晴という好条件に恵まれた中で五輪を描いた実績は現在でも語り草である。

f86a.jpg

(F-86A)

スペックデータ(F-86F-40)

乗員1名/2名(複座型)
全長11.4m
全高4.5m
翼幅11.3m
主翼面積29.11
空虚重量5,046kg
全備重量6,894kg
最大離陸重量8,234kg
内部燃料積載量1,650L(437 USgal)
エンジンGE J47-GE-27?ターボジェット×1基
推力26.3kN(5,910lbf)
最大速度1,091km/h(高度35,000ft時)
失速速度200km/h
航続距離2,454km
実用上昇限度15,100m(戦闘重量)
海面上昇率45.72m/s
翼面荷重236.7kg/
揚抗力比15.1
推力重量比0.42
固定武装AN/M3 12.7mm機銃×6挺(装弾数1,800発)
兵装4箇所のハードポイントに以下の兵装を2,400kgまで搭載可能。
1,000kg爆弾×2発
戦術核兵器
マトラロケット弾ポッド×2基(SENB 68mmロケット弾×18発)
200 USgal(760l)ドロップタンク×2基

主な量産型(カッコ内は生産・改修機数)

ノース・アメリカン社製

  • XP-86(3機):
    試作機。ノースアメリカン・モデルNA-140。
    試験飛行中に急降下で音速を突破したことが何度かあり、一説には世界初の音速突破を達成した実験機ベルX-1?よりも先に音速を突破したのではないか、という説も存在している。

  • F-86A(554機):
    最初の量産型。旧称P-86A。
    機体命名法の変更に伴い、名称も変更された。

  • RF-86A(11機):
    A型の機関銃を外し、カメラを搭載した写真偵察機型。

  • F-86D(2,504機):
    機首に大型のレーダーを搭載した全天候戦闘機型。
    通称「セイバードッグ*2」。
    大幅な設計変更が行われ、他のF-86より鋭角になった後退翼アフターバーナー付きエンジンが装備された。
    また、武装が12.7mm機銃から「マイティ・マウス」24連装70mmロケット弾用引き込み型ランチャーに変更されている。
    なお、フィアット社が開発したFIAT G91は本機の図面を参考に開発された。

  • F-86E(456機):
    A型の改良型。
    全遊動式水平尾翼を装備し、機動性が向上した。
    また、艦上機型・FJ-2?のベースになった機体でもある。
    E-1、E-5、E-10、E-15のサブタイプがある。

  • F-86E(M):
    NATO諸国向けの輸出型。

  • QF-86E:
    セイバーMk.5を無人標的機に改造した型。

  • F-86F(1,800機以上):
    E型の改良型。
    エンジンをJ47-GE-27(推力2.7t)に強化し「6-3翼」という新しい主翼*3を装備した、セイバーの決定版ともいえる型。
    F-1、F-5、F-10、F-20、F-25、F-26、F-30などのサブタイプがある。
    三菱重工でもライセンス生産され、航空自衛隊では「旭光(きょっこう)」という愛称で呼ばれた。

  • RF-86F(18機(航空自衛隊)):
    F型を写真偵察機に改修したもの。

  • QF-86F(50機):
    航空自衛隊用途廃棄となってアメリカに引き取られたF型を無人標的機に改造したもの。

  • TF-86F(2機(F-30型及びF-35型)):
    複座練習機型。計画中止で不採用になった。

  • F-86G(406機):
    D型にJ47-GE-33エンジンを搭載した型。後にD-60型に改名された。

  • YF-86H(2機):
    戦闘爆撃機型試作機。

  • F-86H(473機):
    低高度爆撃システム(LABS)や核爆弾投下システムを装備する戦闘爆撃機型。
    エンジンを従来のJ47からJ73-GE-3(推力4.0t)に換装し、燃料タンクを増加した。
    これにより胴体が太くなったため「ホッグセイバー」と呼ばれた。

    • QF-86H(29機):
      H型の無人標的機型。

  • F-86J:
    カナダ空軍向けに、F-86A-5-NAにオレンダ社製のエンジンを搭載した型。
    計画中止により不採用。

  • YF-86K(2機):
    輸出型試作機。

  • F-86K(120機(ノースアメリカン)・221機(フィアット)):
    D型の輸出型。
    武装が20mm機関砲に変更されたほか、電子機器がダウングレードされている。

  • F-86L(981機):
    D型に迎撃用データリンクSAGE)をはじめとする電子機器の改良や主翼の改良を行った能力向上型。

  • FJ-2(F-1)「フューリ」:
    F-86がベースのアメリカ海兵隊向け艦上機型。
    主翼折り畳み機構やアレスティングフックを追加し、20mm機関砲を4門に変更している。

  • FJ-3(F-1C)「フューリ」:
    エンジンをライトJ65-W-2ターボジェットに換装したアメリカ海軍向け艦上機型。
    この型式が空母で運用された。

  • FJ-3M(MF-1C):
    全天候戦闘機型。
    レドームが新設され対レーダーミサイルの運用能力が付与された。

  • FJ-3D(DF-1C):
    RGM-6(SSM-N-8)「レギュラス」巡航ミサイルの誘導母機。

  • FJ-3D2(DF-1D):
    F9F-6K「クーガー」無人標的機の誘導母機。

  • FJ-4(F-1E)「フューリ」?
    大幅改良型。詳しくは項を参照。

カナディア社製

  • CL-13 セイバーMk.1:
    試作型。F-86A-5型相当。

  • CL-13 セイバーMk.2(438機):
    F-86E-1相当の機体。
    アメリカ空軍でも朝鮮戦争での損耗補充でF-86E-6として60機購入した。

  • CL-13 セイバーMk.3:
    オレンダターボジェットエンジンのテストベッド機。

  • CL-13 セイバーMk.4(438機):
    Mk.2を英空軍向けに量産した機体。F-86E-10型相当。
    英空軍では「セイバーF.4」と呼ばれた。
    後に余剰機がF-86E(M)の名称で売却された。

  • CL-13A セイバーMk.5(370機):
    オレンダ10エンジン(推力28.91kN)と「6-3翼」を搭載したF型相当の機体。
    余剰機はアメリカ陸軍に売却され、QF-86E無人標的機として使用された。

  • CL-13A セイバーMk.6(655機):
    Mk.5のエンジンをオレンダ14(推力32.35kN)に換装し、主翼に前翼スラットを再装備した機体。

コモンウェルス・エアクラフト(CA)社製

  • CA-26 セイバー:
    試作1号機。

  • CA-27 セイバーMk.30:
    オーストラリア軍向けに、ロールス・ロイス「エイヴォン20ターボジェットを搭載した機体。
    武装がアデン30mm機関砲×2門に変更されている。

  • CA-27セイバーMk.31:
    Mk.30の主翼を「6-3翼」に変更したF型相当の機体。

  • CA-27セイバーMk.32:
    エンジンをエイヴォン26(推力33.4kN)に換装し、主翼にハードポイントを追加した機体。


*1 ちなみにこの改修機が、空自で最後まで運用されたF-86になった。
*2 対空レーダーを備えたためにレドームが飛び出して鼻のように見える事から。
*3 主翼の前縁を6インチ、翼端を3インチ延長し、前縁スラットを廃止、境界翼としたもの。

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