【F-22】(えふにじゅうに)

ロッキードマーチンがF-15の後継として開発した戦闘機で、愛称はラプター。
ジェット戦闘機の世代区分によれば「第五世代」に分類される機体である。

同時期に開発の始まった、スウェーデンのグリペンやフランスのラファール、EUのタイフーンが、F-16F/A-18のような小型で安価なマルチロールファイターであるのに対し、本機はF-15の開発目標であった、
「コストは度外視し、あらゆる状況下で、あらゆる敵を圧倒し得る世界最強の戦闘機」
という開発理念を色濃く残している。

本機の原型機「YF-22」を含めた新型戦闘機開発計画であるATF(次世代戦術戦闘機)計画は1981年にスタートし、メーカー7社が競争試作に参加した。
要求は「高い運動性能、超音速巡航能力、ステルス性、STOL性を持つ戦闘機」。(STOL性については後に取り下げられた。)
結果、ロッキード(ゼネラル・ダイナミクス、ボーイングが協力)のYF-22と、ノースロップ(マクダネル・ダグラスが協力)のYF-23が候補としてあがったが、1991年4月、比較審査の結果ロッキード案を採用とすることに決定。
このYF-22を生産仕様として再設計したものがF-22であり、2002年9月17日に名称をF/A-22に変更したものの、2005年12月に再度F-22へ変更した。

ミリタリー推力でも10,000kgを越える推力を誇るP&W/F-119-PW-100エンジンはマッハ1.58での超音速巡航を実現、またベクタードノズルを装備し、高い運動性も同時に確保している。
レーダー反射面積も非常に小さく、従来機に比べてレーダーに捕らえれる距離は1/10とまで言われている。
アビオニクスは、旧来では独立していた飛行制御・電子戦・エアデータのコンピュータを、ほぼすべて超高性能の光ファイバー通信により統合化。
それにより得られる情報を的確にパイロットに伝える事が可能となっている。
またステルス性維持のため、武装はすべてウェポンベイに収納されるものの、6発のAIM-120Cと2発のAIM-9が装備可能と、F-15と同等数の武装を搭載可能である。
なお、ステルス性をさほど要求されない作戦環境においては、レーダー反射面積を犠牲にするものの主翼下ハードポイントを増設、既存機のように各種兵装を搭載することもできる。(この状況下においてもレーダー反射面積は既存機に比し低い。)

主翼下ハードポイントを使用しない場合、対地攻撃用の爆弾の搭載量は低く、攻撃機としての打撃力の少なさは否めない。
そのためウェポンベイを拡大、主翼を無尾翼デルタ翼に変更して垂直尾翼を廃止した戦闘爆撃機モデル、FB-22「ストライクラプター」の開発が検討された。

このような妥協のない設計により、アメリカ軍をして「Air Dominance Fighter:航空支配戦闘機」の名を冠させた本機ではあるが、その高性能を達成する為、開発費が非常に高騰。
また、機体の必要性の割には高価なため調達数削減が相次ぎ、当初750機だった発注数は648機→438機→339機とほぼ半数以下となる。*1
それにより量産によるコスト減少率が低くなり更なる単価高騰、という悪循環に陥ってしまった。
予算化を先送りしたツケもあり、初期生産の1機当りのコストは1億2000万ドル(約140億円)、開発費も含めると3億6100万ドル(約420億円)と、戦闘機としては常識外れの額となった。
また、機密扱いの技術を多く使用しているため、現在のところアメリカ政府により輸出禁止とされている。
現在航空自衛隊F-4EJ後継機にF-22の導入を検討しているが、上記の輸出禁止を含め政治的課題が山積みのため先行きは不透明である。*2

なお、2004年12月20日に14号機が(1992年4月25日にエドワーズ空軍基地にて低速・低空進入テスト中のYF-22が異常振動による失速で墜落したのを含めば2度目)離陸直後に墜落し、初の損失となった。

2005年12月15日に、米空軍ラングレー基地の第1戦闘航空団第27戦闘飛行隊(1FW 27FS)に初めて実戦配備された。
尚、F-22は実戦での戦果が無いため、どの程度の戦闘力を持っているは不明だが、現在のところ、アラスカで行われたF-22が参加した最初の大きな演習「ノーザンエッジ2006」において、F-22飛行隊はSu-27戦闘機およびSu-30戦闘機の飛行特性を演じる仮想敵機を相手に、118対0のキルレシオを達成している。

スペックデータ

全長:18.92m
全高:5.08m
翼幅:13.56m
翼面積:78.04m²
空虚重量:14,379kg
運用時重量:25,107kg
最大離陸重量:36,288kg
エンジン:P&W製 F119-PW-100 A/B付きターボファンエンジン×2
エンジン推力:156kN(A/B使用時)
最大速度:M2.25(A/B使用時)/M1.82(超音速巡航)/M1.40(A/B使用時、海面高度)
航続距離:2,775km
実用上昇限度: 15,240m
上昇率: 機密 (非公表)
無給油戦闘行動半径:450nm
武装
M61?A2 20mm機関砲(弾数480発)
AIM-120C AMRAAM × 6 (AIM-120Aの場合4発)
AIM-9L/M サイドワインダー × 2
AIM-9X サイドワインダー2000 (JHMCS対応機の場合)×2
GBU-32 JDAM(1,000ポンドGPS/INS誘導爆弾)× 2
GBU-39 SDB(285ポンドGPS/INS誘導爆弾)× 8

バリエーション

  • YF-22
    ATF計画で開発された試作機。量産機とは主翼後退角等の細部が異なる。2機製造された。
    エンジンは1号機ではジェネラル・エレクトリック社の「YF120-GE-100」を、2号機ではプラット&ホイットニー社の「YF119-PW-100」がそれぞれ搭載されており、選考の結果2号機が採用され基本型となる。

  • F-22(F-22A,F/A-22)
    基本型。総計187機が製造された。
    「F-22A」は複座型であるF-22Bの開発を予定していた頃の名残であるが、現在でもF-22Aと表記される場合がある。
    「F/A-22」は空対地攻撃能力の比重の増大を受けて2002年9月に攻撃機という意味のA(Attacker)が付け加えられた名称。しかし、2005年12月に初度作戦能力を得る際に再度名称をF-22(A)へと戻している。

    • Block 1
      初期量産型。EMD試験機でもある1号機、及び2号機の2機が製造された。

    • Block 2
      EMD試験機。3号機の1機が製造された。

    • Block 10
      4号機から9号機(EMD試験機)、及び第1期量産準備試験機である10号機から11号機、第2期量産準備試験機である12号機から40号機までの37機が製造された。

    • Block 20
      本格的な量産仕様。41号機から107号機まで67機製造。

    • Block 30
      現在の最新仕様で、108号機から187号機までの80機製造。

  • F-22B
    機種転換訓練などに用いられる複座型。
    冷戦の終結に伴う軍備・予算縮小や開発費の高騰、シミュレータでの代用が可能となったために1996年に開発中止。

  • F-22J-Ex
    海外(主に日本)への輸出仕様として構想された型。
    連邦政府の海外輸出禁止政策に対処するため、性能・装備を原型よりダウングレードして生産することとしていた。
    原案は、2006年2月にロッキード社がF-22の対日輸出に関してアメリカ空軍高官との協議を持った際に作成された。

  • FB-22
    ロッキード・マーティン社がアメリカ空軍に提案している戦闘爆撃機型。
    愛称「ストライクラプター」

  • F-22N
    アメリカ海軍向けの艦上戦闘機型。
    元々はNATF(Naval Advanced Tactical Fighter)計画として開発が進められたが、後にATFと計画を一本化した。
    F-22と機体部品を共通させ、可変翼を有するとされた。
    546機の受注が見込まれていたが、1991年に計画中止。
IMG_4502.jpg

*1 その後、2009年4月6日にゲーツ国防長官が「2010年度以後、新規発注を停止する」と発表。これにより、最終的な生産機数は187機となる。
*2 更に米軍での新規調達も打ち切りの方向に進んでいるほか、F-35の導入を打診していることから、導入が行われる可能性は限りなく低くなってしまっている。

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