【F-15】(えふじゅうご)

McDonnell? Douglas F-15 Eagle(イーグル)
マクダネル・ダグラス社が開発した、アメリカ軍ではF-86以来の純制空戦闘機である。
コストは度外視し、あらゆる状況下でどんな敵機にも勝利できる能力を備えることを目的に「1ドルたりとも制空以外の能力に金をかけてはならない」と言われ、完璧なる制空戦闘機(Air Superiority Fighter)を目指して開発された。

1973年に初飛行し、ミサイル万能時代に失われた空中戦機動?能力と、当時としては飛びぬけた目視外射程戦闘能力をもって生まれた。
また世界で初めて推力重量比が1を超える強力なエンジンを装備、記録挑戦用のストリークイーグルは数々の上昇力世界記録を打ち立てた。(エンジンの推力が戦闘機の重量より大きいため、低空からほとんどロケットのように上昇できる。)
現在ではやや旧式化した感があるものの、近代化改修を続けており、最新のマルチロールファイターに比べても同等以上に渡り合える能力を備えている。
1999年には実用戦闘機として初めてアクティブフェイズドアレイレーダーを搭載した。
その能力は実戦で遺憾なく発揮されており、2003年現在で101機の航空機撃墜し、空対空戦闘における損害はゼロであると言われている。
ある戦闘機が、訓練においてF-15を'撃墜'した。という話が良く出回るが、逆を返せばこれはF-15を撃墜したことが自慢になるという事であって、ある意味F-15にとって勲章に近いエピソードであろう。

純粋な制空戦闘機として開発されたF-15であったが、大きな機体に見合う発展性は非常に高く、後に高度な空中戦能力を大きく削ぐことなく対地攻撃能力を付加した、F-15E StrikeEAGLE(ストライクイーグル)というマルチロールファイターも誕生している。
このF-15Eは外見はF-15Dにコンフォーマル燃料タンク?をつけただけのように見えるが、内部構造や製造工程にも大きく手が入れられ、従来のF-15との共通部分はエンジンアビオニクスをのぞき、機体構造面にはほとんどない。
通常、マルチロールファイター戦闘攻撃機に分類されるが、F-15Eは戦闘爆撃機に分類され、退役したF-111の後継機として採用された。しかし、F-15Eは前任機に比べ翼面加重が小さい事から、低空侵攻時の安定性はやや劣るものと考えられ、また、搭載量の少なさも指摘されている。
F-15Eは世界中の戦闘機の中で最も多くの兵装を搭載でき、最も航続距離が長く、アメリカ空軍の使用する兵装の全てを搭載することができると言っても過言ではない。
その攻撃力は湾岸戦争を始め、ユーゴスラビア戦争?アフガン戦争?イラク戦争?で実証されており、特に湾岸戦争ではF-111と並び精密爆撃?を実施できる数少ない戦闘機の1つであった。
ある、夜間に行われた近接航空支援任務において8発のレーザー誘導爆弾を搭載した2機のF-15Eのエレメントは16発の爆弾で16車両に直撃弾を与え、また別のF-15Eはホバリング中のヒューズ500ヘリコプターに直撃弾を与えたという。
なお「ストライクイーグル」はマグダネル・ダグラス?社が付けたもので、正式な愛称ではなく、「マッド・ヘン」(沼地に住む鳥)や「ビーグル」(ボマー・イーグルの略)などのあだ名で呼ばれることもある。

名実共に20世紀世界最高の戦闘機も、大きな欠点が一つだけある。
それは現代の戦闘機に最も必要とされる要素の一つ、「コスト・パフォーマンス」である。
強力なエンジンと高性能のレーダーを装備、機体の25%以上に高額なチタニウムを使用した結果コストの増大を招き、アメリカ軍ですら十分な数を揃えることが不可能という事態に陥ってしまった。
アメリカ軍以外で本機を採用できたのは、当時防衛費世界3位の航空自衛隊、最新鋭の装備が必要なイスラエル軍、オイルマネーに潤うサウジアラビア軍?などほんの一部の空軍だけであった。
しかし、僅かな採用国とは言っても2004年現在既に1500機以上が生産されており、量産効果におけるコストダウンも実現していることから、韓国がF-15Kの採用を決定しており、シンガポールでは現在FXにおいてF-15Tが筆頭候補である。

わが国の航空自衛隊においては、F-104J、F-4EJの後継としてF-15C/DのマイナーチェンジともいえるF-15J/DJが203機がライセンス国産方式で導入され、現在も一線で活躍している。
また、一部の機にはMSIP?と呼ばれる近代化改修が施されたほか、2004年現在では、このMSIP?機を対象としてレーダーセントラルコンピューター?、統合電子戦システムを中心とした新たな近代化改修が進行中である。
また、これとは別に新世代の打ちっぱなし目視外射程空対空ミサイルである99式空対空誘導弾(AAM-4)の搭載改修が進められている。

上記の改修の恩恵を受けられない非MSIP?機の扱いが今後の課題であり、幾つかのプランが提示されているが、MSIP?機の近代化改修で降ろしたアビオニクスを非MSIP?機に搭載し、MSIP?機同等の機体にするという案が最も有力である。
しかし、これでは「生産終了した補修部品の枯渇に対処する」という近代化改修の大きな目的の1つが達成されないわけで、非常に悩ましい問題である。

2004年現在検討が進められている、自衛隊機構と装備の大改編(実質縮小だが)の構想に伴い、F-15の一部を偵察・攻撃などの機能も付与したマルチロールファイターとする構想が持ち上がっている。
現に技術研究本部(TRDI)が中心となって、F-15を母機に想定した空中発進UAVや、600gal増槽より一回り大きなエスコートECMポッドの試験が進められており、マルチロールファイター化の暁にはこれらの成果が取り込まれるものと考えられる。
また、F-4EJの後継機及びF-2調達中止に伴う代替機候補にF-15Eの名前も挙がっている。

参照:http://www.masdf.com/crm/eaglekilllist.html (F-15全撃墜機リスト)

(Y)F-15A カテゴリーI:F-15試作機。

(Y)F-15A カテゴリーII:F-15全規模開発(FSD)機。

TF-15A:F-15試作機の複座型。後にF-15Bに改称。

F-15A:初期型の単座型。

F-15B:初期型の複座型。

F-15C:燃料搭載量などが向上した改良型。現在の主力。   

F-15D:F-15Cの複座型。

F-15E:攻撃機としての能力を付加された型。ストライクイーグル。

F-15F:F-15Eの単座型。実機は無し。

F-15G:ギリシャ提案型。同国はタイフーンを採用したため実現せず。

F-15H:F-15Eの空対地能力削減型。実現せず。

F-15I:イスラエル向けF-15E。愛称はラーム

F-15J:F-15Cの航空自衛隊向け三菱重工?によるライセンス生産型。
搭載ECM関連機器の輸出をアメリカが認めなかった為、日本独自で開発し装備している。

F-15DJ:F-15Jの複座型。主に飛行教導隊が使用している。

F-15K:韓国向けF-15E。初めて戦術電子戦システムが輸出される。

F-15L:イスラエル向けF-15Eの空対空特化仕様。実現せず。

F-15N:アメリカ海軍向けF-15。F-14の空軍型に対抗し艦上戦闘機として海軍に提案。

F-15S:サウジアラビア向けF-15E。やや空対地能力に劣る。

F-15SE:アメリカ空軍向け単座型F-15E。実現せず。

F-15S/MTD:滑走路が破壊された場合を想定しての、STOL研究実験機。
F-15BにF/A-18の水平尾翼をカナードとして取り付けたもので、後にスラストリバーサー、二次元推力変向ノズルも装備された。

F-15T:シンガポール向けF-15E。現在FXでコンペテンション中。

F-15U:アラブ首長国連邦向けF-15E。同国はF-16を採用したため実現せず。

NF-15B ACTIVE:F-15S/MTDに新型の三次元推力変向ノズル(PYBBN)を搭載した、主に超音速時における推力変向の研究用機体。

関連:ストリークイーグル

F-15.jpg
Photo: USAF  F-15E


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