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*&ruby(いーとっぷす){【ETOPS】};
Extended Twin-engine OPerationS の略で、双発機が洋上飛行をする際の制限のこと。~
*&ruby(いーとっぷす){【ETOPS】}; [#r2d183ed]
Extended-range Twin-engine Operation Performance Standards.~
>日本の国土交通省では「[[双発機]]による長距離進出運航」と呼び、実施承認審査基準を定めている。

[[双発機]]が洋上飛行をする際に課せられる制限。~
[[片肺状態>片肺]]([[エンジン]]のうち1基の損壊)に陥った場合に、一定時間内に[[空港]]・[[飛行場]]への[[緊急着陸>ダイバート]]を行う事を要求する。~
飛行中のどの瞬間に事故が発生した場合でも必ず[[空港]]・[[飛行場]]に到達可能でなければならないため、事実上の航路制限となる。

>実際、[[飛行機]]が公海上のどこかに着水する事を強いられた場合、その乗客乗員が[[捜索救難]]の到着まで生存できる可能性は極めて低い。

具体的な制限時間は緊急着陸までに[[片肺]]でどれだけ航続できるかによって決まり、それは機体性能によって異なる。~
これは「ETOPS」の後に分数を表記して示す事が多い。~
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双発機で長距離の洋上(特に太平洋・大西洋)を飛行する際、[[エンジン]]が1基停止すれば残りの1基で飛ばなければならず、[[墜落]]の危険が大きくなるため「双発機の[[エンジン]]が1基停止した際、60分以内に代替の[[空港]]へ緊急[[着陸]]することが可能なルートを取って飛行しなければならない」という規定が定められた。~
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これが「ETOPS」の始まりで、最初の規定では「60分以内に代替の[[空港]]へ緊急[[着陸]]することが可能なルートを取ること」とされ、この規定は「ETOPS60」と呼ぶ。~
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そのため、双発機による洋上飛行は実質不可能とされ、3発[[エンジン]]の[[DC-10]]・[[L-1011]]トライスター、4発[[エンジン]]の[[B707]]・[[B747]]・[[DC-8]]などでしか洋上の飛行ができなかった。
当初は「ETOPS60」と定められ、この60分という制限は事実上、海上横断航路を[[双発機]]で飛ぶ事を禁止する状況となった。~
しかし、近年では機体の信頼性と[[エンジン]][[推力]]の飛躍的な向上を受け、「ETOPS120」「ETOPS180」などと段階的に規制緩和されている((ただし、これらの認可は機体の1機ごとに定められるため、航空会社によっては同型式の機体でも「ETOPS認可」「ETOPS未認可」の機体が混在することがある。))。~
>例えば、[[A350-900>A350]]は「ETOPS370」の認可を受けている。~
これは、370分(6時間10分)以内に[[代替空港へ着陸>ダイバート]]できる航路を取ることができるという意味である。

しかし、近年では機体や[[エンジン]]の信頼性や単発での[[推力]]が飛躍的に向上したことに伴い「ETOPS60」から「ETOPS120」「ETOPS180」と段階的に規制も緩和されつつあり、最高では「ETOPS207」と呼ばれ「207分(3時間27分)以内に代替の[[空港]]へ緊急[[着陸]]することが可能なルートを取る」ようにされるようになった。~
これにより、太平洋・大西洋線でも双発機による[[フライト]]が可能となって経済性が向上したことにより、先述の[[DC-10]]・[[L-1011]]トライスター・[[B707]]・[[B747]]・[[DC-8]]などに代わって双発の[[B777]]や[[A330]]が主力として利用されるようになりつつある。
こうした規制緩和によって、[[双発機]]でも事実上全ての((例えば、南極大陸を縦断しようとすればさすがに制限超過する。))航路を運行できるようになった。~
このため、[[コスト・パフォーマンス]]で[[双発機]]に劣る[[三発・四発の機体>多発機]]は航空運輸の現場から駆逐されつつある((世界の航空機生産大手である[[ボーイング]]・[[エアバス>エアバス(企業)]]はいずれも[[多発機]]の生産を終了している(エアバス[[A380]]は2019年、ボーイング[[B747-8]]は2022年に生産終了)。))。~

ETOPSの対策として、[[エアバス]]社では陸上向きの[[フライト]]に双発機([[A300]]、[[A310]]、[[A320]]、[[A330]])を、洋上向きの[[フライト]]に4発エンジンの[[A340]]、[[A380]]を販売するよう重点を置いている。
**空港要件 [#ja827cd1]
[[双発機]]の長距離飛行には、機体のみならず、[[空港]]・[[飛行場]]にもそれに見合った要件が必要になってくる。~
航路周辺の[[緊急着陸>ダイバート]]に適した空港は「Adequate Airport([[着陸]]可能飛行場)」と呼ばれ、運用時間や[[飛行場]]諸元から安全に[[着陸]]できるものである必要がある。~
また、さらに上位の要件を満たす空港は「Suitable Airport([[着陸]]に適した飛行場)」と呼ばれ、十分な[[滑走路]]長や[[着陸]]に適した気象状態、厳しい救援・消火体制((少なくともICAOの「カテゴリー4」以上を満たしていなければならない。))が要求される。~
ETOPSの運航に当たっては、Suitable Airportの中から、エンルート用の[[代替>ダイバート]]空港を選定しなければならない、としている。
>たとえばETOPS207の場合、Suitable Airportの救援・消火体制として[[ICAO(国際民間航空機関)>国際民間航空機関]]の「カテゴリー7」以上の能力が必要で、さらに180分圏内にAdequate Airportを別途確保しなければならない、としている。


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