【DC-9】(でぃーしーないん)

(McDonnell?)Douglas DC-9.

アメリカのダグラス・エアクラフト社(及び、その後継となった各社)が1960年代〜2000年代に開発・生産した双発小型のナローボディジェット旅客機
胴体後部につけたターボファンエンジンT尾翼という、ライバル・ボーイング社製のB727に似た形状*1をしていた。

1963年に開発開始。
当時のアメリカ国内線で主流だった*2レシプロターボプロップ旅客機*3を代替する、短距離路線用機体として設計された。
生産分担予定のパートナー企業にも設計まで委託するなど分散開発を徹底、1965年に初飛行を達成。

完成後はデルタ航空に納入され、抜群の信頼性と経済性が評価された。
次第に大型化されつつ、ダグラス時代だけで976機の大量受注にこぎつけた。
しかし、本機があまりにも売れすぎたことによってダグラス社は資材枯渇・資金不足に陥り、後にマクダネル社との合併に至るきっかけとなった。

当時、ダグラスはDC-8及び本機の大量のバックオーダーを抱え、9〜18ヶ月もの納入遅れを起こして発注元の航空会社に違約金を払っていたほどだった。
そのため、マクダネルとの合併前の時点において「1年以内に破産する」とみられていたほどだという。

合併後のマクダネル・ダグラスは大型化・近代化した「MD-80シリーズ」、その改良型の「MD-90シリーズ」を製造した。
しかし、そのマクダネル・ダグラスも1997年にボーイングに吸収合併。
当時開発中だった「MD-95」はボーイング社の製品「B717」として生産され、2006年まで生産が続けられた。
最終的には各シリーズあわせて2,400機以上が生産されている*4

日本では「東亜国内航空」がDC-9-30/-40/-50*5を導入し、後継となった日本エアシステム及びハーレクィンエアでもMD-81/87/90を用いていたが、日本航空との経営統合後の2010年までに全機退役した*6

スペックデータ

DC-9シリーズ
型式DC-9-10DC-9-21DC-9-30DC-9-40DC-9-50
乗員数2名(機長副機長
乗客数
エコノミー
90名115名125名139名
全長31.82m36.37m38.28m40.72m
高さ8.38m-
全幅27.25m28.47m
最大離陸重量41,100kg44,500kg49,900kg51,700kg54,900kg
エンジンP&WJT8D? 低バイパス比ターボファン×2基
P&W JT8D-5P&W JT8D-9P&W JT8D-15P&W JT8D-17
巡航速度903km/h896km/h917km/h898km/h
航続距離2,340km3,430km3,030km3,120km3,030km


MD-80シリーズ
型式MD-81MD-82/-88MD-83MD-87
乗員数2名(機長副機長
乗客数
(エコノミー)
172名139名
全長45.1m39.7m
高さ9.05m9.3m
全幅32.8m
最大離陸重量64,000kg67,800kg72,600kg64,000kg
エンジンP&WJT8D? 低バイパス比ターボファン×2基
P&W JT8D-209P&W JT8D-217A/CP&W JT8D-219P&W JT8D-217C
巡航速度811km/h
航続距離2,900km3,800km4,600km4,400km


バリエーション

  • DC-9シリーズ
    • DC-9-10:
      初期型。
      DC-9シリーズの中では最も小型のモデルで、エンジンはJT8D-5を搭載する。
      137機が生産された。

    • DC-9-15:
      燃料搭載量・最大離陸重量の増加を行った型。少数のみ生産。

    • DC-9-20:
      エンジン及び翼の強化を行った型。-15型同様、少数のみ生産。

    • DC-9-30:
      胴体を4.55m、両翼端を1m延長し、最大離陸重量を55tに増やした型。
      エンジンはJT8D-9/11に変更され、主翼に前縁スラットを追加した。
      662機が生産され、後述のとおり軍用型としても用いられた。

    • DC-9-40:
      胴体を-30型より2m延長、乗客数125人に増加させた型。71機生産。
      東亜国内航空が自社導入したのがこのモデルである。

    • DC-9-50:
      40型の胴体をさらに2.5m延長し、乗客数を139名に増加させた型。96機生産。

  • MD-80シリーズ
    当初は「DC-9スーパー80シリーズ」と呼ばれていた。
    B727とほぼ同サイズでありながら2マンクルーを実現し、運航コストの低減にも成功してB727を生産終了に追い込んだ*7
    • MD-81:
      基本型。
      当初は「DC-9-81/-82/-83」という型式だった。

    • MD-82:
      高温・高地性能向上型。

    • MD-83:
      燃料タンクを増設した航続距離延長型。

    • MD-87:
      胴体を5m短くした短胴型。
      方向安定性の確保のため垂直尾翼が0.25m高くなっている。

    • MD-88:
      デルタ航空の要求で操縦席の一部をグラスコックピットにした型。

  • MD-90シリーズ
    • MD-90-30:
      153席モデル。航続距離4,200km。

    • MD-95:
      MD-90の短胴型。
      コックピットもそれまでのMD-90型と比べて、大幅にグラスコックピット化された。
      開発中にマクダネル・ダグラス社がボーイングに吸収合併され、ボーイング社の製品「B717」として生産された。

  • 軍用型
    DC-9-30をベースとした。
    下記アメリカ空軍/海軍/海兵隊の他、クウェート空軍、ベネズエラ空軍、イタリア空軍でも採用されたが、アメリカ以外ではいずれも退役している。

    • C-9A「ナイチンゲール」:
      アメリカ空軍が患者輸送機として導入した型。
      担架40床または座席40席*8と、重症患者用のスペシャルケア・コンパートメント(特別空調装置を備える)を持ち、通常5名の医師、看護員を乗せる。
      また、前胴左側には車椅子や担架搬入のための緩やかな傾斜のタラップを自蔵した、大型昇降口(3.5m×2.1m)を備えている。
      2005年に退役し、患者輸送の任務はKC-135に受け継がれた。

    • C-9B「スカイトレインII」:
      アメリカ海軍/海兵隊が人員・貨物輸送機として採用した型。
      現在も19機が運用されているが、旧型化しているためC-40と順次交代しつつある。
      退役した機体のうち、1機*9NASAの微小重力訓練機「Vomit Comet(嘔吐彗星)」に改造された*10

    • C-9C:
      アメリカ空軍がVIP輸送機として採用した型。
      当初は「VC-9C」と呼ばれていた。

    • C-9K:
      クウェート空軍向け。


*1 B727三発機
*2 この時代、アメリカの地方空港には「純ジェット機乗入禁止」という規制を敷いていた空港も多かった。
*3 DC-3/-4/-6ロッキードL-188フェアチャイルド・ヒラーFH227など。
*4 これはB737シリーズ(10,000機以上)、エアバスA320シリーズ(8,300機以上)に次ぐ、ジェット旅客機としては第三位の記録でもある。
*5 40型は自社導入、30/50型はリースで導入。
*6 これにより、JAL本体の営業運行用フリートはボーイング社製品に統一された(その後、2019年にエアバスA350XWBが導入されている)。
*7 後にボーインググラスコックピット2マンクルーを取り入れたB757を後継として開発・生産した。
*8 双方のコンビも可能。
*9 当初、KLMオランダ航空で使用された後にアメリカへ逆輸入された機体。
*10 同じ用途で使われていたKC-135改造機の後継。

トップ 新規 一覧 単語検索 最終更新ヘルプ   最終更新のRSS