【DC-10】(でぃーしーてん) †

McDonell? Douglas DC-10.

アメリカのマクダネル・ダグラス社が1960〜1980年代に開発・生産したワイドボディの3発ジェット旅客機。
生産はマクダネル・ダグラスの手により行われたが、設計・開発はマクダネル社との合併前のダグラス時代に行われたため「DC（＝Douglas Commercial(ダグラス・コマーシャル)）」の型番を持っている。

中距離路線を想定した300席クラスの機体で、ジェットエンジンは左右の主翼下と垂直尾翼の根元に取り付けられている。

当初、本機はDC-8の後継として、同機を上回る大型旅客機として構想されていた*1。
しかし、構想が進むにつれて「SSTの補完」などの性格も求められるようになり、アメリカ国内線向けの中型機として開発・生産されることになった。

本機は1970年8月に初号機の初飛行を行い、1971年に就役した。
同じ頃、ロッキード社も同様の機体である「L-1011『トライスター』」を就役させていたため、同機との激しい販売競争が繰り広げられ、ロッキード社による贈収賄事件まで引き起こしてしまった*2。

また、初期には貨物室ドアの構造に欠陥があり、そのことを原因とした重大事故を続発させていた。
そのため、1979年5月に起きた本機の墜落事故（アメリカン航空191便墜落事故*3）に際して、FAAが本機の「耐空証明」を一時取り消し、他国もこれに追随したため、一時期、全世界で運行停止となる事態も起こしている*4*5。

その後、SST自体が燃費や衝撃波の問題などから立ち消えになった*6こともあり、航続距離を伸ばした長距離型も生産されたが、第四次中東戦争による石油危機を契機に燃料価格が高騰したことから、航空業界では低燃費の機体が求められるようになり、A300・A310・B767のような双発機が市場の主役になっていった。
そのため、旧式化した本機は後継のMD-11との競合を避けるため、1989年に446機で生産終了となった。

日本では日本航空*7・日本エアシステム及びミネベア航空?が導入・運用していたが、現在はすべて退役している*8。

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スペックデータ †

乗員3名（機長、副操縦士、航空機関士）
旅客数250〜380名
全長55.5m
全高17.70m
全幅50.4m
翼面積367.7��
重量12,198kg
最大離陸重量263,085kg
エンジンGE CF6-50Aターボファン×3基（推力：218kN×3）
巡航速度982��/h
巡航高度12,000m
航続距離12,055��


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主なバリエーション †

  • DC-10-10：
    初期生産型。

  • DC-10-30：
    長距離型で最も多く生産されたタイプ。
    エンジンはCF6-50C2を搭載。

    • DC-10-30ER：
      スイスエア（現スイス インターナショナル エアラインズ）の要望で-30型の航続距離をさらに伸ばした型。
      フィンランド航空の仕様では、バルクカーゴエリアにより大型の燃料タンクを搭載し、エンジンを推力向上型のCF6-50C2Bへ換装している。

    • DC-10-30F：
      貨物機型。

  • DC-10-40：
    ノースウェスト航空（現・デルタ航空）と日本航空の要望により開発された型。
    B747と併用するため、エンジンはP&W JT9D?に換装している。

    • DC-10-40D：
      日本航空のみが保有していた、-40型の短距離仕様。

  • DC-10-15：
    アエロメヒコ航空とメキシカーナ航空向けに生産された型。
    高温地帯や高地の空港で運用するために設計され、エンジンはCF6-6よりも推力の大きなCF6-50が搭載された。

  • MD-10：
    フェデックスが保有する、-10型と-30型を改修した型。
    操縦システムをMD-11と同様のものに改造している*9。

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軍用型 †

*1 構想の中には、後のA380のように客室を総二階建てとするものもあった。
*2 結局この競争は、1981年にロッキードがL-1011の生産を終了させ、旅客機部門から撤退したことでマクダネル・ダグラスの勝利に終わるが、そのマクダネル・ダグラス自体もこの間に経営体力を消耗してしまい、後にボーイングへ吸収合併される遠因になった。
*3 この事故の原因は「貨物室ドアの欠陥」とは関係なく、オーバーホールに際して、アメリカン航空の整備士がマニュアルにない（メーカーが予想もしていなかった）方法でエンジンを取り外したため、パイロンが損傷して亀裂ができたためであった。
*4 （人命につながるような事故ではなかったが）この事態は、約30年後のB787で起きた事例とも似ている。
*5 この時、日本の運輸省（当時）もアメリカに引き続いて本機の耐空証明を取り消したが、ちょうどニューヨーク〜東京へ向かっていた日本航空の機体が、寄港先のアンカレッジで耐空証明の失効により飛行停止となってしまった。
　　そのため、日本航空はアメリカの航空当局からすでに「飛行機」とみなされていなかった当該機体の成田への片道回送飛行の許可を「超法規的措置」で受けることになった。
*6 アメリカのB2707やL-2000は開発中止となり、実用化できたのは英仏共同開発のコンコルドとソ連のTu-144しかなかったが、生産数はいずれも少数にとどまっている。
*7 同社の機体は、日本政府が政府専用機を導入するまでは、天皇・皇后両陛下や内閣総理大臣など政府高官が公務旅行をする際の機材としてもしばしば用いられた。
*8 全日本空輸では同じ3発機としてL-1011を導入し、本機は導入していない。
*9 一部のシステムはB777などの最新型ボーイング機のものが流用されている。

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