【BTR-60】(びーてぃーあーるろくじゅう)

ソビエト連邦が開発した装輪式装甲兵員輸送車
BTR-152の後継として1950年代後半から開発が開始され、1959年に採用された。

2基のエンジンで車軸を分担する複雑な駆動系を採用しており、1基が故障しても走行能力が維持される。
また、車体後部に装備したウォータージェットで水上を移動できる。

ガソリンエンジンゆえ引火性が高く、乗員もろとも爆発炎上する事例が多発した。
加えて出入り口が上部ハッチしか存在しないため、火災発生時の緊急脱出も非常に困難。
このため、歩兵達はしばしば車内に入るのを拒否してタンク・デサントよろしく車上にまたがるようになったという。

これは装甲兵員輸送車の存在意義を無視しているといって良く、運用教則上は採るべきでない愚行である。
逆に言えば「装甲を加味してもなお外にいた方が安全」と判断されるほど生存性に不信を抱かれていたという事でもあるが。

そのため、後継のBTR-80ではディーゼルエンジンが搭載された。

ソビエト軍始め東側諸国にも大量に供与されて用いられ、21世紀に入っても世界中で多数が現役である。

スペックデータ

乗員2名+兵員12名
全長7.56m
全高2.31m
全幅2.835m
戦闘重量10.3t
懸架・駆動方式トーションバー
ハイドロサスペンション
8輪駆動
エンジンGAZ-49B 4ストローク直列6気筒液冷ガソリンエンジン×2基
(出力180hp)
登板力50%
超堤高0.6m
超豪幅2.0m
最大速度90km/h(整備地)
60km/h(不整地)
10km/h(水上)
航続距離500km
装甲8mm(車体前面)/10mm(砲塔前面)
携行弾数500発(14.5mm機関銃)/2,000発(7.62mm機関銃)
兵装KSV 14.5mm重機関銃×1挺
PK 7.62機関銃×1挺

派生型

ソ連/ロシア

  • ZIL-153:
    「ザヴォーツカェ・イズジェリェ49(工場製品49)」の要求仕様書に基いて設計されたZIL設計局の試作車。
    採用されず。

  • GAZ-49:
    「ザヴォーツカェ・イズジェリェ49」の要求仕様書に基づいて設計された、GAZ設計局の試作車。
    1959年にBTR-60Pとしてソ連軍に採用された。

  • BTR-60P:
    初期生産型。上部開放型の車体が特徴。乗員は2+14名。

    • BTR-60P M1961/1:
      PT-76?砲塔を付けた火力支援型。試作のみ。

    • BTR-60P M1961/2:
      37mm機関砲搭載のオープントップ式砲塔を付けた火力支援型。試作のみ。

    • BTR-60Pu:
      指揮通信車輌。屋根は布張り。

    • MTR-2:
      修理車輌型。

  • BTR-60PA/PK:
    1965年より生産が開始されたNBC戦対応型。
    上部が密閉式となり、上部ハッチにPKT 7.62mm機関銃又はDShk 12.7mm重機関銃 1挺を搭載。
    乗員2名と兵員10名を乗せる。

    • BTR-60PA-1:
      PAの改良型。
      トランスミッションや発電機が改良されており、重量が10.3tに増加している。
      無線機としてR-123を装備する。

    • MTP-2:
      装甲回収車型。クレーンなどを搭載。

    • BTR-60PAI:
      砲塔をBRDM-2が装備するBPU-1砲塔に換装したもの。
      武装としてKPVT 14.5mm重機関銃(弾数500発)とPKT7.62mm機関銃(弾数3,000発)を装備する。

  • BTR-60PB(GAZ-49B):
    KPVT 14.5mm重機関銃とPKT 7.62mm機関銃を装備する円錐形の砲塔を搭載。
    1966年から1976年まで生産され、乗員3名に兵員8名を乗せる。

    • GAZ-4907:
      指揮車輌に使用される専用シャーシ。

    • BTR-60PBK:
      指揮通信車輌。
      車体左上に無線機セット3基(R-123×2、R-148×1)とアンテナマスト、ホイップアンテナ3基を装備する。
      後期型では砲塔が変更され、アンテナが追加されている。

    • BTR-60R-145BM「チャイカ」:
      指揮通信車輌。BTR-60PUMとも。
      折り畳み可能なAZIフレームアンテナやAMU 10m高伸縮マスト、AB-1-P/30発電機、無線機セット5基(R-123MT×1、R-130×1、R-111×2、R-012M×1)、TA-57電話機を装備。

    • BTR-60R-145BM-1:
      BTR-60R-145の改良型。

    • BTR-60R-149M:
      BTR-60R-145BM-1ベースの指揮車輌型。

  • BTR-60PZ:
    BTR-70に似た改良型砲塔を搭載した型。
    1PZ-2ルーフマウント式ペリプコープを装備。

  • BTR-60 1V18"Klyon-1":
    対空ミサイルを搭載した砲兵観測車輌。
    砲塔をNNP-21およびDV観測装置とレンジファインダーを装備した砲塔に換装している。
    その他、UD-15G発電機、無線機セット4基(R-123M×3、R-107M×1)、1V510コンピュータ、PUO-9M火器管制セット、PAB-2A照準器を装備。

    • BTR-60 18V1-1:
      BTR-60 1V18の改良型。

  • BTR-60 1V19"Klyon-2":
    大隊向け射撃指揮車輌型。
    外観はBTR-60 1V18と同様だが、R-130M無線機セットと収納ボックスが追加されている。

    • BTR-60 1V19-1: BTR-60 1V19の改良型。

  • BTR-60 R-145BM:
    通信車両型。
    無線機セット5基(R-111またはR-171×2、R-123またはR-173×1、R-130M×1、およびR-012M×1)を装備。

  • BTR-60PU-12:
    防空指揮車輌型。
    前面右側の屋根上にAMUテレスコープマストとAB-1P/30発電機を装備している。
    その他、1G13ジャイロスコープ、KP-4ナビゲーション装置、ASPD-12コンピューターを搭載。
    ZSU-23-4SA-9またはSA-13装備の部隊で使用される。

    • BTR-60PU-12M:
      PU-12の改良型。
      コンピューターをASPD-Uに換装し、S23-1データ処理装置を搭載している。

    • BTR-60R-975:
      戦術航空管制車型。
      無線機セット4基(R-123、R-134、R-853、R-864)、SMI-2ビーコンシステム、G-290B発電機を搭載。
      デッキ後部にブレードアンテナ2基を装備している。

      • BTR-60R-975M1:
        BTR-60R-975の改良型。
        ビーコンシステムを保護する円錐形カバーを装備していない。

    • BTR-60R-137B:
      短波(USW)信号車型。
      無線機セット2基(R-123・R-405)を装備するほか、屋根上にフレームアンテナや伸縮マストを装備している。

    • BTR-60R-140BM:
      短波(SW)信号車型。
      無線機セット3基(R-140、R-405、R-123)を装備。

    • BTR-60R-156BTR:
      短波(HF)信号車型。BTR-60PBベース。
      R-156 HF無線機と無線機セット2基(R-405・R-123)を装備している。

    • BTR-60R-409BM:
      無線中継局車型。R-409無線機を装備。

    • BTR-60R-419BR:
      低周波無線中継局車型。

    • BTR-60E-351BR:
      発電機(20kW)を装備する電源車両型。
      信号部隊で使用される。

    • BTR-60P-238/239/240/241BT:
      交換車両型。

  • BTR-60MS:
    「ハイボール(High Ball)」アンテナマウントを搭載した通信車両型。

  • BTR-60MBP:
    戦略ロケット部隊の警備車両型。
    1PN22M1照準器やスピーカー、OU-3GA-2 IRサーチライト、TNPO-170ペリスコープを装備した砲塔を搭載する。
    武装としてNSVT 12.7mm重機関銃を装備。

  • BTR-60PBM:
    近代化改修型。

  • 9K35M3-K "Kolchan":
    MAKS-2007で発表された、屋根上にSA-13の発射機を装備した地対空ミサイル車両型。

  • Irtish:
    民間向けの修理車両型。車体前面にクレーンを装備している。

  • BTR-60PPM:
    民間向けの装甲消防車型。

  • BTR-60SPAAG:
    キューバの派生型。30mm連装機関砲を搭載。

  • OT-64 SKOT?
    ポーランドとチェコスロバキアが共同で開発した、8輪式装甲兵員輸送車。
    厳密には派生形ではなく競合車輌である。

  • TAB-71:
    ルーマニア製のBTR-60。
    側面上部のハッチを増やし、大型にするなどの改良がされている。

    • TAB-71M:
      TAB-72とも呼ばれる近代化改修型。
      エンジンはSaviem 797-05ディーゼル(出力130hp/97kW)を2基搭載。

    • TAB-71A R-1450:
      指揮車輌型。
      アンテナが追加されている。

    • TAB-71A R-1451:
      信号車輛型。
      発電機(1kW)や無線機(R-1451とR-401)を搭載。

    • TAB-71A R-1452:
      R-1452無線機を搭載する型。

    • TAB-71AR:
      自走迫撃砲型。
      M-37M 82mm迫撃砲(弾数100発)を搭載。

    • TERA-71L:
      クレーンとドーザーブレードを装備した工兵車両型。

  • APC-70:
    メキシコ海兵隊で使用されている型。BTR-60PB-MXとも。
    民間モデルがベース。
    武装としてヘッケラー&コッホ HK21?又はFN MAG 7.62mm機関銃×1挺またはMk.19自動擲弾発射器を装備する。

  • Sedad:
    BTR-60PBのイランでの改良型。
    光学機器とCCDカメラ、ZU-23-2 23mm機関砲を装備した砲塔に換装している。

  • Shahram:
    核・放射線・生物・化学(NRBC)偵察車型。
    武装として、RWSに7.62mm機関銃と4連装煙幕弾発射機を装備。

  • Heidar-5:
    BTR-60PBの地雷敷設車型。
    砲塔を取り外して、兵員室内部に地雷敷設装置を装備している。
    地雷敷設装置は車体左右に18個の発射口を備えている。
    武装として遠隔操作式のDShk 12.7mm重機関銃を備える。

  • Heidar-6:
    BTR-60PBにBMP-1の砲塔を搭載したもの。


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