*&ruby(びーなななななな さんえすびーいーあーる){【B777-3SBER】}; [#m0141366]
Boeing B777-3SBER.~
~
日本国政府が導入し、[[航空自衛隊]]が運用する[[政府専用機]]。~
[[ボーイング]]社の大型[[双発>双発機]][[旅客機]]・[[B777-300ER>B777]]((正確には[[ビジネス機]]仕様の[[BBJ 777>ボーイングビジネスジェット]](-300ERベース)。))をベースとしている。

>「B777-3SBER」はボーイング社の顧客コード((日本国政府が発注した[[B747-47C]]や[[E-767]]では、顧客コードには「7C」が、[[航空自衛隊]]が発注した[[KC-767J>B767]]では「FK」が与えられていたが、本機の発注に際しては、日本国政府が「[[ボーイングビジネスジェット]]の新規顧客」として扱われたため「7C」ではなく「SB」が与えられている。))を付した[[型式]]表記。~
日本政府・[[自衛隊]]では「B-777-300ER」と表記している。

>なお、[[B777]]にとっては本機が初の[[軍用機]]型となった((これより以前、[[アメリカ空軍]]に[[空中給油機]]兼[[輸送機]]型が提案されていたが不採用となっていたため。))((なお、2015年にはインドも本機と同様にB777-300ERを政府専用機として導入し、空軍で運用することを発表している。))。

従来の[[B747-47C]]の後継として2018年に導入。~
2019年度から2機([[機体記号]]:80-1111/80-1112)が[[防衛省]]・[[航空自衛隊]]により運用開始された。~
主たる用途は皇族・要人・賓客等の(主に海外への)移動、および国外の事変に際して[[自衛官]]・避難民を緊急輸送する事。

>法令上、皇族・内閣総理大臣・国賓・衆議院議長・参議院議長・最高裁判所長官が利用してよい事となっている。~
しかし、[[防衛省]]所管の国有財産であるため使用要件は厳しく、単に要人が移動するだけの理由では使用許可が下りないという。~
また、道路・[[鉄道]]網が高度に発達している日本の国土事情では空路を選択する機会自体それほど多くない。

現在の所属は[[航空支援集団]]特別航空輸送隊・第701飛行隊。根拠地は[[千歳基地>千歳空港]]。~
部隊の庁舎は[[基地>千歳空港]]側にあるが、本機の格納庫・専用[[スポット]]及び整備拠点は[[新千歳空港]]側にある。~
~
[[航空自衛隊]]は[[B777]]の運用教則を保有していないため、重整備・乗員及び整備員の教導・[[グランドハンドリング]]は一部[[全日本空輸]]に委託されている。~
ただし、実際の運航スタッフは[[乗員>エビエーター]](パイロット((本機を含め、自衛隊機は[[航空法]]の適用を除外されているが、部外([[全日本空輸]])での教育により「[[B777]]限定の[[定期運送用操縦士]]」の資格も取得している。))・[[フライトアテンダント]]((航空自衛隊は客室サービスの教則を保有していないため、[[全日本空輸]]の関連会社に候補者を派遣し、[[全日本空輸]]の[[フライトアテンダント]]と同様の教育を施して任務につけている。))・[[偵察航法幹部>航空士(自衛隊)]]((VIP輸送中の航路設定を行う隊員で、[[航法士>航法員]]に相当する。))・[[航空通信士]]((搭乗中の要人が行う通信を受け持つ。)))・[[整備士>航空整備士]]((本機を含め、自衛隊機は[[航空法]]の適用を除外されているが、部外(全日本空輸)での教育により「[[B777]]限定の航空整備士」資格を取得している。&br;  また、部外の有資格者を[[技術空曹>下士官]]として採用することもある。))含め全員が[[航空自衛官>自衛官]]から選抜されている。~
~
関連:[[B777]] [[B747-47C]] [[エアフォースワン]] [[VC-25]] [[シグナス(コールサイン)>シグナス]] [[ボーイングビジネスジェット]]

**機内構成 [#uc3d14c0]
:[[コックピット]]|操縦系統は通常の[[B777]]と同じ[[2マンクルー]]であるが、[[偵察航法幹部>航空士(自衛隊)]]や[[航空通信士]]の席も用意されている他、[[軍用機]]であるため独自の改装(([[B747-47C]]と同様、[[IFF>敵味方識別装置]]や[[ミサイル接近警報装置]]、軍用[[UHF]]無線機などが備えられていると思われる。))が施されていると推定される(機密につき詳細非公開)。~
なお、前作の[[B747-47C]]にあった天測用ハッチはないため、駐機中の国旗はコックピットの窓から出すことになっている。
:運航要員区画|座席は[[エコノミークラス]]相当。
:貴賓室等|機体前方部にあるとされるが非公開。~
なお、要人の出入りはL2ドア((この上部に日章旗の図案がペイントされている。))((なお、反対側のR2ドアにあたる部分は締め切られている。))から行われるため、この付近にあるものと推定される。
:会議室|6席。パーテーションで区切ることで2室に分けることができる。
:事務室|ファクシミリやコピー機、ワークステーションなどが置かれているとみられるが、詳細は不明。
:随行員区画|座席は[[ビジネスクラス]]相当・21席。
:一般区画|座席は[[プレミアムエコノミー>エコノミークラス]]相当・85席(通常)。~
[[マスコミ]]関係者などの民間人が搭乗する際には運賃([[エコノミークラス]]相当とされているが、詳細な金額は非公開)が請求される。
:ギャレー(数か所)|一般のエアライン向け旅客機と同様、[[機内食]]・ドリンクの準備などを行う。~
食材は[[千歳基地>千歳空港]]や[[羽田空港>東京国際空港]]で調達するものと現地調達するものがあり((アメリカの[[VC-25]]の場合、毒物混入の危険を警戒して食材はすべてベースのアンドリューズ空軍基地で調達される。))、栄養ドリンクなども供される。
:貨物室(階下)|[[B747-47C]]と同様、海外の寄港先で不具合が生じた場合に備えてスペアパーツ類が搭載されているという。

>座席のグレードは[[全日本空輸]]の基準による。

一般のエアライン向けの旅客機と同様、客室には座席ごとに娯楽設備が備えられており((前任の[[B747-47C]]には座席ごとの娯楽設備はなかった。))、機内Wi-Fiによるインターネット接続も可能。~
また、[[B747-47C]]に備えられていた記者会見席は廃止されている。

**導入の経緯 [#v1194dfa]
日本政府は1992年以来、[[B747-400]]をベースとした[[B747-47C]]を政府専用機として用いていた。~
しかし就航から20年以上の時間が経過した事により[[運用寿命]]が近づいてきた(([[軍用機]]であることから地上での待機時間が比較的長く、一般のエアライン向け旅客機に比べれば離着陸回数や飛行時間は少なかったが、これによって、同機は[[B747-400]]の中古機の中でも特に状態の良い機体になったという。))。~
~
加えて、機体の運航支援を行っていた[[日本航空]]が2010年に経営破綻し、経営再建のため((かつての日本航空は、国内外幹線の主力機として[[B747]]を多く用いていた([[-SP>B747SP]]及び[[-8>B747-8]]を除く各型合計110機)が、21世紀に入ってから[[フリート]]は中〜小型の[[双発機]]が主力となり、また、[[燃料]]費の高騰もあって、大型で4基のエンジンを備える[[B747]]は「燃費効率の悪い機体」になっていた。))に[[B747]]の退役が決定。~
これによって[[B747-47C]]の運航支援が継続困難になった(([[B747]]の運用自体は全日本空輸と[[日本貨物航空]]が行っていたが、全日空は日航と同様に[[B747]]の退役を進めており(最終的に2014年に全機退役)、一方の日本貨物航空は、自社に[[B747]]の重整備を行える施設を持っていなかった。))ため、日本政府は2014年に後継となる政府専用機の選定に着手。~
[[ボーイング]]社製の中型双発旅客機[[B787]]・同社製の大型双発旅客機[[B777-300ER>B777]]・[[エアバス>エアバス(企業)]]社製の大型双発旅客機[[A350-900>A350]]が候補に挙がった((三機種とも、[[ビジネス機]]仕様にカスタマイズされたモデル(BBJ 787、BBJ 777及び[[ACJ350>エアバス・コーポレートジェット]])がある。))。~
このうちB777-300ERが採択され、B747-47Cと同数の2機が発注された((機体は2016年に[[BBJ 777>ボーイングビジネスジェット]]として完成し、スイスのバーゼルで軍用機及びVIP輸送機としての改装工事を行った後、2018年8月に1号機「N509BJ(→80-1111)」、12月に2号機「N511BJ(→80-1112)」が[[千歳基地>千歳空港]]に[[回航]]された。))。~
>候補に挙がった3機種のうち、[[B787]]は「(有事の兵員・避難民の輸送も考慮した)[[ペイロード]]の小ささ((一方、B777-300ERはモノクラスなら550席まで設定可能(加えて、[[キャビン]]内部に客室・貨物室とは別に[[交代乗員>デッドヘッド]]用の休憩室を設けることができる)な収容力を持っており、要人輸送と有事の兵員・避難民輸送を両立させることが可能とみられた。))」「機体の信頼性の問題((構造材に複合材料が多用されていることが不安視されたことと、就航後まもなく、[[バッテリー>電池]]の過熱による火災事故を続発させて[[耐空証明]]を一時取り消されたことがあった。))」から、[[A350-900>A350]]は「現行の[[B747-47C]]と同一メーカーであることの継続性」「日本とアメリカとの同盟関係」「当時、日本での運用実績がなかったこと((その後、2019年から日本航空が運用している。))」などで選から漏れている((なお、アメリカの[[VC-25]]の後継機候補であった超大型旅客機・[[B747-8IC>B747-8]]や[[A380]]は当初から選考対象外だった(後者は2019年から全日本空輸が運用している)。))。~

また、これと併せて、運航支援にあたる業者も公募。~
B777-300ERで応募してきた[[日本航空]]・[[ANAホールディングス>全日本空輸]]の二社から、納期やサポート体制などを考慮してANAホールディングスが選定された。

>[[日本航空]]は老朽化したB777(及び[[B767]])の代替としてA350-900及びA350-1000を導入する計画を持っており、B777を保守する設備・技術を喪いつつあるものと判断された。~
一方、ANAホールディングス([[全日本空輸]])は同じ理由でB777系列の近代化モデル(B777-9)を導入する計画を持っていた。

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